第19話 ちょっと憧れてたんだよね
そんな訳で、まず報酬の半分を
その途上で――
「――あっ、ちょっと用を思い出した。二人で先に行っててくれ」
龍慈がそんな事を言い出して、別行動する事に。
特に疑問を
その目的はもちろん、新たに
目的の物を買う事ができた龍慈は、
そのままでは、とても三人で運べる量ではない。だが、龍慈が【仙人掌・小の手】で小さくすると、その全てが、
そうして出張所での用を済ませた一行が次に向かったのは、城郭都市の外。
その目的は、大きく分けて、二つ。
一つは、人目につかない場所で、今回報酬として受け取ったクリーチャー共の甲殻を【
そして、もう一つは――
「――俺と結婚して下さい」
城郭都市が見えない場所まで移動し、広大な大地のど真ん中で、リムサリアに
リムサリアの返事は、もちろんイエス。
龍慈は、軽く戸惑いつつも
「へぇ~っ、指環かぁ~」
自分の薬指に
何でも、《ティーグリュガリア》では、指環ではなく、夫婦である証として同じ
それを聞いて、龍慈は反省した。
この世界にも男性が女性に指環を送る慣例があり、元は転移者が持ち込んで広めたものだが今ではすっかり定着している、という話を聞いてから、全種族共通――亜人や獣人なども勝手にそうだと思い込んでいた。
龍慈は、まずその事を謝罪し、次に気付かせてくれた事に感謝し、それから、
「これで良い。――いや、これが良い。リュージを
指環を
リムサリアの防具を作ったのは、告白の後。
だが、その前に――
「なぁ、何で、矢筒を二つも
リムサリアが所持する神器――〔
龍慈が、疑問に思っていた事をこの機会に
「霊力を込めて
〔流れ星の矢〕は、霊力を込める事で威力を上げる事ができる。そして、込められた霊力は時間が経過しても失われる事なく保存される上、霊力を込められるのは一度きりではなく、時間を置いて更に追加する事もできる。
そこで、対大物用の切り札として、日々、就寝前に、残っていた霊力を5本前後の〔流れ星の矢〕に分散させて込め、そうして育ててきた矢を入れているのが背中の矢筒で、腰の矢筒には、弱点である事が多い、または、耐性を持つものが少ない、【火】【氷】【雷】の属性がそれぞれ付与された矢が3本ずつ収められているらしい。
それを聞いた龍慈が思ったのは、
「それって、その神器に
「は?」
「だってよ、〔
それを聞いて、え? 目を見開いたリムサリアは、左手で、右前腕に装備している神器に
「
なかった、と続くはずだった言葉は、神器の
「…………」
それから、語り部の仕事は語り
その結果――
〔流れ星の矢〕以外の矢も収納しておける。
〔流星群の箙籠手〕の内部に通常の〔流れ星の矢〕以外が収納されている場合、その内部に意識を向けると、自分にしか見えない
その仮想画面上に複数表示されている
――などといった事が分かった。
「わざわざ高い金出して買ってたのに…………クソッ!」
〔流星群の箙籠手〕には属性が付与された矢を生成する機能が備わっていたのに知らなかった、というのが一番ショックだったらしい。
そんなリムサリアは、とりあえずそっとしておく事にして、防具製作は、まず下準備から。
【仙人掌・小の手】で小さくしていたクリーチャー共の甲殻を【大の手】で元の大きさ戻し、次に、アーシェラが、本来目に見えないほど微細な粒子である星屑を目に見える砂粒程度の大きにまとめ、それをバケツ一杯分ほど浮かべて竜巻のように高速回転させ、細かな粒状の研磨剤を吹き付ける事で表面を
それから、【星屑統御】で防具を作るには
龍慈は、そちらに背を向けて周囲を警戒し、アーシェラの操作によって、一度空気中に拡散させられた星屑がリムサリアの裸体に収束・結合。
そうしてアーシェラがリムサリアのため、当人の希望を取り入れて作り上げた装備一式は、機動性重視。首から下を
「これは……」
アーシェラは、良い物ができたと思っているのだろう。表情の変化こそ
だが、追加で自前の神器――手の甲から肘までを覆う〔流星群の箙籠手〕を右手に装備した当のリムサリアは、新装備を纏った自分の躰を見下ろして、どう言えば良いのか
「……まぁ、動き
やはり、ティーグリュガリアの民族的戦装束を身に纏っていたリムサリアの目には、SF的なインナースーツは奇異なものと
それに、インナースーツが覆っていないのは首から上と尻尾だけ。なので、
まぁ、元々水着のような格好だったので、そこに抵抗を
「露出を多くしてたのは、風の動きや気配を肌で感じ取るためだったのか?」
顔以外の肌が直接空気に触れていない。そこが気に入らないのかと思い、龍慈がそう尋ねてみると、
「それもある。けど、それ以上に、
リムサリアの話を簡単にまとめると…………戦闘などで激しく動けば汗を
だからこそ、戦闘を
足は、想像以上に汗を掻く。日本の様に
だからこそ、そうならないよう、足をちゃんと
乳房は、そのほとんどが脂肪で、脂肪は
それが嫌だから、中に汗が
「なるほどなぁ~」
以前、サンドリバー
その時、彼は、
「……これ、
「溜まらない。即座に汗を吸収して最良の状態を維持してくれる。それに、衝撃は吸収してくれないけど
「へぇ~、それが本当なら…………うん、悪くない」
どうやら、見た目は気にしない事にしたらしい。
その一方で――
「うぅ~む……」
動くたびにたゆんたゆん揺れる
いったい何について悩んでいるのか?
それは、そんなリムサリアの装備に対して、口を出すべきか
龍慈は、当初インナースーツと軽甲冑だけで良いと考えていたアーシェラに、戦闘用の
それは、ただでさえ人目を引く高身長と抜群の容姿が相俟って男女問わず注目を浴びてしまうのは
だからこそ、始めは、リムサリアにも、元々身に着けていた腰帯のような布鎧を追加するなどして、躰の
それは何故か?
元々スタイルの良さが
そこに、腰帯のように前後に垂らしたり、パレオのように腰に巻いたり…………下手に激しく動くとチラチラ見え隠れしてしまう布を足すと、なんか、逆に
それに、思い返してみると、露出過多の装備を身に纏っている女性傭兵は珍しくなく、この世界の男性は――内心でどう思っているかはさておき――それを見ても、興奮したり、
ならば、〝
――だが、
「一つだけ良いか?」
悩み、迷った末に、やっぱりそれだけは絶対に必要だと思った事を伝えると、リムサリアは、何で? と不思議そうに訊いてきたので、龍慈は
「
『クーパー靭帯』とは、肋骨や大胸筋の土台とつながっていて
これには伸縮性があまりなく、ぷるんぷるん揺れ動く様は眼福至極だが、激しく揺らしてこのクーパー靱帯が切れたり伸びたりしてしまうと、乳房の形が崩れて無惨に垂れ下がってしまう。
ボリュームたっぷりで形が美しく最もセクシーでエロさ漂う男性にとって理想形と言われる釣鐘型の
『しずく型』とは、ボリュームがあって巨乳と言われる人に多い形で、釣鐘型ではありえない『爆乳』や『超乳』などと呼ばれるサイズが存在する。この、ふっくらとして柔らかいと
だが、若くて
もっとも、誰もが霊力を宿しているこの世界の女性達は、おそらく、激しく揺れると痛むからだと思われるが、どうやら、霊力による身体強化の応用で、無意識にクーパー靱帯を強化しているらしく、ノーブラや下乳がはみ出るマイクロビキニで激しく動き回っても形が崩れたりしないようだが……
――何はともあれ。
チューブトップ型だった胸部装甲が、これ以上なくフィットして最もストレスがない状態で乳房を覆って固定している
「これいいなッ! 胸が軽くなったッ!」
リムサリアは、とても気に入った様子で、それを作り上げたアーシェラも満足そうだった――が、
「でもよ、それって、リムサリアだけじゃ、着たり脱いだりできないんじゃないか?」
龍慈が、ふと思った事を口にし、【星屑統御】が使えなくても大丈夫なのか? と訊くと、
「…………」
龍慈の目を真っ直ぐに見て…………へにゃっ、と
どうやら、新たな仲間であり、龍慈の妻同士、つまり、義理の姉妹であり家族となったリムサリアのために何かしたいという一心で、そこまで考えていなかったらしい。
結局、リムサリアの装備を完成させたのは、龍慈の神器――左腕に装備すると武器に、右腕に装備すると万能の道具になる〔
龍慈が、右腕に装備した〔
それは、アーシェラが【星屑統御】で作り上げた装備一式――だけでなく、リムサリアの持ち物である弓と鉈、雨具兼防塵用に自身で選択したフード付きのロングコート、最後に、先日のレイドで龍慈が
肘から先が
そうして出来上がったのは、アーシェラが装備しているものに似た、リムサリア専用の〔星屑の腕環〕。
こちらには、自身の武装限定だが、本当に星屑を統御する能力があり、手首に装備していれば、その結合・拡散・収納をほぼ一瞬で行う事ができる。
そのため、装備の着脱は自由自在。望んだ瞬間、掌中に〔星屑の弓〕や〔星屑の鉈〕が一瞬にして現れるため、もう持ち歩かなくて良くなり、ロングコートの後ろのスリットから尻尾を出して付属のベルトを締めて
そして、左肩から二の腕にかけて入れられた
それを
「ありがとうっ!! リュージっ! アーシェラっ!」
その笑顔を見ていると、こっちまで嬉しくなってくる。
龍慈は、それを完成させてくれた〔
「ふむ……」
同じ星屑製で似た雰囲気の装備を纏うアーシェラとリムサリアの姿を眺めて、これがパーティ《銀の腕》の特色って事になるんだろうなぁ、となんとなく思った。
その後、城郭都市まで戻った所で、龍慈が、ちょうど良いので夜の分の稽古をしていこうと思うからと別行動する許可を求め、それを受け入れた女性二人は、リムサリアが借りていた宿に寄って部屋を
そして、夕食を美味しく頂いた後、龍慈は、一緒に自分達の部屋へ戻ろうとしたのだが……
「リュージはそっち」
どうにも、アーシェラが、
目の前でドアが閉まり、
「……おぅ」
返事か、
ドアを開け、女の子だけで語り合いたい事でもあんのかな……、などと
まずは、
造りは
それから、初めての部屋でやる事は大抵同じ。常人サイズの部屋で窮屈な思いをせずに
とりあえず必要のないものは、【仙人掌】の【小の手】で小さくし、必要なものは、そのまま、あるいは【大の手】で大きくして…………程なく作業完了。
慣れたものだと思いつつ出来を確認して……
「あ……」
アーシェラと夫婦の
だからだろう。ふと気付くと、その大きさは一人で寝るには広過ぎるサイズで……
「…………、まぁいいか」
そう
そして、大きくし過ぎたベッドに腰かけ、そのまま上体をゆっくり後ろに倒して……
「……うぅ~む、まさか
天井を眺めながらそんな事を呟いた――ちょうどその時、トントン、とこの部屋のドアがノックされた。
はいよ~、と返事をしつつ起き上がり…………鍵を解除し、ドアを開ける。
すると、そこには、落ち着かない様子で
「……入って良いか?」
龍慈が、おう、と答えると、リムサリアは、一つ深呼吸してから、覚悟を新たにしたような表情で部屋の中へ。
「どうしたんだ?」
わざわざ部屋を別にしたのだから、てっきり今頃は女の子同士で語り合っているのだろうと思っていた。
なので、龍慈が、そう尋ねると、
「アタシは、一緒で良い、って言ったんだけどさ、アーシェラが、初めては二人っきりのほうが……って」
新たにした覚悟はどこへやら。リムサリアは、また落ち着きのない様子で視線を
「……あぁ、そういう事か」
リムサリアは、この部屋に何をしに来たのか?
アーシェラは、何故もう一部屋借りたのか?
龍慈は、それを聞いて、ようやく察しがついた。
そして、心配になった。
アーシェラは、一緒に寝るようになってから悪夢を見なくなったと言っていた。だが、今日は
アーシェラの事を案じながらでは、心の底からリムサリアと愛し合う事はできないだろう。――では、どうすれば良い?
龍慈が思案したのは束の間。安心して
「バディ、フレンド、――
そんな龍慈の願いに応えて、〔如意心鉄棒〕は、即座に大型犬サイズの狼に姿を変え、ハンガーラックに掛かっていた〔守護のマント〕は、ひとりでにふわりと浮き上がって宙を移動し、バディの背中へ。
マントを羽織った狼が部屋を出て行き、隣の部屋のドアを片前足で
隣の部屋のドアが閉まり、
それを見届けてから、顔だけ出して様子を窺っていた龍慈とリムサリアも
更に、龍慈は、右の
この【禁の手】は、封印系の技。力ではどうしようもない敵と遭遇した場合に備えて編み出した。
だが、【
つまり、情事の際に声を我慢する必要がなくなる。
アーシェラは、あられもない声を他の誰かに聞かれるのを嫌がって、必死に我慢していた。下唇を
それで、龍慈は、この方法を思い付いた。
もともとアーシェラは、嬌声を上げるほうではなく、
リムサリアがどうかは、まだ分からない。だが、もし何かあったとしても、中から外へ音が伝わらないだけで、外からの呼びかけや音は聞こえるので、やっておいて損はない。
ドアから手を離し、掌を当てていた場所に『禁』という光の文字がある事を確認して、
「――リュージ」
呼ばれたので振り返る。
すると、嬉しそうな笑みを浮かべたリムサリアが
「真っ直ぐ立って。背筋を伸ばして」
「おう」
リムサリアは、その豊かな胸が龍慈に触れそうで触れないギリギリの所に立って、
「――――っ」
右手は図太い首の後ろへ、左手は後頭部へと回して抱き寄せるようにしつつ上向き、つま先立ちになって、キスした。
そこはかとなくぎこちなさを感じる、初々しい口付け。
一呼吸ほどの間を置いて、
「爪先立ちになってキス……、ちょっと
「ひょっとすると、俺の背は、リムサリアの憧れを
元の世界では190後半で、この世界に来てからまた伸び始め、成長痛に
『…………』
二人は、お互いの息遣いが感じられる距離で見詰め合い…………龍慈は、引き締まって美しくくびれた細い腰を左手で抱き寄せ、右手で、髪を
「……ぁ……んっ……~っ」
今度のキスは最初より長く、一息ついてからまた、それから何度も、何度も……
龍慈は、積極的なリムサリアを受け入れつつ、急ぐ必要はないのだと、焦る事はないのだと、穏やかな息遣いと触れ合う唇のゆったりとした動きで伝え、キスは、熱く荒々しいものから、よりつながりが深く甘やかでありながら濃厚なものへ。
リムサリアの漏らす吐息が
お
リムサリアは、星屑で構成されたロングコートを拡散させて収納した。
すると、身に着けているのは、婚約指環と〔星屑の腕環〕を除くと、ティーグリュガリアの民族衣装である、前後に布を垂らすタイプの
(――ここで
龍慈は、
服を
そして、リードしようとしたものの抵抗を感じ取ったが
チートじゃなくてバグってる ~理外の巨漢と高身長コンプレックスの戦乙女達~ 鎧 兜 @yoroi-kabuto
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