第18話 〝使徒召喚〟と〝勇者召喚〟
「さっさとやるべき事を
そう言い出したのは、新たに分隊とハーレムに加わったリムサリアで、彼女を先頭に、【
「昨日のレイドに参加した者だ」
リムサリアと遭遇した事ですっかり失念していたが、龍慈は、その原因たる者の言葉で、何のために朝からギルドにやってきたのかを思い出した。
受付嬢に、金の
龍慈は、たまたま
リムサリアに
受付嬢は、それを受け取り、
そして、目を通すなり軽く見開いて、
「《銀の腕》分隊のリュージ様ですね? ギルド長より、リュージ様がお越しになったらギルド長室へご案内するよう
そんな事を言い出した。
なんか面倒臭そうなので、龍慈は、どうにか断れないかと思案したが、
「一緒に行く」
「アタシも気になるからついてく」
アーシェラとリムサリアが行く気になっているので、まぁいいか、と
案内役を
ギルド長室は、ゆとりが感じられるだけの十分な広さがあり、入ってすぐの所には、長方形のテーブルを
秘書と
「君は……〝我流〟のリムサリアか?
女性、約2メートルの長身、
そう問うギルド長に対して、〝我流〟という二つ名で通っているらしいリムサリアは、
「ダーリンの
『ダーリン?』
龍慈とギルド長が
そのまま更に続けて、
「アタシは、嫁入りして《銀の腕》の一員になったんだ。もう《剣の牙》の隊長じゃない」
「
「――そうなんだッ! アタシは神器を所有している。――これだッ!」
食い気味にそう言いつつ右手に装備している
そんなあからさまな話題転換に、ギルド長と、さり気なく自分も旦那様の腕に抱き付いていたアーシェラは、
「この〔
得意げに語られたその内容に、ん? と眉根を寄せて、
「300年以上受け継がれてきた? 〝召喚の儀〟ができるのは64年に一度。俺達で3回目。なのに受け継がれてきたのが300年以上じゃ、計算が合わねぇぞ?」
「ん? リュージは知らないのか? 〝使徒召喚〟の儀式が行われるようになる前から、〝勇者召喚〟の儀式は行われていたんだぞ?」
「何ですと?」
封印されていたアーシェラは知らないだろうから、ギルド長に知っているかと問う視線を向ける龍慈。すると、彼は、はっきりと頷いて、
「〝使徒召喚〟と名前を変えて、一度に100名以上の異世界人が召喚されるようになったのは130年ほど前からだが、それ以前に〝勇者召還〟が行われていたのは事実だ。各地に伝説が残っている」
今や多くの国が滅び、語り継ぐ者がいなくなってしまった事で失われた
ちなみに、龍慈達が〝召喚の儀〟としか聞かされていない3回目の〝使徒召喚〟で呼び出された異世界人は、およそ200名。
対して、それ以前に行われていた〝勇者召還〟で呼び出されていた異世界人は、たったの3名だったらしい。
「それはさておき、――『俺達で3回目』という事は、君は使徒だという事だね?」
話を変えた、というよりも、本題に戻したと言ったほうが正しいのだろう。
ギルド長が、座って話をしよう、と言いながら応接セットのほうに移動し、対面のソファーに座るよう
「あれ? 座らないの?」
勧められてソファーに腰を下ろしたのは龍慈だけで、振り返って嫁さん達に
「呼び出されたのはリュージで、アタシはおまけだからな」
リムサリアは、ソファーの後ろで立ったままそう答え、その隣で
その一方で、対面のソファーにはギルド長が座り、その後ろでは、やはり秘書だった女性職員が二人と同じように
「君は、使徒だね?」
改めて問うギルド長に対して、龍慈は、悠然と構えて、
「使徒、異世界人、転移者…………何と呼んでくれても構わないが、できるものなら名前が良い。俺には『龍慈』っていう親にもらった立派な名前があるんでね」
ギルド長は、承知した、と言って頷き、次に、君も使徒なのか? とアーシェラにも問い、首を横に振るのを見て、そうか、と頷くと、
「教えてほしい。一ヶ月後と予測されている〝大侵攻〟――その一週間前にはグランベル大要塞に到着する予定になってはいるが、現状、防衛戦に参加する予定の使徒達は、
「無関係だからだ」
「無関係?」
「俺は、当初、南西大陸のイストーリア王国に行く予定だったからな」
「南西大陸のイストーリア…………それが何故、今ここに?」
「チンコ……じゃなくて、えぇ~と、チンクチコルビで傭兵になった時、防衛戦に参加してくれって要請されたからだ」
「防衛戦に、か……」
龍慈の答えは、ギルド長の疑問を全て解消してくれるものではなかった。しかし、来る予定の使徒達が来られなくなったという訳ではない事と、
ならば、不興を買ってしまう可能性を押してまで根掘り葉掘り尋ねるべきではないと気持ちを切り替えて、次の質問をする事に。
「分かった。それで、
そう確認してから、
「そのレイドでの事についてなんだが……」
そう前置きし、非常に困ったと言わんばかりの表情で、
「現場にいた
「あぁ、そうだ」
龍慈があっさり肯定すると、ギルド長は、真偽の程を探ろうとするかのように、その目を真っ直ぐ
「
「ドロップキックして」
その
「……すまないが、もう少し詳しく話してもらえるか?」
「『合図と同時に走れ』って言われてたんだ。だから、この機会に全力疾走してみようと思った。だからそうしたら、なんか、自分で想像していた以上にもの凄いスピードが出て、気付いた時にはもう〝種〟が
「…………それを信じろ、と?」
「いいや」と答えつつ首を横に振ってから「訊かれたから答えただけだ。信じる信じないは、そちらの判断に
泰然と構える龍慈に対して、思わず
それから、大きく息を吸い込みつつ
「つまり、君は、たった一撃のドロップキックで、
「いや、核を砕いたのは蹴りじゃない。
「………………何だって?」
ギルド長が、今にも、もう勘弁してくれ、と言い出しそうな表情で訊き返すと、龍慈ではなくリムサリアが、
「アタシ達はその瞬間を目撃した。あの時は開いた口が
そう証言し、愉快そうに笑う。
その一方で、全く笑えないギルド長は、俯いて頭を抱え…………やがて、ふぅ、と何かを吹っ切るように一息つくと、振り返って何事かを指示し、それを受けた秘書の女性職員が承知した
その後、ギルド長は、龍慈からだけでなく、アーシェラとリムサリアからも報告を聴き、その内容について
その足で三人が向かったのは、受付窓口。
それはもちろん、先に提出していた
まずは現金を受け取る。それから、
リムサリアは、所属が書き換えられて、正式に《銀の腕》分隊の一員に。
アーシェラは、
おそらく、途中で部屋から出て行った秘書がギルド長に指示されていたのはこれだろう――そう思ったのだが……
「何だこりゃ?」
龍慈は、受け取ったネックレスに〔ライセンス〕と共に取り付けられている金の文字が打刻された黒い認識票を見て、眉根を寄せた。
受付嬢に訊いてみる。すると、それは、金の上、規格外の証、との事。
そもそも、一目見て
それ
しかし、金字に黒の
隔絶した力を
その説明を聞いて、アーシェラとリムサリアは、夫の昇級を我が事のように喜んで
しかし、
「へぇ~」
割とどうでも良さそうにそう
そんな様子を見て、アーシェラは不思議そうに小首を
「これが必死に努力した結果だってんなら喜びも
そう言ってから黒いプレートをまじまじと見つつ、困惑しているというか、戸惑っているというか、
尊敬とそれを遥かに上回る
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