第17話 新たな仲間は二人目の嫁
時は、レイドが行われた日の翌日。
場所は、城郭都市ベルドベルの
昨日のレイド戦後、素材の回収は戦闘に参加していなかった部隊が担当すると言うので
それは、昨日の内に出頭してほしいと要請されていたから。
元々、依頼の達成報告と同様に、レイドに参加したならそれを報告する義務があるため、
そして、〔
「――待ってたぞッ! 《銀の腕》のリュージとアーシェラっ!」
正面出入口から入ってすぐの所で声を掛けられた。
よく通る声が聞こえてきたほうに目を向けると、長身の女性が、寄り掛かっていた壁から離れてズンズン近付いてくる。
「確か……《ティーグリュガリア》のリムサリア、だったよな?」
「覚えていてくれたかっ!」
野性味あふれる絶世の美女は、二人の
「昨日の今日だからな。必ずギルドに顔を出すだろうと思って待っていたんだ」
そう話す彼女は、装備している武装こそ同じで矢筒と一緒に弓も背負っているが、服は例の民族衣装ではなく、街の店で購入したような、男物のシャツを着てその
「実は、二人に折り入って頼みたい事がある。話し自体はすぐ済むから、少し顔を貸してくれないか?」
一転して、真剣な表情でそう話すリムサリア。
「まぁ、時間を指定されてる訳でもないし……」
そう言いつつ隣のアーシェラに目で問うと、こくり、と頷いたので、龍慈が了解した
傭兵ギルドの本館は、意図的にどこも同じ造りになっているため、初めて訪れた都市や町のギルドでも、
リムサリアが、龍慈とアーシェラを連れ込んだのは、本来一人で利用する小部屋――新たな【
三名共に平均身長を大きく超えるため、
「――アタシを、リュージのハーレムに入れてくれ」
そんな事を言い出した。
「は? ハーレム? 俺の?」
この世界には、重婚を禁じる法が存在しない。つまり、一夫多妻が認められている。それは、こちらに召還されて早々、転移者男子達の間で話題になっていたため、龍慈も知ってはいた。
しかし、ハーレム願望はなく、側室を持つ予定も、愛人を
なので――
「そんなものはないし、作る予定もない。俺は、嫁さん一筋だ」
はっきりとそう告げる。
すると――
『え?』
「えッ!?」
リムサリアとアーシェラは、驚きの声を漏らし、龍慈は、
そんな驚き覚めやらぬ中、リムサリアは、そうなのか? と意外そうに言ってから、
「それは困ったな。アタシは、リュージに
「いや、そんな事言われても……」
生涯
それで龍慈が
「いくつか確認させてほしい」
その発言に対して、リムサリアは、興味深そうに、
「
「それはもちろん、
胸を張って即答するリムサリア。更に続けて、
「戦場で
アーシェラの目を見詰めながら、楽しそうにも嬉しそうにも見える笑みを浮かべて、
「アーシェラが、リュージに向ける眼差しと表情を見て確信したんだ。――この男しかいない、と」
えっ、それってどうなの? と内心ドキドキする龍慈をよそに、アーシェラは、軽く目を
えっ、それってどういう笑み? と内心ハラハラする龍慈をよそに、アーシェラが放った次なる質問は、
「分隊に加入する意思は?」
「ある」と即答してから「それも一緒に伝えるべきだったな」
そう言って反省するリムサリア。
彼女に確認したかった事というのは以上らしい。
今度は、女性二人の
「リュージがどんなに強くても、一人で出来る事には限りがある。信じ頼る事ができる仲間は、何物にも代え難い」
その言葉には
「昨日の戦場で見た限り、実力は申し分ない。リュージが、彼女を妻として迎え入れれば、同時に、頼りになる仲間をも得られる。この申し出は、受けるべきだと思う」
それには、アーシェラ一筋と心に決めているため承服できず、
すると、アーシェラは、
「私にとって、リュージの幸せこそが何よりの幸せ。だから、私のせいで、得られるはずの幸せを手放したりしないで」
それには全く同感で、だからこそ、アーシェラを困らせたり、悲しい顔をさせるのは本意ではない。その上
アーシェラの瞳をじっと見詰め…………分かった、と頷く龍慈。
二人で話している間、黙って待っていたリムサリアの前に立ち、
「
「後悔なんてしないし、させない。リュージにも、アーシェラにも。――我らが
これまでの言動から既に察しはついていたが、やはり、決意は固いらしい。
ならば、こちらも覚悟を決めるべきだろう。
龍慈は、分かった、と頷いて、
「俺の妻として、《銀の腕》分隊のメンバーとして、歓迎する」
そう伝えてから、よろしく、と言いながら右手を差し出す。
それに対して、リムサリアは、
「こちらこそよろしく頼むっ!」
見ているだけで気分が晴れるような、明るく爽快な笑みを浮かべて
リムサリアは、アーシェラとも笑顔で握手を交わしてから、
「二人には話しておこうと思う」
そう言いつつ、この『鏡の間』の姿見に触れた。
浮かび上がった
―― 能力 ――
【獣王の強靭な肉体】 生まれ持ったのは、獣の王の力を受け入れるに足る
【生存本能】 死中に活を求める時、生き残るために必要なありとあらゆる力が高まる
―― 技術 ――
【我流】 己が道を
「アタシは、この【
リムサリアの話を、整理して簡単にまとめると――
高度に洗練された戦闘術と狩猟術を代々受け継ぐ戦闘部族《ティーグリュガリア》は、現在、次期族長の事で、族長派と長老派に別れて対立している。
族長派が
長老派が推しているのは、現族長の長男、つまり、リムサリアの兄。
族長派は、最強の戦士が部族の
「族長なんて
問題を
「 ――理想的な男と運命的に
直観的に、この男しかいないと、これは運命だと確信し、一族を抜けて嫁ぐ事を決めた、との事。
「アタシが
そう言って、いい笑みを見せるリムサリア。
心の底からそう思っているように見える。しかし、
「運命、か……。なら、俺も教えておいたほうが良いだろうな」
そう言って、龍慈は、場所を
鏡面に浮かび上がり、リムサリアの目に
「ったく、
龍慈が顔を
「分かる奴はこれを一目見て分かるみたいなんだが…………俺は、運命の女神に選ばれてこの世界に召還された『使徒』ってやつなんだ」
「えッ!?」
「だから、リムサリアが、
自分達は、幼い少女の姿で
「――すごいッ!! じゃあ、本当に、リュージは私の運命の男で、私達は出逢うべくして出逢ったんだなッ!!」
リムサリアは、瞳をキラキラさせてそう言うなり、大きく両手を広げて、
「――運命の女神と神獣ティーグリューガに、この上ない感謝をッ!!」
そう
口にした『嫁さん一筋』の言葉を
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