第12話 結成 《銀の腕》分隊
龍慈が与えられた珍妙な【
要するに、肌だけではなく、肌に
身に着けていた衣服
事後そのまま眠ってしまったが、【玉の肌】の効果によって、二人の躰は、シャワーを浴びた後より清潔で、シーツや毛布は、使用前より綺麗な状態だったため、目覚めは最高。その上、すべすべの肌の触り心地は最上で、
それに加えて、アーシェラがもう
ラーゼン達と朝食をとる約束がある。それに、一度その誘惑に負けたら、快楽に
そんな訳で、龍慈とアーシェラは、離れ
日課だから、というのもあるが、それ以上に、でれっでれに
普段より始めるのが遅く、時間が限られている上、昨日の内に運動できる場所を確認しておく事ができなかったので、アーシェラが座る椅子だけ残し、他は全て【仙人掌・小の手】で小さくして場所を作り、屋内でできる範囲で行なった。
朝食は、ホテルの食堂で。
聞いた事のない声だったのでホテルの従業員だろう。コンコンッ、とノックする音が聞こえ、ドア越しに朝食の準備ができた事を知らされた。
そして、部屋を出てから、ホテルの食堂で、ラーゼンや団長、各車の車長達と同じ横長のテーブルで朝食を
一つは、アーシェラの態度。
ふと気付いた時にはもう、昨夜から部屋を出る直前までの可愛いアーシェラは夢か幻だったのではないか思われるほど、
落ち着きがあって礼儀正しく、表情の変化が
もう一つは、アーシェラが隠していた秘密。
それが明かされるに至ったきっかけは、テーブルに着く前にラーゼンから掛けられた、昨日はよく眠れたか? という
自分はもちろん、アーシェラも、寝顔は穏やかだった――が、龍慈はその一言でふと疑問を覚えた。
アーシェラは、悪夢を見るのが怖くて眠る事ができなかったと言っていたが、忘れられた城で過ごした1ヶ月の間、どうしていたのだろう?
気になったので素直に
話したくないようだし、
アーシェラ
なんでも、悪夢に
修行に専念している龍慈の邪魔をしてはならない、そう思って耐え忍んでいたが、眠る事ができず、気が緩んで寝落ちすると悪夢を見て飛び起きる、という十分に睡眠がとれない状況は
すると、龍慈はもう寝ていて、あまりにも気持ちよさそうに眠っていたので起こすのが
悪夢を見なかったのだ。
それからというもの、毎夜毎晩、頃合いを見計らって部屋に侵入し、全く起きる気配がなかったので
ホテルで部屋を選ぶ際に二人用を望んだのは、寝床に
龍慈は、
龍慈とアーシェラは、ギルドに登録して身分証や通行手形を兼ねる〔ライセンス〕を得るため。
ラーゼンと団長は、
目指す傭兵組合の本館があるのは、都市の中心を流れるユファイ川に
ちなみに、そこまでモンスターやクリーチャーの素材を運ぶ手間を
「二人は、
傭兵ギルドの本館は、重厚感のある鉄筋コンクリート造りの
扉は左右に開け放たれていて、龍慈が
そして、ギルド内を見回していた龍慈の目を
ラーゼンがそう二人を
「こっちの用が済んだらギルド酒場で待ってるから、終わったら来てくれ」
龍慈が了解した
装備まで見るから、と言われたので、今は
受付窓口に誰もいなかったので、
すると、程なくして、制服を身に着けた
「ご用件は、
「はい」
「
そう言われて、あっ、と思い出し、はい、と
羊皮紙を丸めて
「では、そこの通路を進んで突当りにあるドアの前でお待ち下さい」
という訳で、手振りで示された右の壁にある連絡口を潜り、すぐ左に曲がってあとはそのまま真っ直ぐ奥へ。
重厚な金属の
カシャン、ガコン、と
「リュージ様とアーシェラ様?」
そう確認してきたので二人が
「私は『ケレス』。お二人のご登録を担当させて
そう名乗って一礼した。
ケレスに
ここまでの通路もそうだったが、この部屋も天井が高く、入口から見て正面の壁際には、人の頭ぐらいある水晶玉が中央に
「お二人は、
「ん? 分隊?」
『分隊』とは、要するに冒険者の『
この分隊が四つ集まった集団が『小隊』、小隊が四つ集まった集団が『中隊』で、この中隊から『傭兵団』を名乗る事ができるらしい。
龍慈がそのつもりだと答えると、
「分隊名はもうお決まりですか?」
決まっていない。なのでアーシェラに相談すると、直感的に
「――『銀の腕』」
「銀の腕、か…………いいね」
ケレスが、持っていた帳簿――団体名を記録した名簿で確認すると、そういった部隊や傭兵団は他に存在しないそうなので、分隊名は、龍慈が装備している〔神秘銀の機巧腕〕に
「では、リュージ様が個人識別のため〔ライセンス〕に霊力を登録している間、アーシェラ様はこちらのボードへの記入をお願いします。全て
部屋には椅子が二つ用意されていたが、ケレスの指示で、得物を部屋の
それからの細かい手続きは割愛するとして…………龍慈とアーシェラが〔ライセンス〕を手にするまでにかかった時間は、小一時間ほど。
一方は、銅のプレート。こちらは認識票で、氏名、性別、種族、生年月日、信仰する神や宗派が
このプレートの色が示すのは、傭兵としての『ランク』ではなく、戦闘力を示す『レベル』で、レベル1から鉄、白、青、緑、黄、橙、赤、銅、銀、金の10段階。
白から赤までは、鉄のプレートに塗料で着色したもので、銅から精鋭と
そして、龍慈とアーシェラが始めから
ちなみに、この世界の生まれではない龍慈と、長く封印されていたアーシェラは、生年月日を記入しなかったのだが、ギルドのほうで年齢から逆算して生年のみ打刻されている。
更に余談になるが、龍慈は16歳。アーシェラは封印された当時の18歳。自分のほうが年上だったという事を知ったアーシェラは、しばらくの間、隣の巨漢を見上げて唖然としていた。
もう一方は、銀の縁取りがされた半透明のプレートで、こちらが〔ライセンス〕。
一定量の情報を記録する事ができ、書き換えも可能な板状の
ちなみに、ランクは、下からD、C、B、A、Sの5段階で、こちらは通常通り、龍慈とアーシェラもDランクから。
この
更に、クレジットカードとしての機能が備わっているため、ギルドの『預かり所』にお金を預けておけば、市民権を持たない者は入れない内側の壁のこちら側――通称『
この2枚は、どちらも最初の登録は無料。だが、紛失して再発行する際は有料。
……などなど。
〔ライセンス〕と認識票についての説明を一通り聞いた後、また登録用窓口に戻るよう指示されたので、龍慈とアーシェラは、ケレスに感謝を伝えて部屋を後にした。
「お疲れ様でした」
言われた通り、登録用の窓口に戻ると、そこには先程の受付嬢の姿が。
「では、〔ライセンス〕に記録された情報に
最初はする決まりになっているが、本来であれば当人が見る必要のないもの。だが、希望すれば、確認させてもらえるし、内容を変更する事もできるとの事。
手渡された『
まずは、認識票に打刻されているのと同じ。次に、分隊名、ランク、
「ここなんだけど」
龍慈が指差したのは、個人の特徴についての部分で、
「〔
そう指摘して、一応、
すると、受付嬢は、小黒板にその事を
〔ライセンス〕を引き抜くと文字が消え、龍慈は、〔読取器〕をアーシェラに手渡す。
そして――
「190もない」
アーシェラが真っ先に
身長など
アーシェラにとって、190以上か、未満か、というのはかなり重要な事らしく、冷静に淡々と変更を希望したが、重要なのは、本人がどう思っているか、より、実際にどうなのか、だと言われて却下された。
それでもアーシェラはしばらく
「俺は220らしいから、30センチ近い
龍慈が、
結局、修正されたのは、龍慈の左腕は健在、義腕ではないという一点のみ。
その後、説明は、依頼の受け方、メンバーの探し方、
〔ライセンス〕の説明の際に少し触れた、金銭や持ち物を預かって保管してくれる『預かり所』の他にも、字が読めない者のために資料の管理を専門とする職員が常駐していて、依頼達成のために必要な情報を提供してくれる『情報室』や、新たな【才能】が開花していないか、【技術】が上位のものに変化したり別ものものに派生していたりしないか確認する事ができる『鏡の間』などが存在するそうで……
「――あッ!?」
龍慈が突然声を上げたのは、その『鏡の間』が話題に上った時の事だった。
受付嬢に、ど、どうかしましたかっ!? と訊かれた時は、驚かせてしまった事を
「どうしたの?」
受付嬢の説明が終わり、ここでは割愛するが、とある依頼を受けてほしいと要請されてひとまず考えてみると返し、感謝を
「呪いの事を、な。すっかり忘れてた」
「呪い?」
「あれ? 話してなかったか?」
忘れられた城で生活した約一ヶ月の間、食事などの際に、自分はこの世界に召還された転移者だという事や、あちらの世界の事、別行動している仲間の事などを話題にしたが、呪いの事については話していなかったらしい。
共に行動するなら、知っておいてもらったほうが良いだろう。
龍慈は、自分にかかっている呪いの事を――周囲の空間の霊気だけではなく道具に触れるとそこに封入されていた霊気が消失して使いものにならなくなってしまうのだという事を話した。
すると――
「それは、おかしい」
「おかしい?」
「そんな呪いにかかっているのなら、〔
「あっ」
「〔ライセンス〕を作る際に触れた道具は壊れなかったし、忘れられた城の設備やアムリタの
「確かに」
ならどういう事だ? と首を
アーシェラも、しばし
「……もう呪いは
「は? なんで?」
この呪いは、メグミを元の世界に送り返した代償。それ
「〝マザー〟の
「…………あぁ~、なるほど」
呪いが解けたのがそのタイミングなら、突入する際に忘れられた城を
十分に納得できる説明だった。
「じゃあ、そういう事で」
原因理由はどうあれ、呪いが解けているなら
つい先程まですっかり忘れていたが。
――何はともあれ。
龍慈は、そう言ってあっさり片付けると、さっさと気持ちを切り替えて、
「とりあえず、ギルド酒場に行こう。〔ライセンス〕をもらうのに結構時間かかったからな。これ以上待たせたら悪い」
ラーゼンと団長が待っていると言っていた、ギルド酒場へ向かって歩き出す。
アーシェラは、まず、その切り替えの速さに
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