第20話 スタッフ

 音々ねおんさんが用意したケーキはあまり大きくはなかったけれど、四人で切り分けるには十分だった。わたしは一番大きいカットの載ったお皿をもらう。桜の咲いたところは自然と最年少の光姫みつきさんのところへと流れた。


「子供扱いしないでくださいよ」


「なに。入学したての光姫さんが一番桜の花が似合う。ただそれだけさ」


 音々さんが芝居じみた話し方で光姫さんをなだめる。


「さて、皆にケーキとフォークは行き渡っただろうか?」


 音々さんが見回すと、それを待っていたかのように甲高い金属音が室内に響いた。用を終えて端に追いやられていたケーキナイフが床に落ちたのだ。


「いやはやすまない。少し端に置きすぎたな」


 音々さんがナイフを拾ってテーブルの中央寄りに置いた。ナイフについていたケーキが飛び散って、床を汚している。


「床の掃除は後でしよう。せっかくのケーキだ。温まってしまう前に食べてしまおう」


 やっと食べれるとフォークを握ると、足元を何かが通ったような気がした。


「ブヒブヒ」


 そんな鳴き声も聞こえた気がした。さっきナイフが落ちたあたりに目をやると、小さな子豚が床に落ちたケーキの欠片を舐め取っていた。


「え? ちょっ! 豚いるんだけど!」


 光姫さんとはる先輩と、音々さんも豚に目を向ける。でもすぐにテーブルに視線を戻した。


「では、たべ子さんとの出会いと食べ物に感謝しよう。いただきます!」


「「いただきます!」」


「待って。わたしはスルーできふぁい」


 ケーキを頬張りながら、わたしはそう言った。




(※この作品はフィクションです。許可なしに動物を学校に連れてきてはいけません)

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