第16話 どうしても聞きたい


「あらあら。そんなことがあったの?」


「まったく。メガネがなかったら即死だった」


「ご、ごめんない。早とちりというか、たべ子先輩のことは噂ばかり耳に入ってしまっていて……」


 はる先輩がちょうどやってきて、音々ねおんさんと光姫みつきさんからさっきの強襲事件のことを聞いていた。音々さんも別に怒っているわけではなく「いいんだいいんだ」と笑い飛ばしている。


 そんなことよりも、光姫さんがいったいどんな噂を聞いていたのかが気になる。


 音々さんがわたしへと向き直った。


「改めて紹介しよう! 我が部唯一の一年生。如月きさらぎ光姫さんだ」


「よろしくおねがいします。先程は失礼しちゃいました」


 敵意は無くなっても、大きな目は強い眼光を持っていてそれなりの圧を感じる。


「よろしく」


 わたしが手を差し出すと、光姫さんはやっぱり両手で掴んだ。


「そうだ。一個聞きたいことがあるんだけど」


「なんですか? なんでもきいてください」


 わたしが聞きたいこと。


 それは――


「光姫さんの家は何の食べ物屋さんなの?」


「えっと……?」


 光姫さんが周りに目を向けると、陽先輩がすぐに寄ってきた。


「たべ子さん? 別に食べ物屋さんじゃなくても部員になれるのよ?」


 そういえば音々さんの家も食べ物屋さんじゃなかった。




(※この作品はフィクションです。噂はあまり気にしてもしょうがないです)

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