第13話 約束
「はっくしょーん!」
わざとらしい大きなくしゃみが教室に響いた。一瞬にして教室が静まりかえる。
「わたしの噂話をしていたようだね」
芝居じみた話し方だけで
「音々さんの噂話はとっくに終わったから戻っていいよ」
そう言って引き下がる音々さんじゃない。机の真横まで来た。
「つれないじゃあないか。では何の話をしていたんだい?」
「たべ子は有名人だよって話をしてたの。音々さんも知ってるよね?」
「おや、たべ子さんは有名人だったのかい? でも最初に目をつけたのはわたしだろう?」
「残念。最初に目をつけたのはわたしです。幼稚園からの付き合いだからね」
帆乃が両手の人差し指を自分の頬に向けた。音々さんは右手を額に当てて天井を仰ぐ。
「こいつは参った。ぜひたべ子さんのことをご教授願いたい。たべ子さんを迎えに上がったのだが、一緒にどうだい?」
「うーん。どうしよう。そもそもたべ子は行くの?」
「行くよ」
帆乃がニヤニヤと嫌らしい笑みを見せた。
「なんだかんだ気に入ってるんじゃん」
「ううん。でも今日はちゃんとお菓子を貰える約束したからね」
「その食い意地の張り方は尊敬に値するよね」
帆乃はよく笑う子だ。
(※この作品はフィクションです。簡単にお菓子に釣られてはいけません)
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