第12話 食べ物を投げただけなのに


「みたいなことがあって、昨日は散々だった」


 正面の席に座る帆乃ほのに愚痴った。帆乃は短いツインテールを揺らして幼く見える顔をほころばせる。


「たべ子は友達少ないんだから、部活入ってみてもいいんじゃない? 食文化研究部だっけ? 食べるのが好きなたべ子にぴったりだと思うよ」


「友達が少ないなんてことは……あるか」


 はっきりと友達と呼べるのは正面に座る幼稚園からの友人――帆乃くらいしかいない。クラスの人とは普通に話すけれど、遊びに行ったりとかはあまりしないのだ。


「うーん。でも友達が欲しいわけじゃないしなぁ。それに変な人なんだよ。音々ねおんさんって」


「たしかによく聞くよね。音々さんの名前」


 帆乃はわたしと違って友達が多くて、噂とかにも詳しい。


「有名な人?」


「学校内ではそうだね。たべ子と同じくらい有名だと思う」


「え? わたし有名じゃないよね?」


 あどけない笑顔のまま帆乃は首を横に振る。


 わたしの机の上には、何故か色んな人から貰えるお菓子が載っていた。




(※この作品はフィクションです。悪目立ちしないように気をつけましょう)

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