第10話 観察対象


 AA先輩が立ち上がった。


「ごめんごめん。面白い人って聞いてたからさ。つい聞いてみたくなって。聞いて正解だったけどさ」


 AA先輩は涙目になりながら、大きく口を開けて『ハハハ』と笑う。そして魔女みたいな帽子を取って胸に当てた。


「さっき紹介してもらったから自己紹介は省くけど、ボクはミス研の会長でここの部員じゃないんだ。ここの部員でこの帽子は変だと思ったよね?」


「ここが何部なのか知らないですし、ミス研でも変だと思います。ミス研ってミステリー小説にハマりすぎた人の集まりですよね?」


 探偵がよく被っている前後につばのついた帽子なら納得だけれど、魔女の帽子はどちらかというとオカ研だ。普通はハロウィンでしか見ない。


 AA先輩は人差し指を立てて、メトロノームみたいに横に振った。


「よく間違えられるけど、ボクのミス研はミステリアス研究会の略だよ。ミステリアスな学生を追跡するのが活動内容なんだ。たべ子さんは会員全員の注目の的だよ」


「なんで?」


 もう帽子とかどうでもいいわ。




(※この作品はフィクションです。かぶる帽子はちゃんと選びましょう)

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