第9話 花より団子


「たべ子さんは観賞魚が嫌いなん?」 


 朱里あかり先輩……AA先輩が座ったまま少し前のめりになった。


「今のは食べ物屋さんを期待してたからで……でも少し苦手かもしれないです」


 そう言うと、音々ねおんさんが両肩をがっつり掴んできた。


「観賞魚はいいぞ。背伸びさえしなければ手間もそこまでではないし、ちゃんと世話をすれば意外と懐いてくれる。何より水槽は美しい」


「わかってる。わかってるってば!」


 肩を軽く振ったら、簡単に音々さんの手は離れた。


「ネオンテトラとかグッピーみたいな小さくて綺麗な魚はかわいいと思うし、きちんと作られた水槽は幻想的で綺麗だなって思う。でもね……」


 見回すと音々さんもAA先輩も、はる先輩までもが前のめりになっていた。こうなったらもう言うしかない。


「水槽を見てると『この子は食べれるのかな?』とか思っちゃったりして、罪悪感がすごい」


「「「なるほど」」」


 声が三つ重なったのが無性に腹立たしい。





(※この作品はフィクションです。物を見た感想はそれぞれでいいと思います)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る