第8話 魚屋さん


音々ねおんさんのお家もお店なのよ」


 はる先輩がそういうので、仕方なく黒縁メガネと向き合う。


 二人の先輩のお店は名字から予測できた。たしか音々さんの名字は十河そごうだったはずだ。


「あ、S○G○かな? 駅前のデパート」


「違うとわかって言っているね? 肉屋、八百屋ときたのだから、その流れ通りわたしの家は魚屋だよ」


 頭の中の食べ物屋さんマップを検索する。


「近くの魚屋さんだと『魚河岸鷹見』と『鮮魚窓馬』と『うお的』くらいしか知らない」


「一瞬でそんなに名前が出るなんて流石だ。だがその中にわたしの家はないよ」


「やっぱり?」


 つまり、まだわたしが知らない魚屋さんがあるということだ。


「なんてところ?」


「興味があるかい?」


「うん。今度音々さんがいない時間を狙って行ってみる」


「遠慮しないでわたしのいるときに来たまえ。わたしの家は『アクアリウム リバークロス』だ」


「魚専門のペットショップじゃねーか」


 音々さんが食べ物だったら投げていた。




(※この作品はフィクションです。紛らわしい物言いには気をつけましょう)

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