第7話 食べ物屋さん

 陽先輩が少し横に避けて、テーブルに座ったままの浅黒くて小柄な先輩を手のひらで示した。


「あっちの帽子を被った子が阿宝あぽう朱里あかりよ」


 朱里先輩は口元に笑みを含みながら手を上げた。


「よろしく。気軽にAAと呼んでくれよな」


 魔女のような帽子がギャップに見えるようなボーイッシュな話し方だった。


 音々ねおんさんがわたしと陽先輩の間に入ってくる。


「陽先輩とAA先輩の家はお肉屋さんと八百屋なんだ」


 わたしは音々さんを避けて陽先輩の顔を見た。


「もしかして『肉好きのための月精肉店』と『林檎はアポウ』ですか? お二人共どこかで見たような気がしてたんですよ」


「あら、知ってくれているのね。うれしいわ」


「はい。わたし、食べ物屋さんにはよく行くんで」


 音々さんがそっと離れる。


「レストランや定食屋以外を食べ物屋さんと言う人を初めてみたよ」


 ちいさく呟いたのがよく聞こえた。




(※この作品はフィクションです。人が話しているのをむやみに邪魔するのはやめましょう)

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