第37話 誰にだって夢中になるものの一つや二つ(4)


「フィーグさん……。ありがとうございました。

 何より、聖女職にして頂いて……感謝しきれません」


「いや、エリシスの力だと思う。スキルの量、レベルともに聖女になってないほうがおかしい」



 落ち着いたエリシスは、俺たちに礼儀正しく頭を下げた。

 彼女は俺の言葉ににっこりと微笑む。

 さて、スカウトをしようか。



「もしよかったら、エリシス……。俺たちのパーティの一員にならないか?

 スカウトしたい」



 リリアもうん、と頷いている。



「エリシスさんの【全体大回復マス・ヒール】はかなりすごいと思います」


「それに……エリシスはひょっとしたら、前衛と回復役を兼務できそうだ。

 君が探しているものがあるなら、俺たちも手伝うこともできる」


「はい。わたくしも、是非フィーグさんとリリアさんとご一緒できればと思います」



 エリシスはすぐに返事をした。

 迷わず、即決だ。

 何か目的があるのなら多少難色を示されるかもと思っていたのだけども。

 それに伯爵のこともあったはずだ。


 俺は少し拍子抜けをしてしまった。



「いいのか?

 そんなにあっさり決めて」


「はい。わたくしは、必要として下さる方の傍にいたいと思っています。

 ありのままを受け入れてくれる方の元に」



 ありのままか。

 最初はどうなるかと思ったけど、彼女は戦闘中、絶好のタイミングで全体回復魔法を行使していた。

 むしろ前線にいる分、戦いの状況が把握できて味方のピンチを把握できるかもしれない。



「ありがとう、よろしくな」


「もし私がまた暴走したら、フィーグさんが治してくれるのですよね?」


「しょっちゅう最初見た感じになると困るけどな」


「まあ、しょっちゅうはなりませんよ……たぶん」


「自信なさげだな。まあ、俺はそれしかできないけど任してくれ」



 といいつつ、最初に会った時のアレは本当にスキル暴走の結果なのだろうか?

 ……などと俺は思ってしまった。すまん、エリシス。



「……いいえ。スキル以外のことも沢山の教えをフィーグさんは与えてくださったと思います。

 私にとって……神以上の……存在です。

 是非、お仕えさせていただければと思います」


「神って……いや、俺はただのスキル整備士だ」



 エリシスは、そう言って短くなった釘バットを大事そうに抱えつつ、俺にひざまずき、祈りを捧げるような仕草をした。

 は、恥ずかしいからやめてくれ……。



「と、とりあえず、その釘バットというか釘棍棒スパイクメイスの修理は必要だな。ダンジョンの下層に降りたら敵が強くなるだろうし」



 俺は、そう言ってダンジョンの奥を見つめた。

 下に降りる階段があり、その上には竜のエンブレムが掲げられている。

 どこかで見たようなエンブレムだ。どこだっけ?


 思い出せないので後回しだ。

 どちらにしても、エリシスには先に解決したい問題がある。



「それに、フェルトマン伯爵のこともある」



 その名前を出すと、エリシスの表情が曇った。

 フェルトマン伯爵の依頼を受けている以上、そしてエリシスの事がある以上、キチンと決着を付ける必要があるだろう。



「フェルトマン伯爵が……私を探しているのですか?」


「ああ。会いたいそうだ」


「そうですか……彼は、私をいらないと……婚約破棄をしてまで捨てたのです……。治癒の能力が不足していて、彼の経営する診療所で役に立たないと」


「なんだって? じゃあ君は……?」


「はい。一応、爵位がある家の者です。神殿と縁があったので、このように神官職にも就きました。

 結婚したらやめるつもりでしたが……結局婚約が破棄されて……」



 彼女は、家のこともあり、役に立つように、スキル能力アップを目指してこのダンジョンに来たのだという。

 婚約破棄の原因となった、「足りない」と言われた治癒スキルのさらなる力を求めて。


 ストイックに一人で頑張ってきたのだな。



「彼にまた認められようと……役に立てるように変わろうとして頑張っていたのですが……。

 神であるフィーグ様に出会い私の考えは変わりつつあります」


「そ、そうなのか?

 まあ会いたくないなら、俺たちだけで話をししてもいいけど

 あと俺は神じゃ無いから」


「いいえ。はっきり、私の想いを伝える良い機会なのかもしれません。

 私は神、フィーグ様に仕えると」


「いや、だからね……」



 俺たちは、フェルトマン伯爵と話をするために、次の目的地を王都に定めた。

 正直、アクファたち勇者パーティーの面々と顔を合わせたくないが、そうも言ってられない。

 新たなパーティメンバ−、エリシスのために目の前の問題を片付けてしまおう。


 じゃあ、とっとと飛翔して王都に向かおうか。


 とここで俺は気付く。

 あれ?

 何か大事なことを忘れているような……。



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【あとがき】


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