第04話 転売ヤー——side 勇者アクファ

——勇者視点。


 王都ギルドに勇者アクファが足を運ぶのは、大抵悪だくみをする時だ。



「よお、ギルマス」


「あー、勇者アクファよ、よく来たな。勇者が発見した真ミスリル鋼をウリにした鎧の話だが、順調だよ。

 相変わらず上級の冒険者はムリだが、下級の馬鹿な冒険者には高く売れているぜ」



 勇者アクファは。それを聞いてニヤリとした。

 ミスリル鋼で作られた! とうたっているが、その正体は買い占められた安物の装備だ。


 そんな粗悪品を勇者ブランドのものとして販売する。

 勇者がギルマスに提案した、悪だくみの一つだ。

 安く買い占め高く売る——いわゆる転売である。


 装備が不足し品薄になり、高い勇者印の装備を買うしかないという冒険者も出てきている。



「そうか。意外とバレないもんだな」


「ああ。まぁ見た目だけは悪くないし、勇者印に釣られる馬鹿が多い。

 そういえば、それを装備したら皮膚が腫れたとクレームを付ける冒険者がいたらしい」


「おい、大丈夫なのか? ギルド支給の物が不良品だなんてバレたら——」


「勇者アクファよ、あんたらしくもないな。大丈夫だ、訴えたヤツは闇市の奴隷商にでも売り飛ばすさ。

 もっとも、皮膚が腫れた奴隷では買い手が付かないかもしれないがな。ガハハ」


「お前もなかなか悪いな」


「おや、勇者様ほどではありませんよ」



 勇者アクファと王都冒険者ギルドマスター・デーモ。

 二人は王都ギルドの力を使い好き放題にやっていた。


 粗悪品を売りつけたり、冒険者に高額な借金をさせた挙句、脅迫し好き放題したり。

 しかし、最近では勇者の名を用いて、より安全な金儲けに切り換え始めている。



「それで、例の勇者パーティから追放したフィーグはどうした?」


「いや、予想以上に王都を離れるのが早くてな。今ヤツの故郷を襲わせるパーティを選定している」


「チッ。まあ、王都を離れたなら時間が多少かかってもいい。どうせ、その街のギルドに顔を出すだろうから……

 いや、それならいい手がある」



 勇者アクファは、ギルマスに何やら耳打ちする。



「ああ。分かった」


「じゃあ、この前脅かした女を肴にこれからいっぱいやるか」



 勇者とギルマス。

 蜜月の仲である二人の夜は更けていく——。


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