最終回
「次はどこ行く?」
ここで普通ならそのまま逃げるのが良いのだろうが、読まれるだろう、読まれない手を、定石では無い手を、定石では無い最前の手を、定石じゃ無ければ読まれない、読まれないなら捕まらない、多少の時間稼ぎにはなるだろう、ここで戻ってみると言うのも良いのかもな、誰が考える、逃げた奴が元の位置に戻ると、しかも命がかかってるのにバレている位置に戻るなんて、少なくとも安定を取る大人なら取らない手だろう、このままこの方角に進んだらいつか先回りされるなら1回引き返すのも良いのだろう、それに今まで1度も引き返すなどしてこなかった、もしかしたら戻ることにより助かるかもしれない。
「1回アリーチェさんの家に戻りたい」
「何でだ?」
「何となく」
場所にこだわりはなかった、別に僕の家でも良いのだろう、親には言えば分かってくれるだろう。
「こんな命のかかった時に何となくとはな、まあお前が1番この状況を理解してるだろう、なんせ、この時間を何回も体験してる訳だからな、そんな優輝が言うのだから、間違い無いのだろう」
思い出したが、あの時の撮った動画をどうするかだよな、誠にでも渡してみるか、何かしてくれるだろう。
「じゃあ出発するぞー」
アリーチェに抱っこされて、移動してるうちに寝てしまった。
「おーい優輝、起きろー、着いたぞ」
「ん?」
「やっぱ起きなくて良いよ」
眠りから目覚める。
「ごめん寝てた」
「別に良いよ」
そういえば何日たったか数えてなかったな、たぶん3日くらいか。
食べのもは僕が顔バレしてないから、買えてるので良いが、そろそろバレるような気がする。
「何やる?」
「ベットでくつろごう、ここ数日休憩という休憩は出来なかったからな」
「分かった」
2人でベットに入る。
この距離で目の前にアリーチェさんがいるのはまだ慣れないな、恥ずかしい、顔を逸らしてしまう。
「優輝どうした?」
「いや特に何も」
「して欲しい事があったら言ってくれよ、そうしたらできる限りの事はするから」
「普通に寝よ?」
「そうだな」
目を閉じ、眠る。
夢を見る、アリーチェさんがどこかに言ってしまう夢を。
優輝が抱きしめて来た、可愛いな。
寝ようとは言われたが、もし寝込みを襲われたら勝ち目が無いので起きてる訳だが、私を抱きしめてきたと同時に、優輝が唸り始めた、大丈夫だろうか。
そんな事を考えていたら、ドアが開く音が鳴る。
誰かが入ってきた。
とりあえず優輝を起こそう。
「おい優輝起きろ」
そう言いながら、ほっぺたを抓る。
「ん?」
「やっと起きたか、とりあえず誰か入ってきたから逃げるぞ」
「分かった」
アリーチェさんに抱っこされ窓から出る。
「化け物が居たぞこっちだ」
男性がそう言いながら銃を構える。
アリーチェさんが両手を上げ敵意を持ってない事を示す。
「私は戦いたくない、だから 、撃つのはやめてくれ」
「お前には賞金がかかってる、10億円、3人程度なら一生遊んで暮らせる金額だ、それをわざわざ見逃すとでも?」
男性が引き金に指をかけて、撃つ。
またダメだった、まただ、また救えなかった。
今回こそは救えると思ったのに、何でだ。
「何で、何でお前がいるんだよ」
アリーチェさんの声が聞こえる。
何があったか分からない、勝手にアリーチェさんが撃たれて死んだと思ったが、違うのか?。
アリーチェさんの見ている方を見る。
そこには、唯一の友達、誠が居た。
何で、ここにいるんだ。
「誠!」
涙が溢れ出る。
「何でお前がここに」
「お前らを助けたかった」
「でも、何でお前が死ぬんだよ」
「そうするしかお前らが助からなかった」
「何でそんな事が分かる」
「別の世界を何百個も見てきた、でも俺とお前ら3人で笑って平和に過ごしている姿は無かった、俺が生きてる世界ではお前らは死ぬ」
「何を言ってるか分からないよ!」
「理解しなくても良い、ただ俺の意志を無駄にはしないでくれ、だから過去に戻るんじゃねぇぞ」
「何でお前がその事を」
「他の世界を見てきたと言っただろう、お前に能力を教えて貰う世界もあっただけだ」
「・・・」
「最後ぐらい笑顔で見送ってくれよ、これでも死ぬの怖いんだぜ、ほらいつもみたいに」
頑張って笑顔を作る。
「じゃあな優輝」
「じゃあな」
そういった時には既に絶命していた。
息が停止したとわかると、誠が死んだということに実感が湧き、更に涙が溢れ出る。
「絶対に帰って来いと言ったのに、何で、何でお前が帰って来なくなるんだよ!約束したのに何で」
感情に任せて、泣き叫ぶ。
誠の亡骸に顔を埋めながら。
感情が収まってきた。
気づいたら男性達は逃げていた。
「優輝、今は逃げるぞ」
アリーチェさんに引っ張られる。
「誠も」
「どうやって運ぶ」
ここから逃げるしかないとなると無理だ、ならせめて一部だけでも。
長考の末導き出した答えは。
「骨を一本だけ持っていきたい」
「分かった、じゃあ待っててくれ」
アリーチェさんが誠を持って台所の方向に行く。
数十分間経ったらアリーチェさんが戻ってきた。
「初めてやったから調べながらやってたら時間がかかった、それでこれを」
白色の棒状の物が渡される、大きさ的に指の骨だろう。
「ありがとう」
誠の骨を大事にズボンのポケットに入れる。
「大丈夫か?」
「うん」
「今から誰もいない島か樹海、取り敢えず開拓されてないところに逃げる、数年程度で私達の存在は忘れ去られる事だろうその時までそっと息を潜める」
「うん分かった、でも母親に挨拶しに行きたい」
「分かった、じゃあ行くぞ」
アリーチェさんにお姫様抱っこをされ空を飛ぶ、僕の家にはすぐ着いた。
アリーチェさんはリビングに待ってもらって、母親がいるであろう部屋へ行く。
「母さん」
「どうしたんだ、急に」
「数年間この家を出ます」
「そうか、頑張ってこいよ」
「今ニュースで出てる化け物ってのに助けてもらったの優輝だよな?」
「うん」
「そうか、ならその人に感謝をしたいんだが、いるよね今」
何から何までお見通しか。
「うん、呼んでくる」
アリーチェさんを呼びにリビングに移動する。
「婚約の話もするか」
今何と言ったか聞き直したかったが今は時間が惜しい。
「連れてきたよ母さん、アリーチェさんだよ」
「はじめまして、優輝のお母様」
「はじめまして、そして息子を救っていただきありがとうございます」
「好きな人を救っただけです、感謝されることじゃないです、それとお母様突然ですが、優輝を私にください」
アリーチェさんが頭を下げる。
「良いですよ」
思考時間が本当にあったのか、疑問に思う位に即決だった。
「そんな簡単に」
そんな言葉が出えしまった。
「優輝の命の恩人の頼み事だ断れる訳もない」
「ありがとうございます」
またアリーチェさんは頭を下げた。
「私の事は構わず早く出ていきな、時間ないんでしょ?、またね優輝元気でね、アリーチェさんはうちの息子をよろしくお願いします。」
母親が頭を下げる。
玄関のドアを開け、本当に別れのときに、本当に言いたかった事を。
「母さん、今まで育ててくれてありがとうございました、身勝手で急に出ていくような俺を許してくださいすみませんでした」
母親は最後まで笑顔で送ってくれた。
その後逃げ続けた、人がいないところに行き僕とアリーチェさんの二人何年も生活する。
僕の望んだ幸せは誠の犠牲があったが、手に入った、時を戻って誠も助けたいが誠の勇気と意志を踏みにじるような事はしたくないからやらなかった。
「今日でお前18歳だよな?」
「もうそんな時期か」
「私からの誕生日プレゼント」
石をリング状に削って作られた指輪だった。
「結婚してください」
アリーチェさんにそう言われる。
もちろん答えは決まってる。
「僕で良ければ」
「これで正式な夫婦と言うことだな、これまで長いようで短かったね」
「最初の頃は色々あったよね、誠は今でも見守ってくれてるかな」
そう言いながら誠の骨を加工して作ったお守りを握りしめる。
「もしかしたら、数年の平穏は誠のおかげかもな」
「それならあの世で感謝しないとね」
「あの逃走劇が終わってからのサバイバル生活も」
「その後は家を作ったり」
「色々濃い数年だったね」
「インターネットを見る限りあともうちょっとの心房だよ、有り難いことに僕達を助けてくれる人も居たし」
「今のままでも幸せだからどうでもいいけどね」
吸血鬼に恋した僕 ざん @zan12
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます