第九話 吸血鬼の血を飲むと
「おい優輝どうしたんだ?ぼーっとして」
戻ってこれた、僕の意思で時を戻れるらしい、だがいつこの能力を失うか分からない以上今回も全力でアリーチェさんを救いに行く、そして前の世界で分かった、国は信用出来ない、ならアリーチェさんが望んでる和解も難しいだろう、ならどうする?、どうやってアリーチェさんに諦めて貰う、この能力を言うか?、というかなんで隠してんだ、言うか、信じて貰えないかも知れないけど。
「アリーチェさん、僕は、時を戻る能力を持ってる、それで2回、アリーチェさんの死を体験した、それで、アリーチェさんが望む和解という選択は悲劇しか産まないと思う、国は信用に値しないと思った」
「優輝が時間を戻る能力を持ってるのは信じよう、だが国が信用に値しないと言うのはどういう事だ?」
「アリーチェさんは自衛隊の人に対し、僕の自由とアリーチェさんの身の保身を約束したんだ、それでも、人を犠牲に生きるのはダメだと言ってアリーチェさんは殺された」
「分かった、お前の言葉は信じようでも、それだけか?、まだ交渉の余地はあると思うが、例えばメディアに対し私が発言して、国民に訴えかける、それで国民が心を動かし一定数が私の味方をしてくれれば、国も私を殺す訳には行かないだろう」
「でもそれをどうやって世に広めるかだよな」
「多分そのうちマスコミがこぞって僕達を探し始める、そこが勝負どころかな?」
「そうなるな、だとすると、自衛隊の活動が少なくなってきた時だな」
「じゃあ1週間くらい経った頃が勝負どころか」
「そうだな、ところで外はどうなってる?」
「自衛隊が来た」
「じゃあ逃げるか」
「分かった」
「多分僕が走るより、僕をアリーチェさんが持って飛んだ方が速いけどどうする?あと数分は走れるけど」
「じゃあ、お姫様抱っこをするよ」
「分かった」
数時間移動したが今はどこら辺なのだろう、日が出てきた。
「もうこんな時間か」
「本当だね、どうする?そこら辺で寝るか?」
幸運なことに今下は山だ、そう簡単には見つからないだろう。
地面に座り背中をアリーチェさんと合わせてもたれ掛かり、寝る。
体がズキリと痛む、その痛みで起きる。
「おい待て打つのやめろ、後ろに少年がいる」
何が怒ってるんだ、地面に手をつけて立とうとしたら、ドロドロな液体が手の平つく。
手のひらを見たら赤黒い液体、血だった。
1ヶ月くらい前にみたもの
「またダメだったのか」
胸あたりの腰あたりが痛い、ここで死んだらタイムリープは出来なくなるのだろうか、分からないな、出来なくても困るし前と同じように、祈る。
戻れなかった、なんでだ、ここで終わりかよ、アリーチェさんと普通に暮らしたかったんだけど、なんで、そんな普通の幸せを、アリーチェさんが化け物だからってだけで、邪魔されなければならないんだよ、やっぱり諦めれない、戻りたい、戻りたい戻りたい戻りたい、戻ってアリーチェさんと幸せを掴むんだ。
戻れたのか、前回と同じように説明し逃げる。
今回は前回と真逆の方、自衛隊を突っ切る方角を選んだ。
運が良かったのか意外と楽に行けた、とは言っても僕はアリーチェさんに持ってもらった訳だが、ふと思い出す。
吸血鬼って仲間を増やしたり眷属を作ったりするとか言うがアリーチェさんはどうなのだろう、これに関しては本人に聞くしかない、なんなら本人すら知らないかもしれない。
「アリーチェさんは仲間を増やしたり出来るの?」
「分からない、1度もやったことは無いからな」
やってみるのも良さそうだ、もし僕が吸血鬼の力を手に入れたら、僕を守る必要も無くなる。
「1回試してみよう」
「どやってやるつもりだ?」
「映画とかなら血を分け与えるとかあるけど」
「やってみるか」
下に降りて、アリーチェさんがどこからかナイフを取り出す。
途端アリーチェさんは自身の腕を浅く切る。
血が出てくる。
これを飲めということか。
アリーチェさんの傷口に口を近づけて血を飲む。
口を離す。
正直美味しくなかった。
「味は聞かないでおくが、どんな感じだ?」
体に変化は無かった。
「特に変化は無かった」
「そうか、じゃあまた移動を再開しよう」
「分かった」
「うっっっっっ!」
急に激痛が全身を襲う。
急に優輝が悶え始めた。
様子を見るに激痛に耐えられずもがいている様な感じだ、とりあえず優輝が落ちるのは回避しなければならない、支える程度だった手を優輝を掴む形にして地面に降りる。
「優輝どうした、どこか痛いのか?」
ずっと悶絶している。
本当にどうしたのだろう。
ここで私は何をできる、優輝のためにできることはなんだ?とりあえず怪我なら応急手当か。
「優輝どこが痛い?」
「全、身」
全身か、怪我があるかもしれないから服を脱がせよう。
もがいてる優輝を差し押さえながら全裸にする。
だが体に怪我など見つからなかった。
応急手当ができないか、ならどうする?、何も出来ないか、こんなに優輝がもがき苦しんでいるのに私には何も出来ないのか、そんな自分が情けない。
数分間この空間にいる2人は苦しみ続けた、優輝は激痛に、アリーチェさんは最愛の人に何も出来ない事に対し。
慣れてきたのか痛みは引いてきた。
全身がピラニアに食い荒らされる様な激痛だった。
落ち着いてきた。
「落ち着いてきたか?」
「うん」
「ごめんね、何も出来なくて」
「アリーチェさんは何も悪くない」
「そう言ってくれるとありがたい、それで全身の激痛は何が原因だ?」
「分からない」
「もしさっきの私の血を飲んだのが原因だとするなら、1回全力でジャンプしてみて」
「分かった」
思いっきり足に力を入れ腰を沈めジャンプしてみる。
「うおっ」
10mくらい飛んだ。
「へ?」
「やっぱりか、多分さっきの激痛は細胞が壊され吸血鬼の細胞に変えられる痛みだと思う、筋肉痛と同じ感じだと思う。」
「これならアリーチェさんにお姫様抱っこして貰わなくても移動できる」
「そんなに私にはお姫様抱っこされるのは嫌だったか?」
「いや、もっとして欲しいけどアリーチェさんの体力的な面でも2人で走っ」
僕の口を遮る様にアリーチェは無理やり僕を抱っこして飛び始めた。
「なん、で?」
「だって、2人とも抱っこしたいと抱っこされたい、やるしか無いじゃん」
「まぁアリーチェさんが良いなら良いや」
「でもどこに行く?」
「どこか泊まれるところ」
「廃墟か洞窟とかかな」
数時間の移動
「優輝とりあえず今日はこの洞窟で寝るぞ」
「分かった」
アリーチェさんの隣に座り、寝る。
大きい音が鳴る。
それと同時に目覚める。
なんの音だろうか。
目を開けて周囲を確認する。
銃を構えた迷彩柄の男性3人が居た。
隣で寝ていたアリーチェさんは、左胸部から血が出ていた。
心臓を打たれたらしい。
どうすれば良い、吸血鬼は人間の血を飲んだら治癒能力が上がるかもしれない、どうやったら飲ませやすいか。
口の中に血を垂らす程度だと無理だろう。
ならば舌を噛み切って舌から出る血を飲ませて見るか。
痛いんだろうな、でもこれしか助けれる方法が見つからない。
「3.2.1」
1と言うと同時に舌を噛み切った。
口の中に液体が大量に出てくるのを感じれる。
アリーチェさんに口をつけ、血をアリーチェさんの口の中に送る。
頭がクラクラしてきた。
ふと思い出す、さっきアリーチェさんの血を飲んだ事により僕は人間では無くなっていたのだ、再生する訳が無かった。
「坊主、口から血が垂れてるが大丈夫か?」
また助けれなかった。
気づいたら血は止まっていた、やっぱり人間の体では無くなっているのだろう。
戻るしかない、アリーチェさんを助けるために、戻る。
意識が落ちていく。
「おい優輝どうしたんだ?ぼーっとして」
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