第七話 覚悟

8月15日7時30分

準備できた、あとは、アリーチェの家に行くだけ。

自転車に跨りアリーチェさんの家に向かう


8時3分、アリーチェさんの家に着いた。

ドアをノックする。

ドアが開きアリーチェさんが出てくる。

「おはよう」

「おはよう」

「よし行こう」

「ここで駄弁っても意味ないし話しながら移動しよう」



「そういえば吸血鬼って日光が弱点だったりするの?」

「いや、多分だけど私がまだ村に居た頃に残った伝説だろうが、夜より昼間の方が弱くなる、正確には昼間が通常で夜になると力が湧いてくるといった感じだ」

「じゃあ日傘さしてるのは?」

「日焼けが嫌だから」

「日焼け止め塗れば?」

「オシャレという言葉を知らんのかお前は、ほら日傘さしてるとなんか美人っぽいだろ?」

「いやわかんないけど、とりあえずアリーチェさんは普通に美人だと思うけど」

アリーチェさんの方を見ながら言う

「危ない!!」

視界外から車がくる。

アリーチェさんが僕を後ろに投げ飛ばし、車を受け止める。

とりあえず状況を生理しよう、こういう時こそ落ち着け。

アリーチェさんが僕を助けて車を受け止めた、車はどうなってる、車の中の人は、アリーチェさんが力を受け流すのに長けていたのか、それとも力を自分の体だけで受け止めたのか、車は無事だった、ここでの一番の問題はアリーチェさんの力を見た運転手とドライブレコーダーか。

「アリーチェさんとりあえず逃げよう」

「ダメだ、足が折れた、吸血鬼とはいえ、再生に数分かかる」

それならアリーチェさんをおぶってここを離れるか。

「よっこいしょ」

流石に人、吸血鬼を背負って数分走るのはキツいが頑張るしかないか、火事場の馬鹿力やらなんやらでどうにかなるだろう。

アリーチェさんを背負って走って数分経った頃。

「もう治った、体力もキツいだろう、私が優輝を背負って行くよ」

正直に体力がキツかったのでアリーチェさんに背負ってもらうことにする。

「ちゃんと捕まっておけよ」

ちゃんと捕まる。

アリーチェさんから翼がはえて、上昇し始める。

数分で僕の家に着いた。

「今日は済まなかった、今までありがとうな、今日から逃亡生活になるだろう、とは言ってもまだあの家は特定されてないから当分は良いと思うが、いつかまた会える日がある事を願うよ、じゃあね、最後に優しいお前ならどうせ私に着いてくると言うのだろう、だがあえて言わせてもらう、絶対に来るな、良く考えてから行動してくれよ」

すぐにアリーチェさんは立ち去った。

どうすれば良いんだ、とりあえず自室に戻って考えよう。

茨の道を選ぶかアリーチェさんなんて居なかったかのように受験勉強を頑張るか、、、アリーチェさんは来るなと言っていた、それと同時に良く考えて行動をしろとも言った、僕が良く考えて、アリーチェさんについて行く茨の道を選んだら受け入れてくれるだろうか?


数時間悩んでも結論は出なかった。

そんな時、携帯が鳴る。

誠からの電話だった。

一応電話に出る。

「インターネットに出回ってる化け物ってアリーチェさんの事だよな?」

「インターネットに出回ってるの?」

「あぁトレンド1位になってる、色々な人の意見が出回ってる、化け物出現で異世界の出入口が開いただとか、一応警察に動画は渡っていて、コラじゃない事は判明した、これにより緊急的に国のお偉いがたが会議をするらしい、ちなみにお前もバッチリ動画に写ってるからマスコミが殺到するだろうよ、それでどうするんだ?アリーチェさんは逃げるんだろ?アリーチェさんについて行くのか?」

「いや分からない、アリーチェさんには来るなと言われた、でも僕は着いて行きたいとも思ってるし着いていくのが怖いとも思ってる」

「馬鹿かよお前」

呆れ気味に誠が言う

「最愛の人を1人にするのか?捕まると最悪死ぬ状況なんだぞ?、そんな状況の彼女に手助けをしたいより、自分の命の方が大切なのかよ、キッパリ言っておくぞ、彼女すらも守れない、いや彼女を守ろうとしない様なやつと仲良くしようとは思わない、お前があと0.1秒でアリーチェさんについて行くという決断をしない限り俺はお前と縁を切る」

「ありがとう、俺はアリーチェさんと一緒に行くよ」

「頑張ってこい、応援してるよ」

「そういえばなんで俺とアリーチェさんが付き合ってるって分かったんだ?」

「お前がアイス買いに行ってる時に言われたんだ、アリーチェさんと優輝が付き合ってる事と、アリーチェさんには言えない秘密がありそれが原因でアリーチェさんが優輝と離れるかもしれない、その時は、優輝を支えてやってくれって」

「俺が頑張って考えた嘘は意味なかったと、まあいいや、じゃあな」

覚悟は決まったつもりだ。

「じゃあな、絶対に帰ってこいよ」

電話が切れた。

用意、は特に無いか、一応財布を持ってくか、自転車に乗ってアリーチェさんの住んでる家に行く。


「着いた」

本当に来ても良かったのだろうか、アリーチェさんに受け入れて貰えるだろうか、まあいい、いざとなったら駄々こねてやる。

ドアを叩く。

出てくるわけないか。

勝手にドアを開けてアリーチェさんの部屋に行く。

部屋に入ろうとしたら、泣いてるアリーチェさんの姿があった。

すぐにドアを閉める。

気づかれただろうか?

こんな事をしていても意味無いか。

ドアを開けて部屋に入る。

アリーチェさんが僕の事を見た途端、顔を逸らした。

泣き顔を見せたくないのか僕に顔を見せないようにしているらしい。

「なんで来たの?」

「好きな人の手助けをしたかったから」

「もしかしたら、いやほぼ確実に死ぬ、茨の道だ、私の事を忘れていつものような生活に戻ろうとはしないのか?」

「アリーチェさんの居ない日常は嫌だ」

「死んだら元も子も無いぞ?覚悟は出来てるのか?」

「うん、誠のおかげで出来た、つもりだ」

「本当に良いのか?」

「うん」

「お前の覚悟はわかった、でも私はお前を死なせたくないんだよ、だから帰ってくれ」

「嫌だ」

「お願いだよ、帰ってくれ」

「嫌だ」

気づいたらアリーチェさんの声が震えていた。

「お願いだよ、帰ってよ」

「嫌だ」

「帰って」

アリーチェさんに安心して欲しいがどうすれば良いんだ?、今までの記憶を遡る、今に似た状況が1度あったな、その時と同じように。

「嫌だ、絶対に離したくない」

「なんでそこまでしてくれるの?」

「好きだから」

「なんで好きなの?」

「好きに理由は要らないと思う」

「本当に好きなのか?」

「うん」

沈黙が続き、アリーチェさんが発言する。

「お前の覚悟は伝わった、ただ約束してくれ、私が逃げろと言ったら私を置いて逃げろ」

「嫌だ、そんな事したらここに来た意味がない」

「優輝が隣に居るだけで、気持ちが楽になる、だから逃げろと言ったら逃げてくれ」

「嫌だ」

「わかった、好きにしろ」

何言っても折れないとわかってくれた。

途端に電話がかかってくる。

「おい優輝、お偉いがたの話し合いの結果、アリーチェさんを危険分子とみなし、今から自衛隊を出して、捕まえる、捕まえるのが困難なら殺すってよ、多分目撃情報のあるここら辺を探すと思うからいつでも逃げれるようにしてくれ、一応GPSとかは切れ、あと約束してくれ、必ず二人で帰ってきてくれ」

「わかった、アリーチェさんと一緒に必ず帰る」

「じゃあな、元気でな」

電話が切れる。

「どうするんだ?」

「多分変に動くよりじっとした方が今は良いと思う」

「わかった、一応窓から外が見れる部屋に行こう」

一番外が見やすいところへ行って、外を眺める、町中に自衛隊の人をが居て、アリーチェさんを探している様子だった」

「多分ここに来るのも時間の問題だと思う」

「逃走経路とかを考えてるから優輝は外を見ていてくれ」

「おい優輝どうしたんだ?ぼーっとして」

「ごめん聞いてなかった」

「もう一度言うが逃走経路とかを考えてるから優輝は外を見ていてくれ」

「わかった」

数分後

「自衛隊が来た、どうする?」

「1回交渉してみたい」

「本気で言ってるの?」

「うん、まだ私は人を殺したりはしてないから交渉の余地はあると思った」

「わかった、俺は拉致ったとか勘違いされないように庭の方で待ってるね」

「わかった」

部屋からでて玄関に向かう。

ドアを開ける。

自衛隊が数人いるが全員驚いたように、私を見る。

「私はお前らが危険分子とみなして捕まえようとしてる化け物だ、だが私も捕まる訳にはいかない、だから交渉しに来た」

「化け物の言葉なんて信じられるかよ」

「じゃあ、私が今まで人を殺したか?、お前らに危害を加えたか?」

「この世に事件扱いされてない殺人事件がある、死体が発見されてすらない物とかだが、化け物なら人を丸ごと食べるかもしれない、だからお前が安全なんて保証はどこにも無いんだよ」

「だから殺すのか?」

「いや捕らえるだけだ」

「生憎人間で私を捕まえられるのは1人だけだ」

「何言ってんだ?」

「要するにお前らに捕まるつもりは無い」

もうわかった、こいつらは私の話を聞く気は無いらしい、それっぽい回答は出たが、私を危険分子という事前提で話してる。

逃げるしかない。



数分経ったがアリーチェさんは大丈夫だろうか?、、、

銃声が木霊する。

アリーチェさんは大丈夫だろうか?

まて骨折でも数分かかるなら銃で打たれた場合どうなる?

骨折とは違って臓器とかも傷つく、やばい、すぐにアリーチェさんを助けに行かないと。

そう思った時にはもう、玄関の方へ向かっていた。

玄関に着いたら、銃を持った迷彩柄の服を着た人と、血だらけになりながら倒れている、アリーチェさんがいた。

もしかしたら生きてるかもしれない。

胸に耳を押し当て心臓音が聞こえるか調べる、聞こえて欲しい音が聞こえなかった。

もしかしたら心臓マッサージと人工呼吸をしたら生き返るかもしれない。

アリーチェさんの左胸に手を押し当て、心臓マッサージを開始する。

ちょっとしたら

アリーチェさんの首を上にちょっと動かし気道を確保し鼻をつまんで口に息を吹き込む。

それを何回も繰り返す。

「おい、ガキ、やめろ、もう死んでるんだよそいつは、もう既に絶命してるんだよ」

自衛隊の1人が大声で言う。

俺を見てられないのか、目を逸らしながら言ってきた。

「なんで、なんで殺したんだよ」

「化け物だったんだ殺されて当たり前だったんだ」

「1人でも人を殺したか?」

「知らない」

「1回でも吸血鬼の力を使ってお前らに危害を加えたか?」

「いや、抵抗と言っても逃げるばかりだった」

「ならなんで殺したんだよ、アリーチェさんはお前らをいつだって殺せた、でもしなかった、それだけでも安全だってわかっただろ」

「暴走車を素手で止める力を持ったやつを野放しにする訳には行かない」

「アリーチェさんは何をしたって言うんだよ、なんで何もして無いのに、なんならアリーチェさんは吸血鬼の力で僕を守ってくれた」

「それでもだ、周囲の住民が安心するためにはこうするしかなかった」

「アリーチェさんは普通の幸せを望んだだけなのに、なんでこんな事に」

「化け物だったからだ」

「なんでそんな事を言えるんだ!、アリーチェさんは体は確かに化け物かもしれない、でも人の心は持ち合わせてた、そしてお前らよりも人間と一緒に過ごせると信じてた、だからこそお前らの前に現れた、敵意はなかった、それぐらいのこと大人なら分かるでしょ!」

「とりあえず落ち着け」

「少年を保護した、恐らく行方不明だった子で、ストックホルム症候群によく似た状態だ、相手は未知の化け物、洗脳とかされてるかもしれない」

トランシーバーに向かって言ってる様子だった。

ストックホルム症候群、確か犯人と人質が生存戦略として犯人に協力するとか言ったものか、そして洗脳か。

「お前らにアリーチェさんの何が分かるんだ、話すらもしっかり聞かなかっただろどうせ」

アリーチェさんを持って逃げる。

相手は大人、もちろん足の速さで勝てるわけもなく捕まる。

「少年は逃走しようとこころみるなどかなりの錯乱状態の模様」

「やあ僕、怖かったね」

こいつら正気か、アリーチェさんを助けようとしたとか考えればそんな言葉は出てこないだろ。

その後俺は保護され、洗脳されている可能性があるとされ数日間保護施設で様子見される事になった。

なんでこんなことに、あそこでアリーチェさんを止めていれば良かったのか?それとも一緒に行けば良かったのか?、分からないあの時どうすればアリーチェさんを救えたのか。

あの日から3日間ずっと考えたけれども分からない。

もしあの時に戻れたら、戻りたい、あのアリーチェさんが生きてる時に戻りたい。

強く願った。

叶うわけも無いと思いながらも、神頼みする。



「おい優輝どうしたんだ?ぼーっとして」

3日間ずっと聞きたかった声が聞こえる

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