【主従オフコラボ】悪魔と執事 #あくまでもしつじのはず
「では、失礼します……ね!」
ユーリが地面が大きく陥没するくらい踏み込んで右の拳を振り上げて殴りかかってくる。
俺らの手合わせはまず、肉弾戦から始まる。
俺も身体強化の魔法を施し、ユーリの右手を受け流す。
:はっやwww
:見えねぇ
:これは伝説(笑)か?
コメントを見る限りどうやら、俺らの戦闘の速さにカメラの性能が追いついていないらしい。
俺は受け流した動きのままユーリを投げ飛ばし、その隙に俺とユーリのカメラの性能を魔法で引き上げておく。
「余裕ですねヴァイサー様。でも、ありがとうございます」
「まぁ、まだユーリも本気でないから出来る事よな。
それに、配信である以上映りは気にしないとな」
:なんでこいつら映り気にしてんだよ……
:てかなんでコメント見てんだよw
:ありがたいけどもw
そして、また一呼吸置き、肉薄する。
右斜め下からの拳は受け流されるが、それを見越してあえて重心を前に傾け懐に潜り込み、左足を軸足とし回し蹴りを放つ、がそれも読まれているというか、いつものなので簡単に受け流される。
今度は私の番と言わんばかりに回し蹴りを放った右足を掴んでくるが、逆にそこを支点とし身体を捻り、拘束を抜ける。
まぁ、これもいつも通りだ。
あまりにいつも通り過ぎてユーリの多少口調が戻っていたりするが……それは今は良いだろう。
「ほんとその攻め方好きですね」
「まぁ、映えるからな。
って、ユーリもいつもの返しじゃねぇか」
「まぁ、準備運動みたいなものですからね、これは」
:なーんで戦いにおいて映えを気にしてるんですかねぇ
:色々人外
:実際人外だからなw
:ニュウネンナジュンビウンドウダナー
:悪魔怖い
「お前らこんなモノでビビってたら今からが持たねぇぞ!」
少し遠くなってしまったカメラに向かってニヤリと笑ってやる。
ファンサービスってやつだな。
「そうですよ?今からが本番ですからね?」
ユーリもカメラに向かって微笑んでいる。
:本番ってことはあれか?!
:ド派手な魔法対決来るか!!
:急ないたずらっ子みたいな笑顔ずるい
:まさに悪魔的笑み
「〈ファイアボール〉ッ!!」
有名も有名どころ、ド定番の魔法ファイアボール。
人間界で流行っているライトノベルでもよく見る魔法だな。
「なるほど……次はリスナー側のテンプレという訳ですね……ならば私は〈ウォーターカッター〉!」
火には水を、という事だな。
俺らが放った2つの魔法はちょうど真ん中でぶつかり、小さな爆発を起こす。
:うぉぉぉぉぉ!
:ファイアボール来たァ
:ベタな魔法だけど1番テンションアガる
:ウォーターカッター……だと?!
:この水ってどこから来てるんだろう…はっ!
:↑通報しました
「お前らやっぱ反応良いな。
んじゃ、次もこれだな!〈ファイアボール〉」
またもや発動させた〈ファイアボール〉だが、今度はすぐに射出せずに、留めておく。
よく見とけよ、とカメラの向こうのリスナーに視線を送り、手元の炎にある細工をした。
ボッ!と音を上げ燃えるのは、青白い炎。
:あおいほのおだ!!!
:この悪魔テンプレが分かりすぎてるw
:あれ、僕なんかやっちゃいましたか?
「やっぱり知ってるよな。魔素を原料に発生させた炎に空気中の酸素を送り込み、温度を上げる手法。
実際この方法を用い始めたのは人間界のラノベが大好きなどっかの魔法バカだったはずだ。
ある日突然俺の部屋に押しかけて来て、
「見ろ!この青白い炎を!今までのとは火力が違ぇ!やっぱり人間の
なんて言ってきたんだっけか……。
そんな少し昔のことを思い出しつつ、俺はその炎の形状を変える。
そうだな、今回は投擲の槍にしようか。
:槍……?
:投げるのかwww
:物理?魔法??
槍の後端を持ち、右後方に構えをとる。
腕に身体強化をかけ、踏み込みは強く、槍投げというより、ピッチャーの要領で投げる。
射出する直前に指先に強化を集中させ、押し出すことも忘れずに、だ。
こうして射出された炎は魔法で性能を引き上げたカメラですら完璧に姿を捉えること無く、ユーリへと向かう。
だが、俺が魔法を放つまでに猶予があったためか、ユーリも迎え撃つ準備は出来ており、その手にはナニカが握られていた。
◇◆◇◆
(ユーリ視点)
やはり、最初は肉弾戦ですよね。
あぁ、やはりヴァイサー様の身体強化の精度は美しい……。
隅々まで強化が行き届いていて、さらに打撃の瞬間だけ打撃部位に強化が集中する……。
なんて淀みの無い魔力運用なんでしょうか。
しかし、ここで美しさに見とれて私の精度が落ちればヴァイサー様をがっかりさせてしまいます。
攻撃を受け流し、反撃し、さらにやってくる反撃にすら対応する。
「ほんとその攻め方好きですね」
「まぁ、映えるからな。
って、ユーリもいつもの返しじゃねぇか」
「まぁ、準備運動みたいなものですからね、これは」
そう、これも予定調和。
本格的な魔法戦までの準備運動みたいなもの。
ですが、ヴァイサー様と肉体がぶつかり合うこの瞬間を準備運動で済ませてしまうのも名残惜しい。
私がこんなことを考えている内に、ヴァイサー様は魔法の準備を始めてしまいます。
「お前らこんなモノでビビってたら今からが持たねぇぞ!」
「そうですよ?今からが本番ですからね?」
これが配信であったことを思いだし、リスナーのために少々ファンサをしておく。
:ユーリちゃんの微笑みまじで浄化される
:あくまでもてんし
:いよいよ魔法来るか?
:ユーリちゃんの魔法早く見たい!
:悪魔が魔法使ってるとこ見たこと無いから気になる
私の配信のコメント欄も煽りを受けて盛り上がってますね。
私の主の魔法はすごいですよ、と小声でささやいておくことも忘れない。
:何かの扉が開いた気がする
:俺も
:私も
何かに目覚めてしまった人も居るみたいですね?
ヴァイサー様の魅力に、でしょうか?
素晴らしいことです。
そうこうしてるうちに魔法が飛んできます。
「〈ファイアボール〉ッ!!」
最初は人間界でも広く知られている〈ファイアボール〉で来ましたか。
「なるほど……次はリスナー側のテンプレという訳ですね……ならば私は〈ウォーターカッター〉!」
火には水を、で打ち消す魂胆です。
私の魔法の方が弾速が速いので、少し溜めて打ちます。
そうすることで目論見通り、私たちのちょうど真ん中でぶつけることに成功します。
これもヴァイサー様の魔法を知っているからこそ出来る芸当です。
ふふん。
:なんかドヤってるのもかわいい
:かわいい
「じゃあ次は……と魔法を準備しているヴァイサー様もかわいいですよね。
よく分かってますね」
:違うそうじゃないw
:なんで悪魔が関わるとポンになるんやw
:こういうとこも良い……ッ!
コメント欄の皆さんとじゃれていると、ヴァイサー様の手元の炎の色が変わりましたね。
「それ戦争で用いられる主要火力じゃないですか……」
:マジかwww
:悪魔本気じゃねーかw
:ユーリちゃん大丈夫か?
:悪魔やめろぉぉぉ
リスナーの人たちが心配してくれてますが、私はマジの条件を出したのでこれ自体は嬉しいことなのですが……
「問題は私、この魔法を裁ききれたことが無いんですよねぇ……」
いつも2枚は結界持って行かれるんですよね、これ。
だけど、対策を考えていないわけでもありません。
:防げたこと無いってまじか
:やばいじゃん
:ん?なんか出したぞ……でも見えん
:なんか揺らいでる?
「これは
私の得意な風の魔法と、苦手な空間魔法との合わせ技ですね」
空間魔法を使って、魔法のエネルギーを散らし、風魔法で空気を遮断し火力を落とす。
前回食らってから研究し、開発した複合魔法だ。
まぁ、本来の使い道とは少しずれている気がしなくも無いですが。
:なるほど……わからん
:なんかかっこいいことはわかったぜ
:空間でエネルギー飛ばして、風で火力を落とすって感じか?
「……!!よくわかりましたね。
あなた魔法構築の才能があるかもしれませんね」
まさか術理を見破られるとは……。
やはり幼い頃から文化として魔法に触れてきた人間は違いますね。
いつか魔法開発のアイデアをもらう配信なんかも良いかもしれませんね。
「来ます!みんなは画面の揺れに注意して!」
ヴァイサー様が全身を使って槍と化した炎を放ちます。
避けてる暇はありません。
私はそれを
「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
やっぱり重い……!
けれど、冷静に魔法を行使します。
空間魔法の運用はほんっとに難しいですね。
炎のエネルギーを散らすともに、私の魔力もごっそり持って行かれます。
これを当たり前のように行使するうちの主はどうなっているんでしょうか?
怖いですね。
まぁ、まだ風の魔法はもはや呼吸するレベルで行使できるのでまだ助かってますね。
:うぉぉぉぉ頑張れぇぇ!!
:なんつー絵だよ、映画か?
:これがMMLの技術力か……
少し勢いが弱まったと同時に体勢を低く取り、そのまま刃を滑らせ槍を後方に受け流します。
「よしっ、上手くいった……」
:ユーリちゃんかっけぇぇぇ
:これは惚れる
:前まで出来なかったことをここでやってのけるのかっこよすぎだろ
コメント欄も大盛り上がりですね。
私の結界も7割消し飛びましたが、今まで2枚は割れていたことを考えると大成功です。
が、ここで喜ぶことを、この隙を見逃すほど主は甘くはありませんでした。
立ちこめる砂煙を突っ切って飛んでくるのは、なんとも美しい青みがかった透明な氷の刃。
「クソッタレ……」
私の悪態と共に、1枚目の結界と氷の刃が割れる音がしました。
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