【主従オフコラボ】悪魔と執事 #あくまでもひつじ

 熱狂のフィナとのコラボから1か月。

 俺もなかなかに登録者も増え、10万人が目の前になってきた。


 このタイミングで計画されたのが────


「ヴァイサー様とのコラボだっ!!」


「いや、おま、テンションたけぇな?!」


 そう、我が執事、ユーリとのオフコラボである。


 ◇◆◇◆

【MML】社長白雪氏と我らのマネージャー朱音さんとWebミーティングをしていた時のこと。


「ヴァイサーくん、最近調子はどう?」


 朱音さんとは対照的に落ち着いていて、おっとりとしたお姉さんという言葉がぴったしな白雪さんが聞いて来る。


「先輩方とも仲良くやれているし、まぁ、アンチともやれてるんで、まぁまぁといったところですかね」


 先輩たちは、フィナ以降にも全員一回ずつはコラボした。

 アンチコメは今も配信をするたびにワラワラ湧いてくるが、それをあえて拾うことによって一種のパフォーマンスとなり、配信に華を添える存在になっている。


「アンチコメ、誹謗中傷に関しては申し訳ないと思っているわ。

 うちで初めての男性ライバーだから色々と負担をかけちゃうところもあると思うけど、よろしくね」

 辛いことがあったらいつでも頼ってね、と言ってくれた。

 本当に白雪さんはあったかい人だ。

 だからみんな慕ってこの人についていくのだろう。


「ありがとうございます。

 ですけど、俺は悪魔なんで並大抵の精神攻撃は効かないんですよ」


 そう言ってニッと笑って見せる。

 直接魂を抉られるわけでもないのだから、どうってことないのだ。


 話が一区切りついたと見ると、白雪さんは何か他に困っていることはないか、と聞いてきた。


「あー……あるのはあるんですけど」

 俺が言葉を濁しつつ言おうとしていると、内容を察した朱音さんも苦笑いを浮かべる。


「なになに?二人してそんな微妙そうな顔して」

 そんな様子が気になったのか白雪さんは我に続きを促す。


「ユーリがコラボコラボってうるさいんですよ。

 毎日毎日『ヴァイサー様、私とのコラボはいつですか?』って聞いて来るんですよ」


「ユーリさんのマネージャーもしている私のところにもヴァイサーさんとコラボ配信をしたいという旨のメールがずっと来てて……」

 どうやら朱音さんの元にも来ていたようだ。

 ほんと、申し訳ない。


「そうね……。ユーリちゃんの初配信でヴァイサーくんの従者であることが知られてからユーリちゃんファンの中の過激層の人たちから結構な攻撃を受けてたから、一旦二人のコラボは当面ナシにしたのよね」


 あの時は酷かったなと、三人で遠い目をする。

 毎日呪うだ、殺すだヤバイDMやらリプやらが来てたからな。

 まぁ、その大半はユーリの魔法や部下によって体調を崩したりしたんだが、それはまた別の話だ。


「俺的にも最近落ち着いてきたってのもあって、やっても良いかなぁと思うんですけど、ここはやはり白雪さんの意見を聞いておきたいなと思いまして」


 社長指示でやってなかったわけだし、ここは白雪さんに聞くのが筋だろう。


「二人のコラボに関してはもちろんオッケーよ。

 二人の仲もユーリちゃんの配信でリスナーさんたちにも伝わっていると思うから」


 うげ、ユーリの配信なぁ。

 あれなぁ。

 見たくないけど、見ないと拗ねるから仕方なく見てるあれなぁ……。


「ヴァイサーくんもそんな顔しないの!

 まぁ、端から見てる分には面白いけど、本人からしたらどういう顔で見たら良いか分からないものねぇ……」


 白雪さんもやや同情的な視線を向けてくる。

 そして我らがマネージャーと言うと……。


「あーあれはひどいですもんねぇ!あははっ」


 ひー、面白いぃひひひ!とえらい腹抱えて笑ってはりますわ。

 ほんま酷いモンやでぇ。

 こちとら苦労してるっちゅうに。


 って、似非西ケンセー弁が出てしまったではないか。

 あぶないあぶない。


「もう朱音ったら……本人の前でそんなに笑っちゃ失礼でしょ~?」


「そう言いながら貴女も笑ってますよね?!白雪さん!!」


 ほんと仲の良い二人だ。

 聞くところによると、この会社の創設メンバーは白雪さんと朱音さんらしい。

 なのに、なんで朱音さんは幹部職じゃないのか聞いてみたら、「私、幹部とか向いてないし、みんなと同じ目線で動きたいんですよねぇ」とのこと。

 まぁ、ぼそっと権限だけはありますけどねって言っていたからこの人には迷惑をかけないようにしようと思ったよな……。



 おっと、話がそれてしまったな。

 とまぁ、そんなこんなでユーリとのコラボが実現したのだった。


 ◇◆◇◆


「いつもとテンション違いすぎるだろ……」


 普段はさ、もっと淡々としてるじゃん?


「そりゃあ敬愛する主人とのコラボですし?

 普段の感じは配信向きじゃないじゃないですか~」


 今やっとの部分を強調された気もするが気のせいだろう。

 うん。悪いとは思ってるんだ。

 社長命令だししかたなく。


 :確かに今日ユーリちゃんテンション高いなw

 :いや、悪魔のこと言ってるときはこんなんだろ

 :あの配信悪魔も見てんだろ?www

 :羞恥地獄で草


「まぁ、確かにそうだけど、こうオフっていういつもと変わらない環境でこの感じだと変な感じだなってそれだけだ」


 なんというか慣れない。慣れるしかないけれども。


 :ちょっと普段の感じ気になる

 :確かに気になるな


「じゃあ、少しいつもの感じでやりましょうかヴァイサー様」


「急だな……まあいいだろう」


 そうして我らのを見せる謎配信が始まったのだ。


「と言っても私たちには何も特筆すべきことはないと思いますが……」


 話し方がいつもより堅いくらいでしょうか?

 とか言ってるが、配信と普段じゃ違いすぎるんだぞお前……。


 :だwれwだwよw

 :話し方とか以前に雰囲気が別人で草

 :ちゃんと真面目執事やったんかw


 ほら、コメント欄も大混乱じゃねぇか。


「まぁな、普段からあのテンションじゃ困るって」


 :悪魔お前も見てるんかw

 :前見てくれないって拗ねてたしなw


「そうなんだよ、が配信見ていないとユーリは拗ねるんだよ……」


「ヴァイサー様、今はを見せる配信ですよ?ほら、一人称」

 こいつ……くっそにやけてやがる。

 いつものからかいモードだな、おい。


 :ん?一人称?

 :ユーリちゃんにやにやで草

 :主のことあんな尊敬しておきながらくっそいじってて草

 :でも、いいなこの関係w


「今更我とか言うの慣れんのだが?」


 少しばかり恥ずかしいしな。

 学校では「お母さん」と言ってるのに家では「ママ」と言ってるのがばれたときのような感じだ。

 まぁ、我にそんな経験はないが。


「そう、それでいんですよ。

 ザ・支配者って感じですし」


 まぁ、ユーリもご満悦だし、良いのか?


 :我キター!!

 :俺様系でもありながら、我系で支配者ムーブもかませるのかこの悪魔w

 :我の命は絶対であるぞって言われて屈服したい

 :変態ネキは回れ右して、どうぞ


「うんうん、皆様方よく分かっていらっしゃいますね。良いことです」


 何が良いのか我にはさっぱりわからん……。

 これが、これが良いのか?

 謎である。


 :だかしかし、お仕事モードのユーリちゃんもいいんじゃ

 :真面目モード助かる


「それは我も同意するな。配信で見せる素も我は好きだが、仕事中の様子も好きだな」


 これはユーリの魅力の一つだと我は思う。

 オンとオフの切り替え。

 だからこそ公私のギャップが目立って、配信に現れ、人を惹きつける魅力となるのだろうからな。


 :おっ

 :これは?

 :ユーリちゃん見てみろwww


 コメントに促されて隣のユーリを見ると……。


「ちょっと、今見ないでください。ほんとに」


 顔を隠し、隠せてない真っ赤な耳だけだしたユーリがいた。

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