【初配信】どうも、反射神経の鬼です
俺の初配信の次の日、ユーリの初配信が行われようとしていた。
それにしても、なんだ?このタイトルは……。
:待機
:待機
:待機
:タイトル謎いなw
配信が始まる前にみんなが自由にコメント出来る場所、所謂『待機所』にはユーリの初配信を楽しみにしている人々が数千人もいる。
そして、その時はやって来た。
「あー、あー。皆さん聞こえますかね?」
:聞こえるよー
:聞こえる!
:声透き通りまくりで好き
:確定演出きちゃーw
:これは推せる
「聞こえるみたいですね。
こほん。皆さんこんばんは。【MML】二期生のユーリ・ウルスです。
今宵はよろしくお願いしますね」
:こほん可愛い
:可愛い
:落ち着いててすこ
「ふふっ、ありがとうございます」
:悪魔なのに天使みたいな笑顔だ……
:召される
:これは推せるッ!!
出だしは順調みたいだな。
やっぱりユーリはこの自然な状態が1番だと思うのだがなぁ……。
どうも我の前となると小さき頃より教育された口調や仕草が出るようで、どうも堅苦しいのよな。
まぁ、口調が堅いだけで、友人のように接してくれるのだがな。
この雰囲気が彼女が人を惹きつける理由なのだろうな。
「では、早速基本的な自己紹介と、テンプレ決めからやっちゃいましょーか!」
:おーー!
:おーー!
ユーリはテキパキと自己紹介と、我が決めたようなことを決めていく。
─────────
【本日の決定事項】
・ファンネーム:羊飼い
・ファンマーク:❄️💤
・配信タグ:ゆーりらいぶ
・FAタグ:有理的絵画
・呼び出しタグ:来てくれ羊
「大体こんな感じかな……」
:執事からの羊は最早テンプレ
:FAの圧がすごいw
:なんか神絵師ばっか集まりそやなw
「うーん、後は何かあるかなぁ」
:そういや、配信のタイトルはなんでこれなん?
:確かに
:気になる気になる
まぁ、我は大方検討はついているが……。
「あ、タイトルの事ですか?それはですね〜」
ユーリは昨日の我の配信でモデレーターとしてアンチコメントを徹底的に潰していたこと。
そして、自身はFPSなどの反射神経がある程度問われるゲームが得意である事を明かし、コメントを大いに湧かせた。
:なるほどw
:昨日の悪魔の配信のモデはユーリちゃんやったんやな
:おや?てことは……
:モデには配下を付けてるって……
:あ、仕えてる人ってのは
「バレちゃいましたか〜。
実は私、ヴァイサー様の執事なんですよね」
:俺様系主人×ゆったり執事!!捗る!!
:ktkr
:雰囲気からしてめっちゃ尊敬してるよね
「はい!そうなんですよ〜
ヴァイサー様は昔から尊敬する主人ですからね」
:見るからににっこにこやん
:めっちゃ良い主人なんやろなぁ
:コーン君初手からボコボコやん
:コーン君どんまい
「だからヴァイサー様に悪いことする奴は許しませんから、ね?」
:承知
:了解
:これは逆らったらあかんやつや……
我をここまで敬ってくれているのは嬉しい話なのだが、配信でこの話をしてもいいものなのか……。
我が心配に思っていると、やはり奴らが現れた。
:勘違いしてんじゃねぇよ、ブス。
:はー主人に色目使ってんじゃねぇよ
:ヴァイサー様は私のだから
アンチコメントがコメント欄にちらほらと散見されるようになってきた。
:衝撃の事実にアンチくんもお怒りの様子
:諦めなよアンチくん
我も事前にモデ権限をユーリより貰っているから、アンチコメを片っ端から削除していく。
:ほら、今もすぐ削除されてるってことは悪魔も見てんだろ?この配信
:確かに。悪魔が渡しててユーリちゃんが渡してないわけないんだよな
:お互いに信頼厚そうやしアンチ君が割り込む隙無いってwww
どうやらリスナーの大半は好意的に見てくれているらしい。
だが、それでも止まらないのがアンチなのだ。
そして、アンチは遂に踏み込んではいけない領域へと達してしまう。
:あんな奴のどこが良いんだよwww
我はこのコメントを光速にも届こうかという速度で削除した。
が、流石は反射神経の鬼。
コメント、ユーザー名、アイコンに至るまで全てその一瞬で記憶していた。
直後。
「ダァンッ!!!!」
配信の音声にありえんほどの轟音が乗る。
それがユーリが行った台パンによるものだと理解するのには数秒を要した。
そして、リスナーは悟った。
『今、アンチはユーリの地雷を踏みぬいたのだ』と。
今、コメント欄は静まり返っている。
だが、その中でもアンチのコメントは止まらない。
:厨二感丸出しの言動してるしさぁw
:屋敷にずっと引きこもってんでしょ?
:そんな男のどこが良いんだかwww
やめておけ……そう思った時だった。
ミシッ……。
:ん?何の音?
:なんか軋んでるのか?
:おいwww画面の下の方見てみwww
:あっ……www
:いや草ァ
先程の台パンに耐えてみせた魔界樹製のテーブルがユーリの手によって端が握りつぶされていた。
まぁ、逆に言うと先程あれほどの轟音を響かせた台パンは本気じゃなかったことにもなるが。
「おい、そろそろ黙れよカス」
ユーリの口からそんな言葉が零れ出た。
そして、あっちゃぁ……と俺は頭を抱えることとなる。
ユーリは俺のこととなるとキレる。
自身の魂の消滅を願う程に相手を徹底的に追いやるのだ。
こうなったユーリは止められない。
画面を挟んでて良かったな、人間よ。
──今、真なる伝説の初配信が幕を開ける。
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