第13話 【八岐大蛇(やまたのおろち)】
現在地の
螺旋階段を降りていくと、【光庭】に通じる扉がある。その扉の向こうには、果たして何が待ち受けているのであろうか……。
「扉を開く前に
「どんな人でしょうか?」
図書館の管理人だろうか?
「その御仁からすれば、
「2600歳が若僧だとすれば、我々は一体何になるというのでしょうか?」
「8000歳を超える御仁から見れば、2600歳は若僧だろう。80歳から見た26歳だと思えばいい。我々は、産湯に入る前の赤子の如し、といったところか。その方は、我々のような【人族】ではないが、神格を有し、人語を解する。では行くぞ。」
案内人の常井氏は緊張しているようだ。
――――――――――――――――――――――――――――――
現在地の
扉を開けて【光庭】に入ると、シューシューシャーシャーという音が聞こえる。【光庭】の中央には、八つの頭を持つ灰黒色の大蛇が存在していた。
【
「誰が来たかと思えば、いつぞやの
「ここへ何しに来た?」
「見慣れない顔を連れているな。」
「人族を贄にするのは
「しかも魔素の臭いが薄い……。」
「この世界にはない臭いがする……。」
「だが、どこか懐かしい臭いだ。」
「皆が一度に喋っては混乱するだろう。それで、我々に何か用か?」
「皆様、お久しぶりです。
常井氏は、影属性の収納術により、己の影から二匹の巨大蜘蛛を取り出し、贄として献上する。この前、【蜘蛛神社】で遭遇し、墓地で
「上物ではないか。」
「よくやった、小僧。」
「美味そうな昼飯だ。」
「これは素晴らしい。」
「
「それは新鮮だな。」
「新鮮なうちに昼飯にするか……。」
「待て。供物を寄越した礼をせねばな。」
その後、郡山青年は、常井氏に促されて名乗る。
「あか」
「だいだい」
「きいろ」
「きみどり」
「みどり」
「みずいろ」
「あお」
「むらさき」
どうやら、それぞれの眼と口腔内の色に基づいているようだ。
「あか」は好戦的、「だいだい」は穏健派、「きいろ」は気まぐれ、「きみどり」は平和主義、「みどり」は、執念深い、「みずいろ」は冷静、「あお」は知性的、「むらさき」は狡猾、といった感じである。
この
「強敵と戦うときに、我々の力が必要ならば喚べ。」
「それは君が戦いたいだけだろうが。」
「でも、変わった相手と戦うのも結構面白いよ。」
「簡単に死なないように、身体強化も付与しておくよ。」
「瘴気などへの各種耐性も忘れずに付与しておいてやる。」
「よく考えると、戦闘面以外の加護も必要じゃないか?」
「ならば、【蛇語上級】を付与しておこう。」
「念の為、この程度にしておく。いきなり強くなり過ぎても困るだろ。」
まずは、召喚獣扱いで呼べるようになるらしい。身体強化による能力向上、瘴気などへの各種耐性。そして、【蛇語上級】。蛇語を理解し、聴いたり喋ったり出来るらしい。
加護の付与に対し、礼を述べ退出すると、中からは咀嚼音が聞こえてきた……。退出し終えてから食事を開始する辺りの配慮からは、高い知性を感じさせる。
――――――――――――――――――――――――――――――
常井氏が解説を始める。
「東洋の【
違うのは頭の数ぐらいか。
「頭の数が違うって?再生の際、稀に頭の数が増えてしまうことがあるらしいから、多分その
その辺りは、厳密には決まっていないらしい。常井氏の解説は続く。
「洋の東西をこの世界では、二通りの漢字で区別しているが、東洋の『
「でも実際、両手両足に翼ということは、四肢ではなく、六本足扱いの爬虫類ということになり、地球の生物学上有り得ないし、『火を吐く』というのも、体内に火袋があるという設定では、どうして自分自身が火傷したり、酸欠にならないのかを科学的に説明するのは無理がありそうですね。」
「『六本足扱い』に関しては原理は未解明だが、この世界には実際そういう存在がいるしな。恐らく、魔素の関係で複数種類の生物が融合した、と言われている。『火を吐く』というのは、実際は、引火性の体液を吐き、それが大気中の酸素と化合することにより発火、というのが原理だろう。」
「では、この世界にも
「いや、厳密な意味での西洋的な
魔力色ということは、魔素により生成された火であって、酸素と化合した火ではない。魔力色は、魔素版の炎色反応だ。
そのことを鑑みると、
「そして、
「【マンティコアノイド】?」
「確か、現在の
この世界には、未だ見たことのない怪物がいるようだ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます