第壱章 都市探索編
第11話 荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)第参皇児(だいさんおうじ)
異世界二日目。郡山青年は、
時刻は、午前9時30分頃。【神代古書店街】の宿屋を出たのが、午前9時前後。
道に迷う可能性を鑑み、少し早めに宿屋を出発したが、表の世界と道は殆ど変わらなかったので、道に迷うことはなかった。
【二本橋】は、運河に二本の橋が架かっている場所だが、これもおそらく、表世界の『日本橋』と対になっているのであろう。
しかし、待ち合わせ場所には、既に先客がいた。黒髪長髪、痩身にして長身、年齢は
彼は、橋の欄干にもたれ掛かって本を読んでいるのだが、それはどう見ても昨日納品した「量子力學・壱」の古書に他ならない。
ただ、
「欄干、カラカラ、カンカン?」
「ランタン、タラタラ、タンタン。ということは君が?」
「郡山俊英。本日は宜しく御願い致します。」
「私は、
「
「昨日は、行政府を訪れたのだろう?兄者達とは会わなかったのか?」
「昨日屋敷で会ったのは、
「それだ。
「でも、一応は世襲制であると?」
「基本的には、三頭政治だから、私の出番は殆どない。一応政治士の資格は有しているが、研究している方が性に合っているしな。」
三頭政治というのは、古代ローマみたいだな。
「政治士?」
「この国では、行政に携わる者は資格が必要なのだ。取得には、難関の資格試験を突破する必要がある。皇族とて例外ではない。世襲制で腐敗した王朝など、枚挙に暇がない。芸人や運動選手が人気だけで行政に携わることも、この国では有り得ない。」
科挙みたいな実力主義というわけか。
「ところで、親父に貰ったこの『量子力學・壱』だが、これは君が
「今は手元にありません。元の世界に戻れれば……。」
「その時は是非持ってきてくれ。」
それだけ言うと、読書に戻ってしまった。専門書なのに、まるで、漫画を読んでいるかのよう。あれ?これから出発するんじゃないのか?というと、この案内人は、
「昨日からここでこうして読んでいるのだが、今いいところなのだ。
待ち合わせの時間は10時だろう?あと30分もあるぞ。早く来過ぎじゃないか?」
遅刻ではなく、早く来過ぎて怒られるとは理不尽な。というか、昨日から橋の欄干にもたれ掛かって本を読んでいるのか?この案内人は、とんでもない本の虫だ、と呆れていると、
「しかし、まぁ……客人を待たせるのも失礼か。
それでは早速、【罅谷】に行くとしようか。」
【罅谷】。おそらく、その場所は、表世界の『日比谷』と対になっているのであろうか。そこには、何が待ち受けているのであろうか……。
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