読み始めてすぐ、描写力の高さに震撼しました。そして程なく、この優しく、儚く、美しい世界の虜になってしまいまいました。まるで詩を読んでいるような感覚にすらなります。
物語は二部構成となっています。第一部は「彼」の視点、第二部は「彼女」の視点から語られます。
第一部では、圧倒的に美しい雨の風景世界に浸ることができます。その中で、あるひとつの謎が生まれます。「彼女は何者なのだろう……」という謎です。
彼女の視点から語られる第二部の途中から、謎が明らかになっていきます。ネタバレになってしまうので書けませんが、雲が晴れるような、パッと光が差すようなメタファーが使用されていて、大きな感動を味わうことができました。
特筆すべき点は、繊細な情景描写と心情描写です。丁寧でありながら決して冗長でない描写から、2人の深い愛を感じることができます。切ない愛を描いた作品は沢山ありますが、ここまで強く心打たれた作品は稀です。
正直、こんなに熱を込めてレビューを書いたことはないのではないかと思います。それくらい素晴らしい作品です。是非、多くの方に読んでほしい小説です。