46.二人きりの作戦会議
「――というわけで、まずはせんぱいの片思いを進展させよう作戦会議を始めたいと思いまーす」
引き続き、俺の部屋にて。
俺とカノンの間柄を微妙な空気にさせておきながら、カレンが呆れるほど呑気な声で宣言する。
「世界一無駄な会議だ……」
「こらそこ、自分のために開かれた会議に文句言っちゃあいけません」
「あのなカレン、別に俺はお前にどうこうしてもらいたいなんて頼んでいないんだが」
「もうっ、そんな天邪鬼なことばっかり言ってるから、カノンちゃんにも愛想尽かされて帰られちゃうんですよ?」
「どう考えてもお前の責任の方が大きいと思うんだが……」
カレンの言う通り、カノンはすでにこの部屋にいない。このバカげた作戦会議に気が乗らなかったらしく、そろそろと自室へ戻っていった。
……どうしてあいつの気が乗らなかったのか分かっている分、俺自身も責任は感じているが、それにしたってカレンに詰られる道理などないはずだ。
「まあ、カノンちゃんにとっては少々酷な会議なのは認めるところです。なにせ自分の思い人がほかの誰かとくっつこうとしているのを応援する話し合いなんて、参加したくなくて当然です」
「そこまで分かっているなら、なんであんな言い方したんだ。カノンが傷つくと分かっていながら……」
「それだけ、あたしはせんぱいに対して本気ってことです。せんぱいの恋路を応援することに」
ミニテーブル越しながらぐいと顔を近づけてくるカレン。
急に距離は詰められたらさすがにドキリとするが、それは別に照れてるとかそういうことじゃない。こいつの顔があまりにカノンに似すぎているか、調子が狂いそうになるだけだ。それだけのことだ、きっと。
「……なにがお前をそこまで突き動かすのか、俺にはまったく分からないんだが」
「それは仕方ないです。せんぱいはあたしとのこと、まったくなにもこれっぽっちも記憶にないみたいですし」
「お前とのこと? ……なんだっけか、恨みを買ってるとかなんとかって話だったか」
「まあ、そうですね」
「確かにまったく記憶にないが、仮に本当に恨みを買っているんだとしたら、やはり応援される道理はないと思うが?」
「あたし、流行りには逆らいたくなるタイプなんです。やられたらむしろ施す……逆倍返しだ! 的な」
やはり意味が分からない上、少々遅れ気味の流行りだった。
「逆倍返しはこの際いいとして……結局、お前がそこまでするほどの恨みってなんなんだ。一体俺は、お前にどこでなにをしでかしたって言うんだ」
「せんぱい……それは今回の会議の議題にないんです。いずれ改めてご自分で開かれてください。あたしは出席しませんが」
「じゃあ意味ないだろうが!」
……結局俺は、ただおちょくられているだけなんじゃないだろうか。
カレンの悪戯っぽい笑みを見ているとそうとしか思えず、俺はミニテーブルに肩肘をついて深い溜め息をついた。
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