39.ダイレクトストーキング
「ねー、せーんーぱーいー。待ってくださいよぉ」
カレンの無駄に間延びした声があとをついてくる。
なにがあっても無視し続ける気でいたが、校門を出てからも追ってきたのは予想外だったため、さすがの俺も足を止めざるをえなかった。
「……お前、いつまでついてくるつもりだ」
「せんぱいが行くところならどこへでもです」
「寝言は寝て言え。お前の家は逆方向だろうが。なんならお前、バス通学だろうが」
「細かいことはお気になさらず。今日はこっちの方角に用事があるだけですのでっ」
しゅびっと、意図不明な敬礼ポーズを見せるカレン。
こういう一挙手一投足でいちいち新鮮なウザさを表現できるのはある意味凄い。就活するようになったら自己PRシートに堂々と書いたらどうだろうか。そしてめでたく不採用になれば言うことはない。
「その用事ってのはなんだ。俺の家を突き止めようってことじゃないだろうな」
「いえいえそんなまさか」
「なら先に行けよ。いつまでもあとをつけられるのは気分がよくない」
「そんな無駄に警戒することないじゃないですかぁ。ていうか、なんかせんぱい、前よりもあたしと距離作ってません?」
「信用ならないんだよお前は。さっきだって、柊先輩にいきなりバラそうと……」
「あー、あれならちゃんと寸止めしようとしましたよ? あたしだって本気でせんぱいの恋心をバラすわけないじゃないですか。それじゃ面白くないですし」
「面白がってる時点でおかしいだろ。大体、バラす気はなかっただって? 勝手にカノンに話してたくせにか?」
「げっ、カノンちゃん言っちゃったんですか……もぉ、ここだけの話だって口止めしといたのに」
やや気まずげに笑うカレン、しかし反省の色などはまるで窺えない。
「まあカノンちゃんならよくないです? ほぼほぼあたしみたいなものですし」
「いいわけあるかっ。たとえカノンでもダメなものはダメだ。人のプライバシーをなんだと思ってやがる」
「えー、でもカノンちゃんとは以心伝心というか、黙っていてもテレパシー的に繋がっちゃうみたいな感じですし」
「カノン曰く、お前と話してる時に俺の話題になって、それで教えてもらったみたいなこと言ってたが? どこにテレパシー要素があるんだ? どう考えてもお前が口を滑らせてるようにしか聞こえなかったんだが?」
「うう……ほんと、カノンちゃんは口が軽いなぁ」
お前が言っちゃいけないランキングナンバーワンの台詞だろ、それ……。
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