迎え火(3)

仁様が行かれて数時間が経ったがまだ帰って来られない。


どたどたどたどたどたどた

廊下が騒がしい。


「華様大変です。仁様の式神が血だらけの女性を抱いてきました」


私は式神の元へ向かった。


華「仁様は?」


柚「まだあちらで戦われておられます。それよりも先にこの方を寝かせれる場所はございませんか?」


華「わかりました。案内お願いできますか?」


「はい。どうぞこちらへ」


仁様の式神と女性は使用人に任せ私は仁様の元へ向かった。



40分後、神宮寺家付近にきた。


ドッカーン

バコン


衝撃音が神宮寺家の方から聞こえてくるが悪霊が複数いる。


華「妖撃」


ドォォン


悪霊たちに直撃するが怯んだ様子がない。


悪霊が触手で攻撃してくる。


ガキン


それを剣で弾く。


ガキンガキンガキンガキン


悪霊を攻撃する隙がない。


グォオオオオオオオ


神宮寺家の方から妖気を感じることができる唸り声が聞こえた。


私は今まで悪霊が唸る所を見たことがない。


まさか仁様が相手してるのがこの唸り声の主と戦っているのなら急がなければ。


華「気功・龍」


龍のように速さに特化した気功で早く倒したいときに有効な手段だが、気の消耗が激しい。


光の速さで悪霊たちを切り刻んだ。


私は屋敷に急ぐ。


屋敷へ入ると血生臭い臭いが漂っている。


敷地には死体が無数に転がっており、桜田さんの死体もある。


私はあまりにも衝撃的な光景に立ち尽くした。


桜田さんとの鍛錬の様子がフラッシュバックする。


華「桜田さん、、、」

声にならないほど擦り切れた声が漏れ、自然と涙が溢れてきた。


グォオオオオオオオ

近くで声がする。私は涙を拭き取り声の方に向かう。


屋敷に入り感じたことは悪霊が1体もいない。


恐らく仁様が倒したのだと思う。


ガキンガキンガキンガキン


戦っている音が聞こえる。


そこには仁様と何かが戦っていた。


仁「グォオオオ」


この唸り声の正体は仁様だった。


仁様が何かを殺した。


グチャグチャグチャバキバキグチャグチャゴキゴキグチャ


仁様は何かを食べている。今目の前で起こっていることに私は理解が追いつかない。


グチャグチャバキバキバキバキ


どれくらい時間が経ったのかわからないが私は動けないでいる。


仁様は食べ終わったのか私の方を向いた。


華「仁様大丈夫ですか?」


仁「・・・・・」


華「仁様?」


仁「これは失礼。はしたない所を見せてしまいましたね」


華「貴方は誰?仁様を返して!」


仁「妾は玉藻と申します。ぜひお見知りおきください」


私に一礼した。見た見が仁様だけならことあり少し違和感に感じる。


仁「仁はもう少しで帰って来ますのでその前に貴方も食べちゃいましょう」


華「え!」


仁「悪霊のせいにすればバレませんからね」

仁様が不気味に笑っている。


仁様の後ろから尻尾が8本生えた。


どうやらさっきの言葉は嘘ではないようだ。私は刀を構える。


玉藻が尻尾で攻撃してくる


仁「玉藻!」


仁様が突然叫んだ。尻尾が無くなり攻撃するのを止めた。


仁「華さん大丈夫ですか?」


華「仁様!無事で良かったです」


あまりの嬉しさに仁様にハグをした。仁様は優しくハグしてくださり私は泣いた。


仁「華さん」


涙が邪魔で仁様の顔が見えない。


そこへ一体の式神が寄って来た。


理事長「仁、華君、大丈夫か?」


私は頷く。


仁「憲彦のりひこ様。神宮寺家の封印が解かれて神宮寺家当主の倫花さん以外はすべて亡くなっています。


屋敷の周辺では妖霊省の職員の方々が亡くなっておられます。」


理事長「そうか」


仁「倫花さんが少年が悪霊を発生させて人を食べていたとおっしゃっていましたので恐らくその少年が本体かと思われます」


理事長「わかった。報告ご苦労」


私は仁様の正体を知りたいが今ここで聞いて良いのだろうか?


理事長「仁、力は使ったのか?」


仁「はい」


理事長「目撃者は?」


仁「華さんだけです」


理事長が私の方を見る。


理事長「華君、今日見た者については黙っていて貰えるか?」


華「はい。それで教えて貰えるんですか?」


理事長は仁様を見た。


仁「わかりました。説明しますけど外に行きましょうか」

と言い私の手を握って歩き始めた。


屋敷の外へ出てもう少し離れた。


仁「ここら辺でいいですか?」


私は頷いた。


仁「何から聞きますか」


華「玉藻って誰ですか?」


仁「私と契約している妖ですね」


華「悪霊なんですか?」


仁「悪霊ですね」


華「じ、じゃあ仁様は敵なんですか?」


仁「違いますよ。契約で力を貸してもらう代わりに悪霊を食べさせてます」


華「仁様は悪霊ですか?」


仁「難しい質問ですね」

そう言い仁様は上着を脱ぎ始めた。


私はその光景に視線を逸らした。


仁「華さん、私の身体を見てください」


私は恥ずかしさに耐えながら仁様の身体を見た。


仁様の上半身の首から下が真っ黒なのだ。


その色は肌が焼けた色とは違い、墨で塗られたのかと思うほど真っ暗だ。


でも仁様の寮の部屋で見た時は右腕だけだったはずなのになぜ?


仁「悪霊であるか?という質問には今の所は悪霊ではないと答えさせていただきます」


華「私はお役に立てませんか?」


仁「十分な働きをしてくれるので気にしないでください」


華「どうやったらお役に立てますか」


仁「いつも通り接してくれれば私はそれだけで十分ですのでそんなに気になさらないでください」


仁様が優しく微笑む。

仁「後は理事長がやってくれますので帰りましょうか」


私の手を取り式神に乗って帰った。


仁「もし私が悪霊になったら華さんが倒してくださいね」


そう言い仁様は寝られた。

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