実力

試験はこれと言った事件は発生しなかったが一つだけ驚いたことがある。


それは桜田さんが神職下段になっていたことだ。たった4か月で一段上がっているのだ。


俺は変わらず中段と言われた。


夕方、俺は闘技場に向かているし他の生徒たちも闘技場に向かっている。


誰かが情報の流したんだろうと思っていたら、どうやら理事長が告知していたそうだ。


桜田「本当に理事長と戦うんですか?」


仁「できれば俺も断りたかったけど断れなかった」


桜田「大変ですね」


如月「勝てる自信は?」


仁「半々かな。理事長が油断してくれればチャンスがある」


橘「僕応援してる頑張ってね」

橘さんがその言葉と同時に抱き着いて来る。橘さんに会った最初の頃とは別人ではないかと思うほど態度が違う。


桜田「ああずるい。じゃあ私はこっち」

その言葉と同時に桜田さんも抱き着く。


如月「もてもてですな」

にやにやした顔で言ってくる。


この3人は全員美人でいちゃついていると勘違いしたような男子たちが俺を睨んでくる。


闘技場に入ると中には全校生徒と教師陣に加え各家の当主が揃っている。


なぜ当主がいるのか疑問に思っていたが今日は定例会議の日だということを忘れていた。


闘技場の真ん中に威圧感がありいつもの雰囲気とは違う理事長がいた。闘技場の外は騒がしいのに中に入るとコンサート会場ではないかと思うほど静かだ。


仁「お待たせしました」


理事長「いやいや、仁と戦うのが楽しみでわしが早く来ただけじゃ。」


理事長が服を脱いだ。身体はこれまでの戦いで受けたであろう傷が無数についていた。


それに今年で70とは思えないほど鍛えられた筋肉だ。理事長は武闘派の陰陽師のため油断をしていたらすぐにやられる。


理事長「仁、準備運動はしなくていいのか?」


仁「先ほどしていましたので大丈夫です」


理事長「華さん、審判を頼む」


審判の華さんは教師が集まっている所から出てきた。


華「はじめ!!」


その合図と共に理事長が突っ込み攻撃してくる。俺は避けたがその攻撃を受けた地面はクモの巣状にひびが入った。


今の攻撃は気功を使わずに素手で攻撃してきてあの威力である。


仁「気術火炎撃きじゅつかえんげき


パン

結界で最も簡単に防がれた。


理事長「気術風月」

月のように明るいものが飛んでくるが俺は間一髪避けた。


しかし風圧で左側の服がボロボロになった。


仁「気功」

 

距離を一気に縮める殴る。


バコンバコンバコンバコンバコン

結界の上から叩き込むが全然割れない。


仁「気術爆炎龍」

ドォッン


結界を張られていたがこの至近距離からの気術は耐えられないだろう。


しかし、粉塵が晴れた向こうには無傷の理事長が立っていた。


理事長「仁お前の力はこんなもんか?」


そう言った次の瞬間には理事長が目の前にいた。拳が来るのが見える。


俺は咄嗟に結界を張った。

バリン


結界が破られ吹き飛ぶ。壁に背中を打った衝撃で口の中が血の味に染まる。


さすが、二条家当主だ。強すぎる。




桜田「大丈夫かな仁君?」


如月「強いね。理事長」


橘「仁君」


3人が心配そうに見ている。俺だけの実力では理事長に負けた。


玉藻力を少しくれないか?

「いいよ。好きに使いな」


仁「ありがとう玉藻」


身体中から力がみなぎってくる。


仁「気功」


一瞬で理事長に近づく


バコンバコンバコンバコンバコン

結界の上から叩き込む。

バリン

結界が割れた。


割れたと同時にパンチを繰り出すが理事長に受け止めてられる。それに加えて反撃もしてきた。


さっきの攻撃といい、強すぎる拳を休むことなく繰り出してくる。


バキン

結界を張り防いだ。

仁「妖術呪殺龍ようじゅつじゅさつりゅう


妖術呪殺龍ようじゅつじゅさつりゅうは玉藻の力を借りている時にしか使えない。


ランク弐の悪霊なら一撃で倒せる。


普段は人の目が集まる場所で使うものではないが、今回は勝たなければいけない。


ドォッゴゴン

粉塵が立ち込める。やれたのだろうか?


「ガハハハハハハハハ」


粉塵の中から理事長の笑い声が聞こえる。


理事長「ここまで食らったのは久しぶりだな。仁、今日は特別にわしの本気を見せてやろう」


理事長から発せられる気の質が変わった。これは俺が妖術を使う時と同じものだ。


会場内の生徒の半数以上が気の圧に耐えられず倒れている。


理事長「仁、怖気付いたか?わしらの祖先が封印したやつはこれ以上に圧をかけてくるぞ。」


理事長の言葉に俺は妖気を整えた。


気功は気を使うがそれを妖気に変えた。


理事長が拳で攻撃を仕掛けてくるがスローモーションに見える。


恐らく妖気の影響だろう。俺は避けて殴り返した。


感触がしっかりしていて今日、初めて攻撃が当たった。


理事長「良い攻撃だ」

笑顔で言ってくるが殺気まで入れてきた。


玉藻の力を借りていなければ神職中段の俺でも動けないほどの強い圧をかけてくる。


この圧で気絶してない人はわずか数人しかいない。


理事長「妖術華月」


次の瞬間、全身に強烈な痛みが走り俺は意識を手放した。


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