実戦

俺はグループのメンバーを探している。1人は桜木さんだが残りの2人が見つからない。


その事を担任に伝えると残っている2人を紹介してくれた。


1人はすごく睨んでいる女子でもう1人が元気すぎる女子だ。


仁「初めまして橘さんと如月さんよろしくお願いします。」


如月「よろしく!三栗谷くん〜」


仁「橘さんなんでそんなに睨んでるんですか?」と聞くと


どうやら俺が決闘した人は橘さんだったらしい。


仁「まだ根に持ってる?」


橘「もってる」

すごく睨まれる。


仁「もう一回決闘しようか?今度は記憶がなくなるまで殴ってあげる」

と笑顔で言う。


橘「う、嘘だよ。ね、根に持ってるわけないじゃん」

真っ青な顔で俺に言ってくる。


俺が離れると橘さんと如月さんと桜木さんは楽しそうに話してる。


今日は特に何事もなく終わった。俺はいつも通り華さんの所にいる。


華「今日は私と決闘しましょう」

仁「わかりました。」


俺は華さんの本気を見たことがない。華さんは俺よりも役職が上の神職上段だ。


闘技場に着いた。そこには理事長がいた。


理事長「話は聞いているよ。わしが審判をする。」


俺と華さんは準備運動をして武器を構えた。華さんは刀を主に使うらしく今日は木刀を持っている。


俺は基本的に素手で式神と共闘する戦い方だ。


理事長「初めて!」

華さんが気功を使い距離を一気に縮めて攻撃してきた。あまりの速さに俺は追いつくことができずに直撃する。


俺は闘技場の壁まで吹き飛ばされた。気功を使っていなかったら死んでいたかもしれない。


粉塵の中、霊撃を飛ばすが当たらず妖撃も当たらなかった。


おい起きろ。俺の足に少しだけ力をくれないか。


「どうしたの?久しぶりだねそんなこと言うの。」


全力でかかって来いだってさ。ここでお前を隠してたら本番も力を出しきれないかもしれないからね。


「これ貸し1つね」

了解。ありがとう。


そう言うと力が溢れてきた。この力は久しぶりだ。


少し時間を遡る。私は今日、仁様と闘技場で勝負する。


理事長の初めの合図で私の全力を叩き込んで壁まで吹き飛んだけど仁様大丈夫かしら。


そんな考え事をしていると霊撃と妖撃が飛んできた。


この粉塵の中で私の場所が見えているのではないかと思うほど正確な攻撃だった。


少し経つと粉塵が収まってきた。仁様がこちらに向かい歩いてくる。


その雰囲気はいつもの優しい空気とは違い禍々しい空気を持っていた。


一瞬で目の前からいなくなった。


「こっちだよ」

と後ろから声が聞こえた。振り返るとそこには仁様がいる。


仁様の拳が近づいてくるのがゆっくり見える。これ死ぬかもしれないと思い目を瞑った。


だが、いつまで経っても衝撃が来ない。目を開けて見ると仁様が左手で拳を握っている右腕を掴んでいた。


仁様「大丈夫ですか華さん?」

真剣な勝負なのにこういう優しさを持つ仁様が私は好きだ。


私たちの当主様は誰にでも優しい。ただ敵だと認識した人には厳しいから決闘みたいなことになる。


華「大丈夫ですよ。負けました。」


仁「良かったです。」

仁様の笑顔が眩しい。


だか、その言葉と共に仁様は膝から崩れるように倒れた。


華「理事長!仁様が」


理事長「大丈夫ですぞ。気の使いすぎですので部屋で寝かせておきましょう。華さん仁君を部屋までお願いしても良いですか?」


そう聴かれたので

「はい!」という言葉を残し仁様を抱えて部屋に行った。


私が壁まで吹き飛ばした後の仁様の雰囲気がいつもと全然違ったのは見間違いだったんですかね。


そんな事を考えていたら寮についた。私は鍵を開けてベッドに寝かせた。


俺は目が覚めた。

いつの間にか部屋にいる。すると隣で寝息が聞こえる。横を見るとそこには華さんがいる。


多分華さんが運んでくれたのだろうあとでお礼言わなきゃと思いつつご飯を作り始めた。


やはり華さんの嗅覚は優れているらしい。華さんがご飯を作り終わると同時に起きた。


仁「華さん運んでくれてありがとうございます。」

華さんは褒めて褒めてと言ってきたので頭を撫でてからご飯を食べた。


次の日


実戦がやってきた。俺は常に戦ってきたため、初めてではないが俺と桜木さんを除くほぼ全員が初めての実戦のため教室陣もピリピリしている。


昨年のこの実戦では2人死亡で5人が怪我をしているそうだ。


この話を聞いてからいつも元気な如月さんが静かになった。


妖霊省は毎年50人近くの職員が殉職している。


それほど危険な仕事であるがゆえに学校で実戦に慣れなければ妖霊省に合格することすらできないだろう。


この実戦は各部屋で一斉に行われる。早くて30分遅くて2時間かかるためだ。


俺たちは部屋に入っていく。真ん中には悪霊が入っているだろう箱がある。


「あれ、美味しそう」

頭の中で声が聞こえる。


おい、今はやめろ。今週の日曜日に悪霊狩りするからその時でいいか?


俺は聞く。


「わかったその時まで我慢しよう」

何かはこの案に同意した。


箱が開かれる。そこにはランク四の悪霊がいた。


「ランク四の悪霊はお腹がたまらないんだよ。食べるならランク壱か弐が良い」


少し静かにしておいてくれ。


戦闘が開始した。如月さんが霊撃を放つが避けられる。橘さんが拘束系のチェーンを出して相手の動きを止めた。


そこに如月さんの霊撃が当たるが全然効果がない。


悪霊が攻撃してくる。俺は結界を張り3人を守る。


仁「俺は攻撃しないから3人で倒してくれ」


橘「分かっているわ」


如月「橘ちゃんいくよ」


如月さんが気功を使い悪霊に近づいた。悪霊の手を切り落とした。


そこへ橘さんが霊撃を放ち、桜木さんは妖撃を放った。


霊撃と妖撃の効果で悪霊が消えた。


担任「全グループ倒したようだな。今日は授業終わり。明日近接戦の授業だから今日はゆっくり休むように。以上解散。」


華さんの所に向かった。今日も気功の鍛錬である。


それから数日が過ぎた。俺はいま定例会議がある二条家に向かっている。


「よう仁。前回ぶりだな。学校楽しんでいるか?」

このおっさんは八神家当主の安成(やすなり)だ。


仁「お久しぶりです。楽しんでいますよ。」


安成「役職神職の中級だろ。成長したな」


仁「ありがとうございます。今度手合わせお願いします。」


安成「また今度な」

安成さんはこの5家の中で一番強い陰陽師だ。


安成「知っているか?」


仁「何がですか?」


安成「俺がいる九州が最近ずっと特別警報が出ているんよ。

俺たち本家も分家も悪霊討伐で人手が足りてなくて今日も出席するか迷ったんだけど、この会議は大事だから来たわ。」


仁「そんなにたくさんいるんですか?」


安成「九州の特に福岡でこの2週間の間に100人近くが失踪して30人が悪霊に殺されているんだよね。」


仁「短期間でそんなに?」


安成「ああ。それに悪霊ランクは弐の発生が一番多いから人手が足りない。」


参か四であれば警察と妖霊省で対処できるが弐は妖霊省だけで対処できる霊ではない。


話をしていると二条家に着いた。二条家は敷地が広く結界が丈夫である。


二条家の封印している部位は体である。


体は一番悪霊の霊力が強いとされている場所であるため当時から陰陽師としての力が強かった二条家に封印された。


そのため二条家の屋敷には多くの人が住んでいる。


それに悪霊は霊力が強い霊に集まる習性があるため体の一部を封印している家には陰陽師と祈祷師が多く守りが固い。


理事長「皆も知っていると思うが八神家がいる九州の福岡と一堂家がいる四国の広島での霊の動きが活発化している。


ここ2週間で2県合わせて死傷者が110名、行方不明者が200人と非常にまずい事態になっている。


そのため二条家から広島と福岡に陰陽師を派遣することにした。それに際して三栗谷家当主と一堂家当主は各々県に向かい支援して欲しい。」


仁「質問よろしいですか?」


理事長「どうした?」


仁「現在、三栗谷家で悪霊にまともに戦える人間は私しかいませんが三栗谷家として私一人で支援に向かうことは可能でしょうか?」


理事長「わしはよい。八神家当主は三栗谷家当主だけでよいか?」


安成「私はかまいません」


理事長「仁。そういうことでよいぞ。」


仁「お二方ありがとうございます。」


神宮寺「二条家当主、私は陰陽師と祈祷師だけを派遣でいいか?」


理事長「なぜじゃ?」


神宮寺「神宮寺家は陰陽師も祈祷師も役職が高い者が数多く在籍するためその者達だけで私以上の活躍をしてくれる。


それに神宮寺家には役職が低い者も数多くいるためその者達を私が早く指導して即戦力が増えた方が良くないか?」


理事長「なるほどな。わしはそれでいいぞ。一堂家当主は?」


一堂家当主「私もそれでよろしいです。」


理事長「みなの者、頼んだぞ。」


その言葉を最後に定例会議が終わった。


仁「安成さん」


安成「どうした?」


仁「明後日までにそちらのお屋敷に着きます。」


安成「分かった。仁頼んだぞ。」

そう言い安成さんは式神に乗っていった。


俺も寮に帰った。明日からの学校は理事長が担任に伝えておくそうだ。


部屋に入ると華さんがいた。俺にとってはもう華さんがいることが当たり前になっている。


仁「明日からちょっと福岡まで行ってきます。いつ帰ってくるか分かりませんがこの部屋自由に使っていいですよ。」


華「私も行きたいです。」


仁「いえ今回だけは三栗谷家当主として私一人で行きます。」


華「絶対来ます。ついていきますからね」


俺は華さんの押しの強さに負けた。


明日早く出るため俺は早めの睡眠をとった。


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