学校生活(1)
朝起きると触り慣れた感触があった。俺も驚くのに疲れたから華さんに聞いた。
華さんが言うには俺は男子寮ではなく教員寮に住まわせると理事長が言ったらしいが俺は自分の部屋を男子寮と勘違いしていたようだ。
昨夜聞いた女性には紙を見せて尋ねたから何の問題もなく部屋にたどり着くことができた。
華さんは俺がいるのは教員寮だから毎日来るつもりだそうだ。
ついでに昨日、俺を尾行していたのは華さんらしく、俺が学校まで行けるか心配で見ていたらしい。
くうの上で雫のおっぱいを揉んでいたのを見た時は怒り狂ったそうだ。
俺は着替え始めた。
華「仁様ってなんで右手の肩から手首まで黒いんですか?」
俺はいま動悸が激しく冷汗が流れてくる。二条家当主に絶対にこの手は誰にも見せるなって言われていたのを華さんは身内だからと完全に油断していた。
仁「秘密です」
俺はこれ以外の言葉がとっさに思いつかなかった。華さんは怪訝な顔をしたが「仁様がそう言うなら」と引いてくれた。
華さんもこの黒い腕の正体に少しは見当がついているだろう。俺は華さんに学校の準備があるのでと説明し帰ってもらった。
教室がある建物は教員寮から徒歩10分と少し遠いため少し早く部屋を出た。教室に着くと俺に話しかけてくる者はいない。
もう怖がられることには飽きたので昨日の測定検査で一般職上段の結果が出た人を探すことにした。すると1人だけ明らかに周りにいる霊の数が違う女子がいた。
仁「初めまして。何呼んでるんですか?」
そう問うと
「気の使い方についての本を読んでます。」彼女はそう答えた。
気とは俺たちが術を使うときに必要なもので祈祷師は気を使い悪霊を祓い、陰陽師は気を使い悪霊を倒す。悪霊を祓うための札や学校などの重要な建物を守るための結界、悪霊を倒すための式神は気でできている。
どれだけ気をうまく使えるかで威力や効果が変わってくる。そのため役職が高くなればなるほど気を扱うことに長けている。
式神は祈祷師でも出せるが大多数の人間は1人に付き1体の式神しか召喚できない。それ以上出してしまうと気を制御できずに式神を維持できなくなるからである。
自分と互角の悪霊との戦闘中に万が一でも式神を出せないとなったら、陰陽師であれ祈祷師であれ防戦一方で負けてしまうだろう。
だから気の使い方とは大切なものである。
仁「気の使い方は大切だよね。名前聞いても良い?」
「
彼女が俺の名前を憶えてくれている。すごく嬉しい。
決闘が終わった日から俺を見ると同級生だけではなく上級生も逃げていくようになった。
それに会話が成立している。俺が声をかけるとみんな土下座して「命だけは」と言い逃げていく中で、桜木さんの行動に感動のあまり涙した。
仁「桜田さん。ありがとう。」
俺は涙を流しながら言った。
桜田「う、うん。三栗谷君なんで泣いてるの?」
仁「なんでもないよ。ただ嬉しすぎて」
そう言うと桜木さんは余計に困惑したようだから、俺は涙を拭きとり会話に戻した。。
仁「桜木さん質問していい?」
桜田「良いですよ」
仁「桜木さんって一般職上段だった?」
桜田「はい。」やはりこの人だった。
仁「元々陰陽師だったの?」そう聞くと桜木さんはばつが悪そうな顔をした。
仁「ごめん。言いたくない話だった話さなくていいです。」と言うが話してくれた。
桜田「元々神宮寺家の分家だったんですけど陰陽師の才能がないからと幼少期に両親に家を追い出されました。
その時追い出された私をたまたま
その日から倫花さんに稽古をつけてもらっているんです。
それと、この学校に行く前に倫花様が三栗谷家の現当主がこの学校に入学すると言っておられたので実際に三栗谷君に会えて嬉しいです」
仁「私は桜田さんに会えて嬉しいよ。倫花さんに稽古つけて貰えたのは羨ましいな」
俺は7歳で三栗谷家当主になってから実戦でしか戦ったことが無いため悪霊を倒すために共闘で陰陽師や祈祷師と共に戦ったことはあるが、稽古というものを一度もしたことが無いのだ。
桜田さんの頬がほんのり赤くなっている。
仁「桜田さんどうしたの?」
桜田「いやなんでも」
そういうとちょうど担任が教室に入ってきた。
「今日は合同で術の鍛錬をするぞ。全員ついて来い」そう言い担任が教室から出て行った。
仁「桜田さん一緒に行かない。」そう言い桜田さんと一緒に移動している。
桜田さんは遠距離攻撃をする式神を使っているそうだ。遠距離攻撃をする式神は通常の式神よりも召喚するのが難しい。
そう話していると闘技場に着いた。
「今日は気の使い方である気功の実演をする。その後、各々で練習しろ。三栗谷と桜田はこっちの三栗谷先生の所で練習だ」
そう言うと華さんがこっちに向かって手を振っていた。
担任の実演が始まった。気功を使うと身体能力が上昇する。
そのため10メートルと言う距離でも一瞬で距離を縮め相手を倒すことができるのだ。
気を全身に纏っているようだ。全身から陽炎のような空気の揺らめきが視える。
パンチやキックの風を切る音と風圧が周りにいる生徒には感じ取れているのだろう驚きの声が漏れている。
担任による実演が終わった。生徒は各々気の使い方の練習を始めた。
俺と桜田さんは華さんの所に向かった。
華「桜田さんには悪霊と実戦をしてもらいます。その間、仁様は気功を使ったまま式神を全部出してキープしてください。」
仁「全部?」
華「そう全部です。」
華さんと桜田さんは俺より少し離れた場所に行き、実戦を始めた。
俺はくうととび、それに雫をだした。そこから残り7体を出した。
それに加えて気功を使った。これはなんの問題もなくできる。
俺はこの状態をキープしながら一つ考え方をしている。
式神は悪霊を倒すためにいる陰陽師みたいな存在である。そのため守るという点では祈祷師の方が有利なのは確かだ。
なら祈祷師の式神を作れば俺の代わりに守って欲しい対象を守ってくれるのではないか?と考えて式神を作った。
名前は
体が急に怠くなる。祈祷師みたいな式神はやはり気をたくさん必要とするため身体への負担が大きいようだ。
攻撃系の式神が10体と守護系の式神が1体、これをうまく使うことができればこれから先の戦闘はもっと楽に戦うことができる。
頭がホワホワしてきた。誰かがこっちに駆け寄って来ているようだがぼんやりしている。
次の瞬間には視界が暗くなった。意識が戻った時には何もない真っ暗な空間が広がっていた。
「お前さん久しぶりだな」
人の形をした何かが声をかけてくる。
仁「お前、侵食しすぎ。右腕黒くなったじゃん」
そう言うとその人影は
「できればお前さんの身体を1日でも早く乗っ取りたいわよ」
この悪霊は素直である。悪霊は憎しみや怨みがある死者の霊であるため、見方によれば本能に忠実なだけなのだ。
仁「お前に身体は渡さないよ。ただ何か不自由があったら俺に言ってくれ。解決できることはするから」
「ほんとお前さんはすごいね。人間なのに悪霊の不満も聞いてくれるなんて」
仁「悪霊でも元は人間だからね。俺はそこを区別することはない。ただ、人に危害を加える悪霊には滅する必要はあるよね。人間でも悪いことした人は罰があるでしょ。」
「私達、悪霊は危害を加える悪霊もあるけど怨みや憎しみを持って悪霊になったけど憎しみや恨みが解決して、そのまま成仏するやつもおるわね」
仁「何かあったらお前にも力貸してもらうからな」
「お前が死ぬまでわらの力を必要としないことを願っとくわよ」
と言い人の形をした何かは真っ暗な空間に溶け込んだ。
さてどうやって俺はここからどうやって戻ろう。
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