出発

「仁様準備整いましたか?」

1人の使用人が問う。

仁「ああ、終わったよ。確認しに来てくれてありがとうね。」

そう言い俺は荷物を持ち瞳の元へ向かった。


仁「瞳」

俺は瞳を呼んだ。


仁「当主代理としてこれから忙しくなると思うがよろしくな」

瞳「もちろんです。お兄様も頑張ってください」

俺は分家のみんなの所に向かい挨拶をした。みんな「任せとけ」と言っていたのでとても心強かった。


その後使用人たちの所にも行き挨拶をした。子供が俺の所に来て「おじさんだれ?」と言う姿はとても可愛かった。その後両親はすぐに謝ったが俺はそんなことは気にしないため「全然大丈夫ですよ」と答えた。


今は華さんの所に向かっている。

仁「華さんここにおられたんですね」


華「どうしたんだ?」

仁「もうそろそろ出るので挨拶を少しだけと思ってきました」


華さんは驚いた顔をした。

華「仁様は聞かれていないのですか?」

仁「??なにをですか?」


華「私、陰陽術育成学校の先生で仁様の特別指導官ですよ。」

俺はそんなことを初めて聞いた。


仁「特別指導と言うことは私だけ他の方と違う場所で訓練するのですか?」

華「いいえ。皆さんと同じ授業を受けてもらいます。ただ皆さんは5限目で終わりですが仁様は特別授業で7限目までありますので5~7限目は私が担当となります。ビシバシ行くので覚悟しておいてください。それに仁様だけ土曜も7限目まで授業がありますので気を引き締めてくださいね」


華さんはいつもは優しいが今は雰囲気が違い怖い。


華「仁様、私は一足先に学校に向かいます。」

そう言い華さんは式神を呼び行ってしまった。


俺は犬の式神くうを呼び出し、くうの上に乗って学校に向かった。


陰陽師などの霊がくっきり視える人は車や公共機関を使えない。なぜなら車を運転するときは霊が邪魔で信号や歩行者、車が見えなくなりとても危険だからである。


公共機関は人が多いということは霊も多いので公共機関を使っていたら頭がおかしくなってしまうから霊が視える人は車や公共機関を使うことはない。


それに霊が視えない人には式神も視えないため式神の上に乗っている俺も視えない。そのため街中でも堂々とくうの上に乗って移動することができる。


陰陽師育成学校の話を少ししよう。陰陽師育成学校は陰陽師を育成する学校であるが入学後、陰陽師としての素質がない者は祈祷師になるための訓練が行われる。


そのためこの学校は陰陽師を輩出する人数がそもそも少ないのだ。ここを卒業した生徒は主に妖霊省に就職する。一部は警察官になるが警察官は筆記試験や体力試験など厳しい審査を通過しなくてはいけないためそれ相応の成績が必要となる。


街中を移動していると1人の女性が襲われていた。周りの人は誰も気づいていない。俺はくうにすぐに行ってもらうように言った。


俺はくうから降りた。くうから降りると俺は普通の人にも見えるようになる。俺は悪霊に近づき持っていた札を当てた。すると悪霊は苦しそうに叫び始めた。その隙に女性を悪霊から離した。それに俺は近くにいた警察官に周りの人々の避難をお願いした。


警察官は俺が陰陽師と気づいたのだろ。速やかに避難誘導を始めた。


仁「くう食べていいよ」

そう言うとくうが悪霊を食べ始めた。この悪霊はそんなに強くないのだろう。くうはすぐに食べ終わった。

くう「おわったよ~ほめてほめて」

と頭を俺の手に押し付けてきた。


俺がくうを撫でていると先ほど助けた女性がこちらに来た。


女性「先ほどは助けていただきありがとうございました。」


仁「いえいえ無事でよかったです。怪我はありませんか?」


女性「はい大丈夫です。そちらは式神ですか?」


仁「そうですよ。視えるんですか?」


女性「大きいですね。犬ですか?」


仁「そうですよ。犬の式神なんです。お姉さんの霊たち、みんな善霊ですね。よほどお姉さんの日頃の行いが良いのでしょう。」俺は女性の肩に乗っている霊を視ながら言った。


女性「そんな、ありがとうございます。」


仁「家まで送っていきますよ。夜は霊たちが活発になりやすくお姉さんみたいな霊が視える人は襲われやすくなりますからね」


女性「いいんですか?」


仁「はい。くうもいいか?」


くう「おれはいいぞ。」と嬉しそうにしっぽを振っている。

それを見た女性は少し微笑んだように見えた。


俺は女性をくうの上に乗せた。それと警察官に今あった事を説明しこの場を去った。


女性「家まで送っていただきありがとうございました。」


仁「色々お話を聞けて嬉しかったです。こちらこそありがとうございました。」

そう言い俺とくうは目的地に向かった。


「あの人カッコよかったな」

女性はボソッとつぶやいたがその声は仁に届くことはなかった。


家を出て結構進んだが夜は冷える。しかし、くうは毛がふさふさしていて暖かい。進んでいると妙な感覚に襲われた。いま誰かに監視されている気がする。


今の俺が視えるということは悪霊か陰陽師か祈祷師だろう。しかしくうは結構な速さで進んでいるためその中で監視を続けられる人が誰かが分からない。


俺は用心の為にくうと俺に札で結界を作った。しばらく進むと違和感が無くなったが結界は作っておくことにする。俺は眠りについた。

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