不死者の仲(戦友)

カガワ県タカマツ市の港からそこまで遠くない距離に位置する小さな島、メギ島

時は蘭華ランカたちがフェリーでその島に着く前の夜

まだ彼女と巨漢があるホテルでちょっとした騒ぎの状態に取り込み中のときだった。


静まり返る島の街のある家でまだ明かりが付いている。

開けられたままの窓を家の中に見ると、ある男性が座っている。

彼は特に何もない外の暗闇を眺めている。

外には月明かりが照らされたが、見えるのは他の家のさっくりとした外見だけだった。

しかし、その男性の目には何かを待っているかのように外を見ている。

待ち望んでいるかのように...


窓が開けられたことでカーテンは涼しい夜風に優しく靡いている。

と思うそのとき...徐々に風が強くなってきた。

そして、一瞬何かが窓を通して入って来るかのように突風が吹いてきた。

家の中にはちょっと物が風のせいで散乱したが、男性は驚きの様子を一切しなかった。

そこで、家具の物陰から何かが現れた。

それは一匹の猿だった...の猿...

その突然現れた猿は男性の前まで移動して、目を見ながら男性に喋り出した。


「よ〜久しぶりじゃの...」

と言ってから、その猿は少女の姿に変わった。

真っ白の肌と髪の少女は可愛い顔と似合わないドヤ顔をしている。

それを見た男性はただ優しい笑顔でさっきまで猿の姿だった少女を見てこう言った。

「お待ちしました。ところで、なぜ少女の姿でしょうか?」

「久々に会ったのに何という質問するのじゃ...はっ!」

「来るのは分かっていますから...あなたは少女の姿に変わることも...ただし、その理由までは分かりませんでした。」

「そこは重要?」

「まあ...ただ気になるだけなので、話さなくても別に大丈夫です。

さっき久しぶりと言いましたが、いつぶりでしょうかね?」

「あ、そう...さすがに分かったのは俺でも分かったのじゃ...

いつぶりか...言っておいただけで考えてみると、いつなんだ?

の中では俺たちは1番会うかもな...他はよく知らん。

確か...何十年前か?この家はまだ建てたばかりのとき...

そうじゃ...ここでいっぱい酒を飲ませてもらったことだけは覚えている。」

「あ...あのときですか...時は本当に一瞬のように過ぎてきましたね...

変わらない私たちが言うのはなんですが...」

とここで内容の中に気になる点がいくつかあるものの、久々に逢えた二人のたわいのない話がしばらく続いている。

その和やかな雰囲気をわざと壊したかのように少女はさっきの顔より真剣になり、別の話題を持ち出した。

「単刀直入に言う...

お前を狙って、たぶん始末しにくるじゃけん。

一応こっちに向かっている途中で怪しいやつを片っ端からやっつけておいたんだが、

相手はまだ何人いる分からん。

あっちこっち見回ったせいでこんな時間になってしまった。

知っているのはこっちに向かっていることだ。

魔王もここに来る...たぶん明日。そうなると、ここは危険じゃ...

俺の読みが正しければ、あいつらの正体は...」と言い終わっていない少女に、男性が割り込んだ。


「分かっています...全ては見えましたから...」

「じゃ、何もしないで待つのか?」

「そう見えますか?」とここで何気ない笑顔を少女に見せた。それを見た少女はニヤリと笑った。

「何かを考えてやがるな...」

「さて...どうでしょう...」

「さすが、腐ってもあの参謀様だわ。相変わらず全てを見抜いてこんなことになるのも想定内っつーことかよ。」

「いえいえ。全てが分かる訳ではありませんよ。しかも何の作戦もありません。」という言葉に少女はほーという顔をして、意地悪そうな顔をした。

「へー...それで?これから来るやつにどうやって対抗するの?」

「対抗しません...私には」

「は?...それどういう...あっ!」と少女は何かに気づいたかのように声がうわずった。

「気づいたのでしょう...私には今を持っているということを...」

その言葉は少女を苛立ちさせた。

「この参謀野郎...シンプルかつ最強の作戦を取るのかよ...俺を使おうとしやがって...

まあ、いいさ...俺は一応別の腐れ縁に頼まれたからな。

腐れ縁のお前にも頼まれたら、これもこれでだ。

しかし!俺は旦那以外命令を受けない...これはあくまで依頼だ。

あとでちゃんとたっぷり報酬をもらうじゃ。」

「もちろん...あなたが欲しいものは全力で与えるつもりです。」

「これで契りだぞ!忘れたと言わせないじゃ...

本当...神というものはクソだな。俺たちを不死にさせたのも出逢わせたのも...昔みたいに暴れてやりたいぜ。」

「お言葉にはお気をつけて。あなたもまた神々の駒にすぎないし...むろん私も...」

「じゃ...俺の気が済むまで思う存分暴れさせてもらうわ。」と言って、少女は窓が開けられた方向に向かって何か独り言を言い始めた。


「な…聞こえてんだろ?我が父よ...

ここで子を助けなければ、お前を父と呼ぶのをやめてやる...というか天まで行って一発を食わせてやる!」

と言った途端、風が少女の周りに集まり、彼女を鎧のように纏っている。

そこで、男性は何かを話し始めた。


「昔のことを思い出しますね。参謀の私から見ると、あなたはいつも他の者のことをあまり考え無しに猪突猛進で突っ走って...暴れ出して...

なのに誰より強くて、戦場を一変させた。そして、主への忠誠心が誰よりも強い。

あなたこそ...主人のために戦う最強のヴァーナラ戦士...

一方、スグリーヴァ太陽の子は責任感が強い。

みんなをまとめて、自分にも前線を出た。

彼は、我が軍隊の将軍だ。

そして、王の器を持っている...」

とそれを聞いた少女は少し呆れた顔をして、こう返した。


「は!何老人みたいにこんな昔話をしているんだ?くだらんじゃけん。

大体...あいつは王?今になっては笑えるわ。

あんな僧侶でも経営者でも中途半端なあいつには...

でもよ...お前の言う通り…俺は戦士だ。

つるむことも嫌い...正直一人で戦うのは性に合う...いや、楽なんだよな...」

とここまで話した少女は体に纏った風をしながら、召喚した三叉槍トリシューラを手に持って構えた。


「じゃ...参謀様、その依頼内容を言え。」

「では、一人で暴れても構いません。私...白鬼ハクキを明日まで守ってください。」


少女はやる気満々の顔をして、ただ短い返事をした。


「了...解!」

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