業の矢先(翠猿③)

蘭華ランカと巨漢がフェリーに乗ってメギ島に出発したその後

同じカガワ県タカマツ市の鬼無きなし町にある純喫茶【桃太郎】


コーヒーの香りが漂う静かな雰囲気の店内でマスターらしき男性の一人が新聞を読んでいる。

その新聞の大きな見出しには政治家の問題が書かれている中、片隅に小さく書かれた別の記事はこう書かれた。

「ホームから消えた!?改札を通らずに出た2人の電車代支払う義務は?」

という冗談のようで奇妙な見出しが書いてある。

しばらく新聞を読んだあと、それを置いて外を眺めた。

「あと少しで到着するのか...」と独り言をした。

しかし...店の静けさを壊すかのように突然店の扉が開けられた。

「いらっしゃい...」とマスターは来客に声をかけたが、返事がなかった。

客は一人じゃない...何人かの男性は店の中に入っている。

そして、誰かを迎えるかのように二つの列に分かれて整列し始めた。

そこで、一人の男性は店に入った瞬間...他の男性は頭を下げてお辞儀をした。

その男性はカウンターに座り、マスターの方を見た。

きっちりとした黒いスーツの姿を着て、ちょっとオシャレな黒いサングラスをかけている。

見た目は20代でまだ若い...

しばらくマスターを笑顔なしでジッと見た男性はやっと声を出した。

その最初の一言は...

「すみません...クリームソーダをください。」

それを聞いたマスターも特に驚きの様子をせず「はいよ。」と答えて、品物の準備をし始めた。

そして、メロンソーダが出来上がった。


「はい。クリームソーダ。」

「おう!噂の美味いクリームソーダだ。写真を撮っておこう~」とご機嫌にスマホを取り出して、写真を撮った。

スマホを少しいじった後、男性はスプーンを手に取り、クリームソーダのアイスから堪能した。

「...うん!」という声を発した後、ストローでメロンソーダを吸ってアイスを口に運んだ。

「うん!」とまた同じ声をした男性はあっという間にクリームソーダを完食した。

「ふ~」と言葉ならない声を上げた男性は満足の顔をした。

ここで、男性はマスターに話しかけた。

「いや...ここのクリームソーダは美味しい!SNSに載せたいですけど、いいですか?」

「悪いな...こういうのは疎い方だ。なんか急に...なんだっけ...バズったとかになって、店に客が殺到したら、常連にも迷惑だし...この雰囲気も台無しになるから、控えてもらえまないかな。」

「あ...確かに最近オーバーツーリズムという話もニュースになりましたね。分かりました...やめておきます。」とスマホをポケットにしまった男性。

「この美味しいものが食べられて、今日はいい収穫ができそうな気がします。」という満面な笑顔を見せた男性に対して、マスターは彼に問いかけた。

「あんた...何者だ。」という唐突な質問に対して、男性は普通な笑顔で返した。

「【翠猿すいえん】ですよ......」

という言葉が発した途端、整列した男性たちは突然銃を取り出して、マスターの方に向けた。

マスターはその光景を見ても特に物怖じず...相手の男性の目を見た。

「昨日私の部下は別の重要人物と接触しました。私を装ってね...まあ、匂いを誤魔化すためにわざわざ自分の匂いの香水まで作りましたよ。

その様子だと...流した情報は聞いていない...ということは、そっちとのつながりがないということか...

ちなみにさっき部下に写真を送りました。ただの連絡です。」

とここで男性はマスターに近づき、こう言った。

「あなたをここから動かないようにしないとですね。

あなたには自分の役割が来る日まで大人しくしてもらいます。

まあ...魔王の居場所は一応さっきうちのに伝わったという連絡ももらいましたが、

しかし...偶然なことに取引先の目標であるあなたの友人も魔王が向かった先にいるなんて...偶然じゃないか...

彼のことはどうなるか分かりませんが、凄腕のボディーガードはすでに到着したと聞いたので、大丈夫かと思います。」

とさらに顔をマスターに近づき、真剣な眼差しでマスターを見つめて、言葉を口にした。

「あなたには守りたいものがあると同じく...私たちには果たさないといけない大義がありましてね...

大人しく待っていれば、こちらも特に乱暴なことをせずに済みます。」

マスターの顔は表情を変えずにただ男性を見ている。

しかし、男性の次の言葉はマスターにも驚かせたキーワードが入っている。


「待っているついでに聞きたいことが一つ...

彼女...は今どこにいますか?」

!?!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る