蘭華(再出発)

外見が中世ヨーロッパの城に思わせる大きな建物

その中にある一つの部屋

男女二人で入った部屋は今もう一人が増えてきた。

現れたのは不思議に宙に浮いている赤子だった。

赤子と言いながら、赤色ではなく...黒い肌色をしているから黒子と呼んだ方がよさそうだが、

また違う意味になってしまうから...これ以上この話をやめよう...

そんな黒い赤子は斯く斯く云々としゃべりが止まらないことに対して、それを聞いている蘭華ランカはなるほど...みたいな顔をして、関心する姿勢を見せた。


「だから、君はこう...この人?とは違う性格だよね。分離された心は赤ちゃんみたいに少しずつ成長して、やっと言葉が話せるようになって...でも、体はまだ赤ちゃんのサイズだ。」

「そうそう...余も気になっているんだよ!なんでもっと魅力的なボディになれないのかって。

まあ...その石像のサイズから考えたら、それもそうだな。デカいあれ...なんだっけ...果物から赤ちゃんが出た話...そんなデカければ、もう中身は十分大きくなった子供ぐらいじゃない?...と思ったことある?」

「うん...おとぎ話はともかく神話とかを見たら、よく分からないことが多いよ。君もその分類になると思う。」

「それはもう分かっているよ...愛する我が君よ。でも、こうして其方とお話ができたのも余の楽しみにしていたことの一つなんだ。」

「楽しみ?」

「そう!さっき言ったじゃない?余の中にはある感情が入っているんだ。それは【楽しい】という感情!

何事もエンジョイしないと損だよ...例えば今、余と本体はこの時代に居るじゃん?

でも、次はこうなるとは限らないし、もっと楽しまなきゃ!」とここまで陽気で喋った黒い赤子は少し暗めの表情をランカに見せた。

「本体があのナーガとの戦いで感じた感情は【哀しみ】だ。とてつもない哀しみに圧倒された余は出る隙がなかった。余はもういろんな後悔をしてきたが、そんな形で掘り出された大量の後悔と哀しみには耐えろと簡単に言えてもできなかった。」

「君...」

「あ...さっきは無し!暗いのはやめ!せっかく愛する我が君としゃべれるのに...こんな感じになってしまってすまんね。」

「いいえ...たださっきのあの...出来事でこの人?の哀しみの感情が一時的に消えたから、君がこうして出てくることができたじゃないかって...」

「おう!さすが聡明な愛する我が君!それなら、説明が付く!余はできた隙間みたいなところから出られたっつーことだ。」

「あくまで推測だけどね...でも、少し安心したよ。この人?は今まで見たことがないぐらい落ち込んでいるから、少なくとも君はまだ心の中に残ると分かっただけでよかった。まあ...こんな形で知るのも不思議なんだけどね...」

「あ...余もさっき言ったけど、もう一度本体の代わりに言わせてくれ...本当に其方とまた逢えて、こうして話せるのはマジで楽しかった。」

「それ...楽しいというより、嬉しい...じゃないの?」という唐突な疑問がランカの口から出てきた。

「うん...嬉しいか...今の余には楽しいしか感じないね。まあまあ、細かいことはいいんだ。ありがとうな!」と言ったすぐに黒い赤子は何かを感じ取ったかのような顔をした。

「なんか本体のクールダウンが終わったみたい。笑えるね...クールダウン時間が必要なんて、機械かっつーの。其方のあれを見ただけでこんなに...」

「ほ、本当に悪かった。」

「謝ることかい?余も出られたし、こっちとしては感謝しかないけどな。ありがとう!」

「う、うん...それならよかった。」

「じゃ!本体の方もよろしく頼むわ。不器用だけで、実はいろいろ考えているよ。こんな強面だけどな...また機会があれば、また話そうな!」

と言った後、黒い赤子は姿が消えて...さっきまで動かなかった巨漢の白目が元通りになり、起きたみたいだ。

巨漢は周りの様子を見渡そうとして、あっちこっちを見た。

安全が確認できたかその後ランカを見つめて片言の古代言語でこう言った。

「其方...無事...良い...」

そう聞いたランカも少し微笑んで、片言の古代言語でこう答えた。

「あなたも...無事...然り?」

巨漢は首を横に振った。そして、また何かを言った。

「叫び...其方...耳にする...あそこ...入った...後...記憶...ない...」

それを聞いたランカは少し慌てた様子を見せて、こう返答した。

「も、問題...ない...気にする...ない」

巨漢は納得したみたいだったので、ホッとしたランカ。

ランカは時間を確認した後、チェックアウト時間までにまだ2-3時間が残るため、朝の長旅に備えて少し寝ることにした。

巨漢は寝るというよりさっきから座っている場所からどこにも行かずに座り込んでいるだけだが、ランカは大きいベッドの上に横になって、目を閉じた。

その間、さっきのことを考えた。


この人?が言っていた心の在処はやっぱり心の破片なんだ。

その黒い赤子も破片の一つだと分かった。

全然性格が違うけど、それもこの人?の一部なのかな...

その破片は前の神社のときみたいにそれに近づいたら、センサー的なものが作動するっぽい。

あのブンブン回った首はそういうことだった。

黒い赤子が言っていた楽しい感情はこの人?に入ったことで...そうか...だからあのとき突然路上ライブに乱入したってそういうこと?

で...今度は破片じゃないけど、哀しみという感情...

また次に誰というか何者が現れたときには何かこれと関係しているよな。

私ももっと気をつけないと...

この人?は自分より私を心配しているっぽいし...

しかし...残りの破片はどこにあるか分からないし、次にどこで誰が出てくるかも見当がつかない。

第一...破片を全部集まれば、何かが起きるだろう。

...

龍を呼ぶ的なものじゃなさそうだ。

魔王が復活して、あの大戦がまた勃発するとか?

...

この魔王がまたそんなことをするとは...ないと言い切れないけど、

今は心の破片を探しているには違いない。

それなら、自分はできるだけなことをやる...

何ができるか分からないけど、興味が湧いてきた。

これも研究に活かせるじゃないのかな。

立証するのは...

今はまず伯父様のところに行かないと...

伯父様なら、何かが分かる...かも

眠たくなってきた。

...今考えても仕方ない...一旦体を休もう...


...

そして、早朝が訪れた。

その大きい建物...ラブのホテルから二人の男女が出てきた。

次の目的地...本来の目的地、カガワに向かって、再出発した。

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