ぶらり旅(宿泊⑤)
ホテルの中の一つの部屋
浴室内
シャワーを浴び終わった
シャワーの途中でも外から丸見えのツケツケガラス窓にチラチラと外の様子を確認した。
あの人?はこっちを見ていない。
やはり私の言うことを聞くよね...あの伝承の魔王だと到底思えない...
今更か...一緒にいると、不思議なことに怖いと感じない。
むしろ、心配?ほっとけない気持ちを感じる。
何に例えば良いだろうな...うん...
ペット?
こんなデカいペットってヒグマのレベルだけどなとたまたま見かけた海外の動画を思い出す。
時には言葉を発するインテリアで、時には面倒を見ないといけない従順なペット...?
そして、時には...
うん...
それはいいか...とりあえずシャワーを浴びたし、後はお風呂にも入りたいけど...
大きなバスタブにお湯を入れながら、一旦タオルで体を拭き乾かしたランカはいまだに腑に落ちない何かがあると考え込んでいる。
本当にカーテンとかはないのかな...
見たい人のためにこういうものがあれば、見られたくない人のためにも何か...と思った彼女は何かを見つけた。
さっきまで気づかなかったけど...あそこに何かボタンみたいなものがある。
もしかして...カーテンじゃなくて、最近の技術で一瞬ガラスが曇り、中が見えない状態にする仕掛けとかじゃないのかな...
そうか...そんなこともできるんだ。すごいなこのホテル!
古い外見に反して、中にはなかなか最先端だ。
こういうのが疎い自分だから、前にテレビ番組でも見なければ気づかなかった。
なんだ...見えないようにするってできるじゃん...
シャワーを浴びながらドキドキして損した。
でも、これで...
と思ったランカはタオルを体に巻いて、そのボタンみたいなものがあると見られる箇所に向けて歩いたそのとき、彼女は濡れた床に足を滑らせて、バランスを崩した。
きゃっ!と思わず悲鳴を上げたランカはそのまま転倒してしまった。
いてて...油断しちゃった。
気が付いたランカは自分の状況を確認する。
少し痛いけど...捻るとかそれ以上痛むところは...ない。
ふーよかった...特に怪我はなかっ...
と突然浴室の扉が開けられた。
そこには険しい顔をしている巨漢がいて、大きい声で「シーター!!!」と叫んだ。
そして、巨漢は目の前にいるランカの姿を目のあたりにすることになった...なってしまった。
今の状況にまだ追いつかないランカだったが、すぐに自分の今の姿勢が脳裏に浮かべた。
巻いたタオルは少し緩めて、少しだが日焼けしていない肌が露出して見える。
あと、この姿勢...っ!?!?
彼女はすぐ立ち上がり、できるだけ体を隠そうとして、浴室に入る前のときの比にならない顔が真っ赤になった。
...見られた...
やはり...恥ずかしいよ
うう...
その恥ずかしさを紛らわすかのように彼女は巨漢の目を見て、こう言った。
「あっち向いてと言ったじゃん!何で入ってきたの!」
しかし、相手からの返答がなかった。
よく見ると、巨漢の顔が固まっている。
まるで「おおおお」と叫びたいのにできないままで無言の絶句したかのような顔になった。
「あ...あの...」
さすがに気まずさが残っているが、相手の反応も気になるランカは一つのことを思い出した。
「...待って...
...私...心配...そのため...来た...然り?」とランカは巨漢に問いかけてみた。
そこで、巨漢は表情が固まったままで首を横に振った。
そうか...さっき悲鳴を上げたから、心配して見に来たといった方が筋が通る。
じゃなければ、そのガラス窓からは見られ放題だし...
でも、この人?は何もしなかった。
こういうところには信頼できる...
見られたのは見られてちょっと恥ずかしいけど...裸じゃなくて良かった...
「ごめんね。
ありがとう...感謝
私...大丈夫」
その言葉を聞いた巨漢はとりあえず強面の表情に戻り、浴室から出て行った。
しばらくして落ち着いたランカはお湯を止めて、お風呂に入ることをやめた。
着替えの服を着た彼女は浴室から出た。
「私...見る...大丈夫...」という相変わらずの古代言語の片言で伝えたが、相手には通じるみたいでランカの方に振り向いた。
ちょっと珍しく髪を結ばず、ストレートにしたままの彼女の姿を見た瞬間、魔王と呼ばれた巨漢は真っ赤になった。
顔だけではなく、体全体の肌色が正真正銘...真っ赤になってしまった。
様々な感情が昂ったせいなのか、突然魔王の目が白目になって、そのまままた固まった。
そして、急に何かが魔王の頭の上から現れた。
え...赤ちゃん...?
違う...普通の赤ちゃんじゃない...
あの黒い子だ!
鬼王神社で見たときの...黒い肌の赤ちゃんみたいな子だ。
確かにそのとき、この人?の体に入って...消えたはず。
と考えたランカの前にあの黒い赤ちゃんが何かを喋った。
さらに、普通に聞き取れる日本語だった...
「本当にシャイボーイだな…余の本体は。
あ...情けない!本当に世界に名前を轟かせたあの魔王なのか!やれやれだぜ...
お?久しぶりだ!あのとき以来だね、愛する我が君よ」
「え...愛する我が君って私?」
「其方以外にはいるまい...愛する我が君シーターよ。こんな風に話すのは初めてだから、ちょっと変な感じがするかもしれないが...全ては余の言葉であり、気持ちでもある。
要するにこのデカくて怖い人と同じなんだ。」
「あ、あ...そう...ごめんなさい。まだ状況が掴めないから、なんであなた...君がまた現れたの?」
「うん...余もよく分からないのだ。確かに石像から解放された余は本体のもとに戻って、心がまた一段階完全なる状態に近づけたと思ったけど...まだ不完全だからこそかこういう非常事態で余がまた分離された。」
「つまり...まさかさっきのことで...」
「たぶん本体の心の限界に達したからだな。
こう見えて案外ピュアのところがあるからな...笑えるぜ。
とにかく今はこいつの代わりに話しの相手になってやるよ。
日本語でも問題ない!どんな質問でもどうぞ!」
「なんか君...陽キャだな...」
二人の会話は思わない形で始まろうとしている。
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