眠り姫の夢(アゲイン②)

夢の世界の中


再びこの世界に入り込んだのか招かれたのか分からないが、香蓮カレンはまた会いたいと心の奥に願っていた人と出会えた...例え其れは夢の中だとしても。

目の前にいる人は...あのラーマーヤナの登場人物であるシーター妃であることを認めたかのようにカレンの彼女の呼び名を否定しなかった。

しかし、彼女が今している服装を見たカレンはさらに頭の混乱がおさまらなかった。

なぜ...巫女装束???

その上、変わった風景を改めて見渡したカレンもまた言葉が出ないままだった。

自分が目にしているのは...どこかで見た光景だったから。

「ここは...?」


境内の大きさは街の中にたまに見かけるぐらいで、本殿があって...鳥居もあって...

でも、違和感を感じた。

普通の神社に見えるけど、何かが欠けている。

なんだろう?

...人がいないの問題じゃない

これは夢だ...いてもいなくても関係ない。

これはシーターさんに関係するとすれば...と考えたらもっと訳分からなくなった。

もっと根本的な何かが...ない

いつも見かける神社とは何かが...ない

...

そこで、カレンは気づいた。

この神社...ただ古そうだと思ったら、違った。

よく見たら、ここには社務所もないし、あの...水で手とかを清めるところも水道が通っていると思わなかった。

ここ...現代の神社じゃない!

どういうことだ...


「ふふっ...あなたの困っている顔を見るのもなんだか面白いと感じてきたわ。」とここでカレンの思考に割り込んだ声が聞こえた。

「ここ...は...昔の神社ですよね?」とカレンは考えついた答えを口にしてみた。

「うん!正解!あなた、すごいわ...」と嬉しそうに微笑んだ女性を見て、カレンはさらに質問をした。

「あの服装って...あなたは神社の巫女でもなったのですか?」

「この衣装?これはあくまであなたの時代に合わせた巫女さんの服装にしただけなの。実際あのときの服装はこんなにきれいじゃなかったわ。」

「あなたが巫女さんって...どういうことですか?というか日本で!?...だって、物語ではあなたの最期は...」とカレンはここで言葉を止めた。

「その前にあなたが前にした質問について答えることにしましょう。」と静かに微笑んだシーターは遠くを見て、そのまま話し始めた。

「あなたの時代に起きていること...あなた自身が体験した、していることの全て...それはきっと私のが原因に違いないわ。

皆...運命の歯車に囚われている。

決して抗えないと思われる運命にね。

私は...本当の【自由】を手に入れて、それで全てが終わると思った...が、実際にはこんなことが起きてしまった。

因果応報...と言う言葉を使っていいかしら。結局私も運命に抗って逃れられたとしても、また別の運命に囚われる。」と言って、悲しそうな笑みを浮かべた。

「あ...でも、悲しまないで。生きていたときは後悔しないわ。ただ...今の状況では自分ができることが限られていることには少々不便だと感じただけ。」とここでシーターはカレンの手を取った。

「こうしてあなたに会えることも...そして、私の子供たちとあの人の話が聞けて、それはとても嬉しかった。彼と彼女にはこれから大変なことが待ち構えていると思うが、私も自分ができるだけやるつもり。」

「それはどういう...」

「今から私が言うことを覚えて欲しい...これはあなたの時代に起きたことと何か解決する方向に進めるかもしれない。でも...あなたはこの夢で聞いた全てを忘れるのよね...」と残念そうな苦笑いをしたシーターだが...カレンは何かを言おうとした。

「...れない...忘れない!絶対に!もう訳分からないことに振り回されて置いていかれるのはたくさんです!だから...教えてください...」

その言葉を聞いたシーターは安堵の笑みをして、カレンの目をちゃんと見た。

「では、お願いね...」

「はい!」

シーターの話しを聞いた直後、カレンは突然夢の世界から追い出されたかように目が覚めた。

意識がまだはっきりしないカレンはすぐさまにスマホを手に取って、メモアプリに何かを入力した。

忘れないうちに...でも、全部は...いや、できるだけ覚えていることをメモしないと!

と必死に夢で聞いたことを入力してから、ちょっとホッとして疲れた顔をしたまま、ベッドに仰向けた。

絶対また夢で会ったら...その続きを聞いてやるから

また...会えるよね

いや、今は弱気になる場合じゃないよ!

その辺は信じがたいことでも信じるんだ。


は...疲れた


まずはちゃんとシャワーを浴びて、ちゃんとした服で寝よう。

明日に備えて...もしかすると、もう今夜でまた彼女に会えるかもだし。

スマホはもう手に握ったままでもしようかな。

まずはシャワーだ。

...蘭華ランカ、明日カガワに着くかな...

と思ったカレンはベッドから起き上がり、シャワー室に歩いて行った。

その親友は目的地に着くことはなく、試練が待ち侘びていることには今の時間の彼女には知るはずもない。


ベッドの上に置いてあるスマホの画面にメモられた内容はこう書かれた。


...で...の...が...

...完全する

彼女に...


巫女


そして、最後に...

】という言葉が綴られた。

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