駱(恋愛理論)
某都内大学の理学部1年生で、物理学の専門を目指している。
彼は今日出会った女性、
確かに縁というのは不思議なことだと思わなくもないが、よく考えればその縁については説明できる。
まず、兄が勝手に登録されたマッチングアプリの自分のプロフィールの詳細の中では何らかの要因で彼女のプロフィールがすぐに表示されるようにアプリのアルゴリズムが仕組まれて、その上に僕はプロフィールより使われる名前の由来について気になるという思考を持っている。
その結果は気になることを証明するのに彼女と一度会うことを試みて、行動を取った。
専門的なことは分からないが、最近のアプリの学習システムはかなり進化して、使用者の検索や閲覧履歴から分析して、本人の好みの傾向があるものをおすすめで紹介するとかはよく聞いた話だ。
さらに、ただ普通の会話しただけなのに、まるで僕たちの会話を盗聴したかのように話題のキーワードがスマホの中のアプリに反映される。どこかの陰謀論はさておき、とてつもない技術の進化の速さで人間が追い抜かれるのも時間の問題かもしれない。
うん...そう考えたら、今回の縁は技術の進化のおかげだと言えるね。
と彼は自分が納得したように一人で頷いた。
摩訶不思議で不可解な出来事を子供の時から体験してきた彼にとっては、その出来事に対して、そこにはちゃんと科学的な背景や理由があると証明しないと気が進まない性が付いてしまった。
そう...このようによく一般の方に呼ばれる【偶然】みたいな出来事の裏には必ずいくつかの出来事が重なって、このような結果になった。
つまり、偶然なんて存在しない。それは【必然】的な出来事の重なりである。
どのような事象でも原因や要因によって発生し、結果が生じた。
いやゆる【因果】関係をよく究明すると、偶然と呼ばれる一見不思議な出来事も科学的に説明することができると僕が考えた。
だから、【運命】とか赤い糸で結ばれるとか不明確で曖昧な考え方に対して、僕は否定的な姿勢を今まで示してきた。
一番分かりやすく言うと、そんな科学的な証拠がないものには信じないということだ。
特に【恋愛】という感情は、今の科学でも完全に解明することができないほど不確定要素が多い。
今でも世界中で研究がされているこのテーマにも科学者になりたい自分にとっても興味深い。
だが、僕は正直今まで恋愛という感情を体感したことがない。
母からの愛情と触れたことはあるが、異性との恋愛感情を感じたことがない。
いいえ。
少し違う...
それに関心を持たないだけかもしれない。
それに消費する時間があれば、自分に興味があることに使った方は何倍も有意義だと思ったからだ。
特に子供からのあの課題が...今になっても解明への道を探し続けている。
そう...彼にはあまり他の人に説明できないある【苦労】があった。
生まれて自我が芽生えたときから現在に至るまで体験した摩訶不思議で不可解な出来事。
子供の時はそれが何なのか理解できなかったが、学校の理科との出逢いで自分の中にある仮説を立てた。
そして、それから彼は様々なことを勉強して、自分なりの研究をしてきた。
観察して、
分析して、
記録して、
検証して、
自分なりの試行錯誤を繰り返した。
そして、今彼が立証できることは以下のことである。
①僕自身一人では事象、いわゆる摩訶不思議で不可解な出来事が発生しない。
②ある特定の人物と一定の距離で同じ空間または場所にいると、必ず発生する。
③発生する事象は様々な分類ができる。
④全ての事象の共通点は被害するのは僕であること。他の人物には何の被害もなく、ただ僕だけ。
⑤受傷程度から見ると、耐えられる痛みから入院するほどの怪我までなったことがある。
例の一つをあげると、しっかり丈夫な鎖で繋がった近所の犬が突然その鎖が切れて、結果としてたまたま通りかかった僕と特定の人物の方に逃走してきて、僕に襲いかかり、噛まれた。
病院で手当てした後、僕はちゃんと鎖の状態を確認したが、切れた箇所に傷や錆などもなく、その強度の鎖ではあのサイズの犬は自力で破壊することは不可能。まるで見えない何者かの力で鎖を切ったかのような状態だった。そして、襲ってきた犬から僕を庇おうとした特定の人物だが、なぜかその犬は彼を避けて、完全に背後に隠れていた僕に襲った。犬に刺激を与えるような匂いをするものも持たず、まるで最初から僕を襲うように何者かに命令されたかのようだった。
他には数え切れないほどあるので、割愛するが、科学的に見ても不可解な点が多い出来事は僕と特定の人物が一緒に暮らしたときには日常茶飯事だった。
とりあえず今は大学生の寮で生活するので、そのような事象が起きないということ自体は完全に証明された。
今まで幾多の不可解な出来事を体験してきた彼だからこそ言えるのか...今彼が初めて体験した感情、【恋愛】に対して、かなり警戒心を抱いている。
恋というのはカオス理論にも相当するぐらい...解明するためには生涯を使っても終わらないかもしれない。
そのとき、彼のスマホに通知音が鳴った。
画面を見ると、誰からのメッセージが届いたようだ。
その相手は、今日会った香蓮からだった。
そういえば、連絡先を交換したな。
自然に別れるときに、聞かれた流れで交換しただけだが...
内容は...
今日の話が楽しかったこと。
結果として会って良かったということ。
そして、もしまたご縁があれば、ぜひまたお会いしたい。
...
このような場合、どのような返事をすれば良いだろう。
自分にとっては彼女は害を加えるような人間に見えない。
逆になぜか自分の苦労が理解できるように何かの共感できる部分があり、その辺では気が合う。
ただし、これは俗に言う恋愛なのか...分からない。
まあ、とりあえず特に問題がなければ...自分のこんな理解しにくい趣味にまた付き合いたいモノ好きの友人としては大歓迎だ。
そう思って、普通にまたご縁があれば、こちらもよろしくお願いしますと返事した。
少なくともそのとき恋愛というものがまだよく理解できない僕はそうするしかできなかった。
そして、
【縁】というものはいかに解明するにも説明するにも難しいものだとはっきり認識できるあの日までは...
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