昔話(ある百姓の話)
昔々...と言いながら、現代とは昔のようでそこまで昔ではない江戸時代。
ある村で、
これは、彼が村の代表として江戸から紀州の熊野へお参りに行ったときの話...
彼が道中で出逢ったのはなんと...【鬼】でした。
旅の途中、彼は山道で倒れた人間らしき者を見つけました。
彼は「どうかしましたか?」と尋ねると、その者が立ち上がって、何かを喋り出しました。
しかし、正左衛門にとっては相手が何を言っているか分からない言葉でした。
さらに、その者をよく見ると、衣装も顔立ちも今まで見てきた人たちとは全く見たことがない容姿でした。
身長も彼より遥かに超えて、顔立ちも強面のため、思わず彼の頭の中である話を思い出してしまった。
「あんた、まさか...【鬼】なのかい?」
無論、返事がありませんでした。
恐怖を感じた彼は震え始めました。
どうしよう...逃げないと...このままだと...
と思った瞬間、腹の虫の音が聞こえてきました。
それは鬼だと思われる者からでした...
そこで彼が何かを察しました。
ここで食べ物をあげないと、自分が餌食になるかもしれないことを。
そこで、彼は持っている食べ物の全てを鬼だと思われる者に捧げることにしました。
そうしたら、自分の命が助かると思っていたからです。
しかし、鬼だと思われる者は一部の食べ物しか食べおらず、残りの食べ物を触れようともしませんでした。
あれ?よく話で聞いた鬼と何かが違う...と彼は思い始めました。
野蛮で、狂暴で荒い性格とは聞いたが、全然想像したとは違いました。
知性があるけど、何を言っているか分かりません。
もしかして、これは都で話題になった蛮人?
海の向こう側から連れて来られた人間であって、訳あってここにたどり着いた。
ありえなくもないが、なんでここに?と彼が疑問を持ちました。
まあ...少なくとも同じ人間なら、まだなんとかなるじゃないかなと少し緊張感が下げました。
そして、食べ物を食べ終わった鬼だと思われる者は再び立ち上がり、彼を見つめました。
え?...足りないから、自分も食べられるのとまた思ってしまった。
そこで、鬼だと思われる者の表情は少し和らげて、何か言おうとしました。
しかし、案の定意味が分からないから、その内容が正左衛門に伝わりませんでした。
ここで長居すると、面倒なことになりそうだと思った彼はそこから立ち去ろうとしました。
止められると思ったが、意外に邪魔されずに道を進めることができた彼は一安心しました。
厄介なことになる前にここから立ち去ろう...と思った彼でしたが、
しばらく旅を続けると、彼の体の中に異変が現れた。
は...は...
急に息が苦しい...
胸が...痛い!
まさか!さっきの鬼の呪い!?と自分に襲ってきた謎の病をさっき遭った鬼みたいな存在に半信半疑を感じながら、どうしようもなく、道端で休むことにしました。
中々症状が治まらない彼はかなり辛い表情をしました。
しかし、山道の中には他の人と出逢った確率がかなり低い。
まして、熊野へのお参りには険しい道が前提条件の場所です。
もう...ここで諦めて、戻るかと思ってもかなり遅い。
ここでくたばることも家族に申し訳なさすぎる。
帰らないといけない場所がある...
どうしよう...と意識が朦朧しているとき、何者かが彼に近づけて、看病をしてくれました。
何かの薬を飲まされたみたいけど、その時の彼には抵抗できるほどの力もなく、ただ自分の身に知らない何者かにゆだねるしか出来ませんでした。
何日間が経って、彼が目覚めると、体調が回復したことを確認し、看病してくれた何者かがその辺にいないか見回すと、前に遭った強面の鬼だと思われる者がそこにいました。
最初には驚きのあまりに声を出してしまったが、よく状況を整理すると...この人?が自分の看病をしてくれたことを理解して、考えがまとまりました。
彼は鬼だと思われる者に対して、頭を下げて、お礼の言葉を述べました。
そして、顔を見上げると、鬼だと思われる者がかなり和らげた表情をして、彼をまた見つめました。
「何か...お礼...何かをしないと...」といった彼に鬼だと思われる者はある物を彼に渡しました。
それは...何かの破片のような形をしている硬い石のような物でした。
それを渡した後、鬼だと思われる者はそこから立ち去りました。
言葉も理解できないまま、何が伝えたいか分からないまま、ただ一方的に物を渡されました。
そこで...彼は立ち去ろうとした者に尋ねました。
「あんた!名前!名!ナム!何?」という問いかけに鬼だと思われる者は何かが察知したかのように...一言だけを残して、本当に姿を消しました。
「ヴィビーシャナ」という言葉を...
無事に熊野へのお参りができた正左衛門は、その何かの破片を村まで持って帰り、神社に奉納することにしました。その際、宮司さんにこう伝えた。
「私を助けてくれた鬼から渡された物です。私もこれが何なのかさっぱり分からないけど、大切なものだと思います。だから、神社に預かってもらうことにします。いつか...その鬼さんが取りに来るかもしれないし...なんてね。」と冗談のように彼が言った。
そして、その破片は神社の境内の片隅で丁寧に小さな神社で納められた。
その後、不思議なことにその神社が病気の平癒の御利益があると知られるようになり、現在に至ってもその目的のための参拝者が絶えずに神社に訪れました。
これはあの鬼からもらった破片の影響なのか...
それとも別の要因なのか...
そして、正左衛門が出逢ったのは果たして、本物の【鬼】なのか...
ただの外国の人間なのか...
今になっては誰にも知ることができません。
めでたし...めでた...し?
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