悲劇の妃の追憶~攫われた妃~
私...攫われたのか?
今の状況になった私は自分の人生を振り返った。
運命の人だと思われる方と出会った。
父上が私の結婚相手を探すためにピナカの儀を行った結果、あの聖弓を軽々と持ち上げる方が現れて、しかも力のあまりに聖弓まで折れてしまった顛末とは父上も予想外であろう。
ラーマ王子...コーサラ王国の第一王子であり、この方こそは私がこれから人生を共にするお方...
彼はとても心優しくて、紳士的で、勇敢かつ寛容でまさに一般の人とは違う王の器を持っている人だ。
これからこの方の側に支える未来の国王の妃として不自由のない人生を尽くし、そしてこの世から去る。
ただそれだけの使命を果たす人生だと思っていた。
それからの
それでも私は一緒に運命の人だと思われる夫と一緒にいればそれでよかったと思っていた。
外の世界を旅する機会ももらい、今まで不自由のない人生から何かが変わるかもしれないと少し期待していた。
しかし...
あの
あの鹿...黄金の鹿に興味を持たなければ、
別に獲りに行かなくてもいいのに...夫はどうしても私を元気つけようと義弟と共にあの鹿を追いかけた。
彼のあの優しさが、結果的に災いを招いてしまった形になってしまった。
彼と義弟の戻りを待っていたその時、あの人が私を攫いにやってきた。
気がづいたときはもうあの巨体の腕の中に、空を飛んでいる戦車の上に乗っていた。
どうなってしまうだろう、私?
この人は誰?そもそも人間?
と頭の中が謎だらけだった自分には後で答えを知ることになった。
夫の友である【大鳥】が私を助けようとして、私を攫った人と戦っていたそのとき、見てしまった。
あの姿...あの肌色...あの20本の腕...9の頭...
人間じゃない...
天界から冥界まで名を轟かせた
可哀想...それは自分に対する言葉ではなく、私を救おうとしてくれた大鳥に送る言葉だった。
私なんかのために羅刹の王との死闘へ挑んだ果てに翼が千切られ、地に落ちて、命を落とした。
ごめんなさい...ジャターユ
あなたは夫と交わした約束を守り、私を助けるために命まで犠牲にしてくれた。ありがとう。
しかし、謝罪の言葉も感謝の言葉も述べられないまま、私はその場から連れ去られた。
そして、今は羅刹の王国...ランカ島にいる。
私、これから羅刹に食われるか死より残酷なことをされてしまう。
それを思うと恐怖という気持ちが湧いてきたが、恐怖の中になぜか安堵の気持ちが芽生えた。
これでいい...と思ってしまう。
思い浮かべたのは最近まで共に人生を送った運命の人だと思われる夫だった。
ラーマ...あなたといる時は幸せだったよ。あなたは立派な王になれる。私が側にいなくても…
しかし、一つ言えることは私が求めていた自由とはあなたといることでは手に入れないみたい。
考えていたわ。
もしかすると、これで...真の自由になれるかもしれないわ。
死を受け入れることで…
とそのとき、私の前に現れたのは私をここに連れてきた羅刹の王だった。
あの巨体の前にして、死を覚悟した私はもう決意を固めた。
短かったが...不自由のない人生だったと自分に別れを告げて、
私をこの人生という牢屋から自由にしてください。できれば一思いに頼みます...と相手に言葉を放った。
しかし、相手が次に取った言動は思わぬ展開だった。
どうすれば良いだろうか?
羅刹の王に愛の告白をされた...
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