羅刹羅闍(魔王)

現在

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その名を聞いたとき、設楽したらラクがその名に込められた圧力まで感じた。

なんだ?名前を聞いただけなのに、胸の中がざわざわするこの違和感は...

羅刹ラクシャーサ...の王」と思わず口から出てしまった。それを聞いたおおとりはさらに説明を加え始めた。


「そう...羅刹の王。俗に言う魔物の王...略してだ。」

よくゲームとか漫画とかの物語で聞いたキーワードだ。そこまでゲームやサブカルチャーに詳しくないラクでも知っている。

魔王は物語のラスボス的な役割で、現れた勇者という選ばれし者と戦うという展開は王道の中の王道。

魔王は正義の反対側で【悪】で、討伐すべき...倒すべき存在。

魔王を倒すためには世界の平和を守るためとか力の均衡を保つためとか攫われた姫を取り戻すとか...様々な口実理由が作り上げられた。

悪者にされることがもはや運命と呼べるその魔王はラーマーヤナの物語にも存在するという事実がより理解できたラクだった。


「魔王というのはよく悪者にされましたが、羅刹の王もまたその類ですか?」と質問をしたラクに対して、答え出したのはオーナーのスリーヤだった。

「まあな...物語ではお姫様を攫って、幽閉したところは悪者がよくやることだから、その行動だけで見ると悪いと言っちゃ悪いが、それだけじゃないからな...」

「そうね。これまで話した通り、善と悪をはっきりに分けるのはかなり難しいことだ。所業が良くないと言っても何かしらの理由があるとしたら、罪が問われるときにどのような懲罰を課すべきか考えなければならない。しかし、それも簡単なことじゃない。結局それが自分の都合を天秤にかけて他人を裁くことになるから。」と鳳は追加で話した。そして、スリーヤはその話をさらに自分の考えを述べた。

「だな、例えばタイ版のラーマキアンの解釈で羅刹の王は結構純粋な悪として描かれたけど、それでも同胞の死を悲しんだりするから...先生が言う通り、行いだけで判断すべきではないということだ。」

「でも、結果として敗北する側が悪として語り継がれて、勝者の行いが正しいという証明になっては魔王という存在が永遠に悪者にされるではないでしょうか?自分の行いが善だと思っても、それが悪に変わってしまう。かなり理不尽の立場です。」とラクが感じたことを口にした。

「果たして...本当はそうなのかね。」答えたのは鳳だった。

「え?」ラクは不思議な目で鳳を見た。

「ヒンドゥー教のラーマーヤナではタイ版の物語とはすいぶん違う伝承がある。羅刹の王は傲慢で、神々まで戦を起こして挑んだという悪の象徴としては有名だが、その一方には学問に長けている博識であり、最も破壊神、シヴァ神の崇拝者でも知られている。さらに古代インドの弦楽器、ヴィーナの達人でもある。そのため、シヴァ神の信者の中に羅刹の王を祀る人がいる。実際には南アジアではシヴァ神と一緒に登場する絵画や彫刻が多数ある。どうだ?日本では偉人を神様として祀ることがよくあるから、羅刹の王を祀ることには珍しいことじゃないと思わないか?結局人のそれぞれの考え方だ。特に富や権力が欲しい人にとっては魔王を祀ることでかなりストレートに願いを叶えてくれそうだな。確かに日本でもどこかで鬼を祀る神社があるとかないとか…」と説明した鳳に対して、ラクは納得の様子になった。


「なるほど...まとめると、羅刹の王は悪という存在というより、傲慢な性格で自分の力を他人に認めさせたいから喧嘩を始めた一面を持ちながら、一方で博識に従順な信者でもある。だから、そのような経緯で祀る人がいたのですね。」と述べたラクの次にスリーヤはさらに説明を足した。

「あるところでは英雄として祀られるのに、別のところに行くと、もはや憎まれる邪神とか異端とか悪物になったというのはよくあるだ。まあ…最近の言葉にするとあれだ。ファンもアンチも存在するというやつ?それだけじゃない...物語の中ではお姫様を幽閉はしたが、お姫様に何もしないというところも怪しい。まあ...よくある話だと、お姫様はとっくに王の女にされたけど、それをしなかったというのはかなり考え深い理由がある。お姫様の勇敢かつ清廉潔白だけでは少し都合が良すぎるというところね。それはもしかすると、羅刹と人間の間にに芽生えた【愛】かもしれない。」

「愛...ですか。」とかなり唐突な解釈に戸惑ったラクだが、鳳は自分のメガネの位置を直してから

「では、その羅刹の王の物語はどうなるか知りたいか?」とラクに問いかけたが、ラクの答えは予想より違っていた。

「その前に...まずは冷めないうちに食事を済ませませんか?」とラクはまず目の前に片付けなければならないビリヤニを見て、そう言った。

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