羅刹羅闍(咆哮)
一体...何が起きているの?
目の前に起きていることはまるで修羅場だ。
25歳
某都内大学在学中 考古学研究室所属
趣味は南アジア神話・叙事詩の研究及び関連する遺跡巡り
好きな料理はインド・ネパール料理
ここで初めて修羅場を体験する。
修羅場はネットの知識によると、
インド神話や仏教の伝承などで
激しい闘争が行われている場所或いはそのような場所を連想させる状況を指す。日本では、特に原因が痴情のもつれである場合を指した例が多い。
痴情のもつれとは違うけど、今の状況を説明するにはこの言葉が一番合っていると蘭華は思っている。
まあ...修羅場ところか普通の喧嘩さえもあまり体験したことがないし、
実際はそこに修羅のような存在がいるだけで修羅場と呼べるとは何か違う気もしてきた。
まずはさっきまで体験したことを並べて説明しようかな。
突然に現れた巨大蛇のような生物から逃げるため、謎の部屋で会った謎の巨漢に抱きしめられ...抱えられて、岩盤を突き貫けて脱出した。しかし、突然の衝撃で地面に落下した。気づいたときには自分が巨漢の腕の中に抱えられたままだった。自分も巨漢も無事だと分かったときには少しホッとしたが、再び巨漢の姿を見ると、動転した気がまた驚きで包まれてしまった。そう...巨漢の肌の色は青色に変わったことに対して、私の中にある仮説が確信に変わると感じたからだ。
それから、巨漢は私を優しく地面に下ろしたそのとき、あの巨体の体が軽々にぶっ飛ばされた。それで私も驚いたが、その後にあの巨大蛇が姿を現した。高さは...4メートルぐらい体を伸ばして、長さは尻尾が見えないからはっきり言えないが、かなり長い体をしている。広がるフードから見ると、インドでよく知られるコブラ類だと見えたが、赤い目の周りのうろこには金色の鱗で目立っている。威嚇しているかとような鳴き声が大きく響いている。
もはや普通の蛇じゃないのは一目瞭然。特撮番組で登場する怪獣にしか見えない。
しかし、青色の肌をしている巨漢もいい...巨大蛇もいい...さっきからは自分が体験したことがないことばっかりで段々慣れてきたという気もしてきた。考えてみれば、最近の不思議で不可解なこともそうだった。
しかし、今の出来事にはさすがに危機感が乏しい私でも分かる。
このままだと、自分が危険な目に遭うということぐらい...
幸いなことにあの巨大蛇は巨漢のことしか目がないみたいから、今自分が逃げようと思ったらいける...と思ったが、やはり巨漢のことが気になる。
もし私の考えが正しければ、あの巨漢はここでくたばってしまうような存在じゃない。
だって、この人?は
と考えたら、ぶっ飛ばされた巨漢が起き上がり、巨大蛇がまた巨漢に襲いかった。
何回も巨大蛇があの強靭な体を嚙み砕き、そして巨漢を宙に投げ上げてからの地面に叩きつけた。単純に物理的なダメージを想像すると、自分も見て死ぬではないかと思った。
しかし、血を流しながら苦の表情を見せても巨漢はニヤリと歯を見せて笑うと、巨大蛇を素手で掴み、投げ飛ばした。
「うそ...」とふっと声が漏れてしまった。軽々と巨漢をぶっ飛ばした巨大蛇はすごかったが、逆にあの巨大蛇を素手で投げ飛ばした巨漢の力も想像がつかない。桁違いだ。
そして、その戦いを目の当たりにした自分は今の状況を修羅場だと思ってしまった経緯がこれである。
とそこで巨漢はこぶしを空に挙げて、何かの叫んだ。天まで響き渡る轟音のごとく、叫び声が遠くまで響き渡る。蘭華は耳を塞ぎながら、それでも聞こえた言葉を理解しようとした。「修羅...鎧?」と聞き取れた言葉を口にしたとき、空からまぶしい光がそのあたりを差した。まぶしさで直視ができないほどの光が消えると、蘭華は周りを確認しようとした。そして、自分の目の当たりにしたのは巨漢の服装がさっきとは違い、鎧を纏っている姿だった。
鎧は全身に纏うではなく、胸当てと肩当てが一体化した形の鎧と手甲&すね当てだけのシンプルなパーツだが、鎧自体は黄金色に輝いている。鎧の金属板に刻まれた模様はキレイな緑色と金色が重なって光る。そして、被っている黄金の兜の中には8つの顔が刻まれた。一見で同じ顔に見えたが、それぞれの顔は微妙に違う表情をしている。
さらに、もっと驚くのは鎧ではなく、18まで数える腕の形をした鎧が宙に浮いている。それぞれの腕が手にしているのは剣から斧...輪から矢...違う種類の武器。
そして、巨漢が手にしているのは日本でいうと琴に類似する弦楽器...あれは古代インドの弦楽器、【ヴィーナ】
鎧の巨漢が手にしているあのヴィーナを引き始めると、他の腕が命令を信号を受信したように一斉に動き出し、各腕から閃光が巨大蛇に向かって発射された。それと共に巨漢がまた叫びはじめた。
間違いない...これで決まりだ。
20の腕と9つの頭...頭は1つ欠けることも伝承の通り...
さらにあの鎧と武器、そして手にしているヴィーナとあの叫び声...
咆哮という意味の名を持つ羅刹の王...
「羅刹の王、ラーヴァナ」
この戦いを目撃している蘭華は確信した。
自分の目の前にいるには滅んだはずの羅刹の王であり、自分が探し求めた答えのカギを握るに違いないと。
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