理不尽と復讐心(転生:羅刹の王)

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「次のニュースです。スリランカの世界遺産、シギリヤロックでは一週間前突如崖の一部から穴ができたことについて地元の報道で分かりました。報道によると、突然大きな音が聞こえた係員は声の聞こえた方向に向けたその先に岩肌でできた穴を発見し、地元の警察に通報。できた穴は半径2メートルほどの大きさでかなりの深さまで空けられたということは後ほどの捜索で分かりました。調べによると原因は爆発ではなく、まるで何者かが中から打ち貫いたような痕跡だったという。また、当時そこに訪れた観光客が撮影した動画がネット上で話題になっています。こちらはその映像です...」というニュース番組はテレビの中に流れ続けている。


設楽したらラクおおとり教授とオーナーのスリーヤの会話がニュースの内容が入り込む余地がなく、続いている。

「今度はダイヤ石に変える力...ですか?」と設楽ラクはまた驚いた表情でオーナーのスリーヤを見つめた。

「そうだ...さらに指しただけの能力だから、触れる必要はない。」と説明を追加したスリーヤ。

それに対して、鳳は話を進めた。


「なるほど...これはギリシャ神話のミダス王の物語と似ているな...」と言ってからしばらく黙り込んでから、オーナーに向けた。

「話の途中ですみません。よく考えたらトムヤムクンだけは寂しいから、ライスを頼みたいが...」と別の話に突然変えた。

「ライス追加ですね。かしこまりました。おい!ライス追加一つ!」とオーナーはさすがに鳳の話と注文を見事にキャッチして、店内の厨房に注文を繰り返して伝えた。

「はい~ライス一つ!」と厨房の中にいる店員の返事を聞くと、また元の話に戻した。

「で?さっき言っていたミダス王の話は何だい?」と鳳に問いかけた。

「そうですね...神様が願いを一つ叶えてくれる王様は自分に触れたもの全てを黄金に変える力を与えられた話です。最初にはその力に喜んだ王だったが、全てというのはもちろん食べ物も飲み物もです。果てに自分の娘を黄金の彫像に変えてしまったとも言われて、王は自分の願った力に後悔し、呪ったそうです。」と説明を加えた鳳だった。

「確かに...少し似ているね。しかし、復讐のためにじゃなくて、富を得るためからな...少し違うと思うが...」とスリーヤは自分の考えを述べた。

「そうですね...ただ違う伝承でも黄金やダイヤ石に変える力という類似するところには興味深いですね。君はどう思う、設楽くん?」と鳳は話を返してから、別の相手に話題を振った。しかし、設楽ラクから反応がなかった。何かを考え込んでいる途中のようだ。


「灰...ダイヤ石...それに変える力...」と自分にしか聞こえないようなボソッとした声でつぶやいていた。それを見たスリーヤは眉間にしわを寄せた。

「おい、ラク...大丈夫か?何こそこそ言っているんだ。聞こえないぞ。」とスリーヤの問いかけには夢中になったラクまで届かなかった。

「これは...もしかして!【炭化】じゃないですか?」とラクが突然自分の考えを口にした。

「お...おお。びっくりした...急にどうしたんだ?」スリーヤは突然に反応したラクに対して、かなり驚いた。

「これは炭化という現象です。通常、木材などの素材を加熱すると燃焼が起こり、炭素は酸素と結合して二酸化炭素になりますけど、酸素を遮断した状態で加熱すると、固体の炭素が多く残るという現象です。昔から炭を造るときによく用いられる手法です。植物組織も動物組織も炭化しますので、さらに炭素を高熱高圧で加えると、ダイヤモンドが出来上がります。これで灰鬼の能力を科学的に説明がつきます!」とラクは自分の仮説を説明した。しかし、鳳もスリーヤもその話についていけず、ポカーンという顔をした。

「えーと...設楽くん。灰鬼の力を現代の科学で説明するつもりなのかな?」と鳳はラクに確かめて質問した。

「はい。そうですけど...」とただ一言で返事したラク。そこでスリーヤは何か気づいた様子でラクに問いかけてみた。

「ラク...もしかして、理学部に入る理由も前に言っていた不思議な出来事を究明することが目的なのか?」

「はい。そうですけど...」とさっきと変わらない返事で鳳もスリーヤもまたポカーンという顔をした。

「設楽くん...会ったときに違う学部だと言ったのは分かったが、君は理学部なのか?」と鳳はもう一度確かめるために聞いたが、同じ返事が返ってきた。

「はい。そうですけど...」

「ラク...その返事はやめてくれ。もうロボットみたいになっているぞ。」とスリーヤの注意を素直に聞き入れたラクは顔色を変えずに話を続けた。

「失礼しました...分かりました。確かに僕が理学部に入る理由はもちろん、元々は科学に興味があるのですが、それとまた別の理由があります。それは僕が子供のときから体験した不思議や不可解な出来事を少しでも究明に近づけるではないかと考えて、科学の道を選びました。僕...理屈に合わない、科学的に証明できないことにはあまり我慢できないです。特に今でもまだ究明できない自分の体験したことには...例えば、特定な人物の近くにいると、一般で言う不幸な出来事に遭遇します。大した不幸ではありませんが、逆に毎回毎回遭わされるとムカつくんです。なぜそれが起きたのか説明ができないことに対してですが。」とラクが自分のこと、自分の科学に対する考え...そして、自分が体験したことに対する思いを鳳に話した。

「そういうことか...だから、私の講義に参加したのか。君は科学的に証明できないことを神秘的な側面から答えを求めようとした...ということだね」鳳はラクが求めていることを少し理解できるようになった。

そこから次の話に行こうとしたときに先ほど追加注文のライスが到着した。


「はい~ライスでス~」と普通の白いライスが運んできた。そして、店員さんはオーナーのスリーヤに話かけた。

「ね~オーナー、さっきのニュースで話題になった動画があるじゃナイ?これはその動画でス。」と突然スマホを見せられて、まだ状況がつかめなかったスリーヤは「は?なんの話?」と店員に尋ねた。

「これですヨ...シギリヤロックで穴ができたニュース...話題になった動画があると聞いて調べましたが、すごいですヨ!人が飛んでいマス!」と少し興奮した店員が見せたスマホを見ることにしたスリーヤ。

その動画はたまたまシギリヤロックをビデオで撮影していたに何かが映ったようだ。動画の中に流れる音声をよく聞くと、このような内容になる。


「おお...キレイだな...めっちゃ大きいな...」と普通な感想を述べた撮影者だけだったが、次の瞬間...ドン!という音がして、「え?何?爆発?...おい!何かが飛んでいるよ!人?」という内容だった。動画の中にとらえたのは人影がシギリヤロックの崖から早いスピードで飛んだだけだったが、これはネット上で宇宙人?スーパー〇ン?という説で盛り上がっているようだ。

これを見せた店員の反応はともかく、これを見たスリーヤの目が丸くなって、表情が固まった。


まさか...そんなはず...ない...


そのような表情をしたスリーヤにラクが少し心配の気持ちで声をかけた。

「どうかしましたか?オーナー」と聞かれたスリーヤは気を取り直して、ラクの方を見た。

「いや...なんでもない。気にしないで。」という回答に深掘りするつもりがないラクは前の話題に戻った。」

「では、さっきの話を続けてくれますか?ダイヤ石に変える力を手に入れた羅刹ラクシャーサはその後どうなったかと。」

「あ...鳳先生が話した物語とあまり変わらないよ。天人デーヴァたちを次々とダイヤ石に変えてしまった羅刹、タイではノントックというけど...それでヴィシュヌ神が美しい女性の化身になって、一緒に踊りをするところは同じだが、ただポーズは頭を触るではなく、足を指すというところで自分の足をダイヤ石に変えてしまったんだ。そこでヴィシュヌ神は正体を明かした。自分が騙されたと分かったノントックは守護神に訴えかけた。4つの腕と聖なる武器を持つヴィシュヌ神に対して、自分はただ2腕で無力の存在であることが理不尽だと言った。そこで、ヴィシュヌ神は一つの誓約を交わした。ノントックが次に20の腕と10の頭を持ち、鋭くて輝いている牙と山のような巨人の体を持つ羅刹の王として生まれ変わる。一方、自分はアヴァターラ化身として2腕のか弱い人間に生まれ変わり、またノントックの転生と対峙すると約束して、息の根を止めたという。」

「これで復讐心に燃えた羅刹の物語、ラーマーヤナのゼロ話が閉幕して...そして、世界の新たなる脅威の誕生、ラーマーヤナの物語の開幕だ。」と鳳は最後に話をまとめた。

「なるほど...そのノントックと灰鬼が同一人物だとすると、この関係性がない二つの物語が結びついたということですね。それで、ヴィシュヌ神はラーマ王子として転生して、復讐が果たせずに無念な死を迎えた羅刹は羅刹の王として生まれ変わるという。」とラクが自分が聞いた話を整理して、結末を述べた。

「そう...のちにこの二つの登場人物はラーマーヤナの中心となる。片方はコーサラ王国の第一王子、ラーマ王子で...もう一方は羅刹の王国、ランカ島を治める羅刹の王。その名は...」と鳳はゆっくりその名を口にした。


羅刹羅闍ラクシャーサラージャ...

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