羅刹羅闍の追憶~夢~

目が覚めたばかりせいか

どうやら...意識がまだハッキリしないようだ。

朦朧としている...

記憶も破片的にバラバラになって、鮮明な記憶に戻るまでは時間がかかりそうだ。

それとも永遠に戻らないだろうか...


しかし...

一つの夢を見たということは確かに覚えた。

永い眠りのような眠りの中に夢を見た気がする。


何度も何度も何度も...同じ夢を見た。


しかし、夢だと思えない...

...



...


夢?


違う...


まるでを覗いたみたいだ。


まずは【声】が聞こえた。

ここではないどこかで...余ではない別の姿をしているがしゃべっていた。そして、相手もいたが、相手は何者か霧がかかったようにうまく姿がはっきり見えなかった。


声だけが聞き取れた。

これは...この余ではない何者かと何者か分からない相手の会話のやりとりのようだ。


「私を騙してくれましたね!」と怒りで溢れ出そうな声が聞こえた。

「汝が犯してきた罪を償うべき報いだ。」と一方に相手は冷酷と思うほど無情の声で淡々と言葉を述べた。

「は!あなた様は私たちのような下等な存在の気持ちなんて理解できるわけがない!いつもそうだ...天人族デーヴァたちは私たち...阿修羅も羅刹も悪者扱いされた魔族に対して、昔から変わらずにそうやって、犯した罪を償ってもらうという口実を出ちあげるだけは達者ですね。私たちを容赦なく殺す理由の正当化にするために!先祖から伝わった話でもよく聞きましたよ。あなた様...様の機転で【アムリタ】を阿修羅族から奪ったんじゃないか。」

「それは汝たちは私の化身の魅力に逆らえないという事実だけだ。」

「あ...そうですか...そうですか!私たちは悪いでございました!獣のように本能のままに動いてしまった私たちだけが悪い。その企みで私たちをたぶらかして、分け合えるはずの【アムリタ】を全部天人たちに独占させるため、あなた様がやったことは全て善であり、正義である!私たちは迫害され、地位も居場所も失い、ずっと見下された!何が機転だ!これはまるで詐欺ではないか!」怒りで震えたその声は怒りを抑えきれずに次々と相手に言葉を放った。


「私たちは何をしたっていうんだ!?生まれつきの強靭な身体と剛力を持つだけど、不死ではない。あなた様みたいな不死の存在に比べて、私たちにはどこかに害があるっていうんだ!何がを保つんだ!あまりにもではないか!」と放った言葉を受け止めた相手は声色一つも変えずにその怒り溢れた言葉に対して、問いかけるように返事した。


「理不尽...それは汝が今感じる気持ちなのか?この世の出来事は全て理由があり、必ず意味があります。」と淡々に述べた言葉に込めた説得力は...足りないようだ。


「意味?私たちが虐げられたのも意味があるというのか!!!」

やはり火に油を注ぐように怒りが益々湧いてくるが、それでも相手は次に述べ続けた。


「我は神であると同時にこの宇宙世界の一つの存在である。そして、我の使命はこの世界を守ることである。そのために取った行動は全ての存在を幸福にすることは不可能だが、必ず意味がある...今の汝が理解できなくても未来の汝ならその意味が分かるかもしれない。」

...しばらく沈黙が続くと、相手は予想外の話を口にした。


「そう...どうだ?ここで我とをしないか?」

「取引...だと?ふさげるな!私をこの様にして何が取引だ!四つの腕と聖なる武器を持ち、さらに不死の存在のあなた様には下等で無力な私に何を求める!」

「...汝は我が四つの腕を持つことと不死であることに気に食わないようだから、ここで取引を申し出たところだ。では、こうしよう...ここで我は汝の。しかし、汝はまた生まれ変わり、我とまた巡り合うことになる。その時、汝は20の腕と10の頭を持ち、鋭くて輝いている牙と山のような巨人の体を持つ。そして、羅刹の王という地位を手に入れる。一方、我はアヴァターラ化身として下界のか弱い人間に生まれ変わり、汝とまた対峙する。どうだい?これで少し公平な戦いになると思わないか?」

「そんなのも公平とは言えないよ!第一、あなた様はそうするまでの理由は理解できない。何が狙いなんだ?」やはり完全に相手の取引内容を信用するができないし、目的も理解できないが、それでも何を企んでいるか知りたいために問いかけた。

「これはいずれ未来の汝には理解できるはずです...運命を抗おうとした汝にはぜひ来世でも運命を抗って、我等のところまでたどり着いてみなさい。そのときには今の汝の存在のも見つかるはずです。」


やはり意味が分からない。

しかし、ここでどうせ死ぬなら相手の取引とやらに応じて、来世でまた考えるか...

私たちがこの世界に


「そうですかい...分かりましたよ。では、また来世でお会いしましょう...一撃で頼みますよ、


何者かの顔に皮肉な笑みが浮かべて、

そして、夢から覚めた...その繰り返し


これは...夢なんかじゃない

しかし、これは余の記憶ではない...

守護神...相手はそう呼ばれた。

その守護神は余が知っている守護神と同じであれば、

そしてあの記憶の内容、あの取引の話を真に受けるとしたら、

今考えられる答えは一つだ...


「ラーマ」

愛する我が君を余から奪い返そうとした...余の宿敵...倒すべき存在


それは誠であれば、やはり余はまた負けてしまったのか?

では、なぜ余はまだ生きている?

なぜ守護神様の化身は余を生かした?


「必ず意味がある...今の汝が理解できなくても未来の汝ならその意味が分かるかもしれない。」という言葉が頭の中に蘇った。


意味...

今では分からない

今はこの暗闇の牢獄から出ることだけを...

まずはこの矢を何とかしないと...

それから考えよう...


余はまだこの世界に存在する

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