理不尽と復讐心(阿修羅⇔アスラ)

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「次のニュースです。宮崎県西部の高千穂町で謎の巨大生物が目撃されました。目撃者によりますと、豪雨の中に外出先から帰宅中、巨大蛇のような生物が道路を横に渡った話や近所の池を夜の中に通ったときに突然大きな蛇が水中から現れた情報など目撃情報が多数あり、警察は生物学者の協力を得ながら捜査を進めています。今はまだ被害者の情報がありません...」というのニュースがテレビの中に流れていた。


「はい。マサラチャイとラッシーでス~」と先に飲み物が二人の男性のもとに運ばれた。

「ありがとう、お兄さんダイ。」と設楽ラクが自分の親戚にお礼を言った。

「あとは料理が来るので、少々お待ちくださいネ。」と言って、親戚の店員はまた厨房に戻った。

「すみません、先生。では、お続きをどうぞ。」

そして、鳳先生と設楽ラクの会話が再開した。


「君は阿修羅という言葉を聞いたことがあるかな?阿修羅は漢字を当てた単語で、アスラというヒンドゥー教の魔族という意味をする。もともとアスラは講義で話した天界で神様の眷属として存在したが、時代の流れで天人族デーヴァとの敵対者、つまり悪役にされたのです。これもあのが分岐点ではないかと思われます。」

「あの出来事...ですか?」

「そう...飲む者に不死を与えると言われる霊薬【アムリタ】にまつわる出来事です。天地創造の時に遡り、天人デーヴァたちはまだ不死の存在ではなく、さらにある呪いで力も失い、パワーバランス的にはアスラより天人たちの方が不利になっていました。そこでヴィシュヌ神の助言でアムリタを作り出すということになったが、それを作るための作業は天人だけでは無理だったので、アスラにもできたアムリタを分け合うという条件で協力を得た作業が開始できました。」

「不死...ですか...」とその言葉を聞いたラクは驚きの表情で鳳を見た。

「不老不死は世界中、それにまつわる神話や伝承...よく聞いたものなら西洋の錬金術でできた賢者の石やエリクサー、中国の甘露、日本なら人魚の肉などが大陸を横断して様々あります。それを求めて探した人々も過去から今でも探し続けている...人間の永遠のテーマだと思います。」と話した鳳は自分が手に取ったマサラチャイを見て、話を続けた。


「例えば、私が飲んでいるこのお茶も、君が飲んでいるそのラッシーも様々な加工された材料を入れて、作られましたね。アムリタを作り出すこともそうでしたが、ただ使われる材料と製法は私たちの飲み物にはあまりにも想像を絶する作り方でした。様々な素材を乳海という海に入れたヴィシュヌ神は第二の化身アヴァターラ、巨大亀となって海に入り、甲羅の上に山を載せました。その山に竜王ヴァースキ...まあ、巨大蛇だと想像してください。ヴァースキを山に絡ませて、天人たちは尻尾を持ち、アスラは頭を持って、お互い引っ張り合うことで山を回転させて海をかき混ぜた。いわゆるアムリタを作るための超巨大ミキサーなんです。この作業は千年続いてようやくアムリタができたと言われます。もちろんアスラはアムリタを要求したが、天人との対話で結論が決められずに争いになりました。アスラ側は一度手にしたが、ヴィシュヌ神の機転によって、アムリタは天人のものとなって、天人たちは不死の存在となったという話が語り継がれます。しかし...私は別に聞いた解釈もあります。」

「と言いますと?」ラクは興味ありそうな目で鳳の話の続きを聞こうとした。


「アスラたちは巨大蛇の頭の方を持つという話をしましたね。その作業中、引っ張られ続けて、苦しんだ大蛇が猛毒を吐き出しました。本来の物語によると、その猛毒はシヴァ神が全て飲み干したおかげで事なきで済んだとなりますが、もしこの解釈ではなく猛毒が吐き出されるとしたら、その猛毒を食らうのは何者かは言うまでもないでしょう。そう...アスラたちは猛毒を食らって、次々に倒れてしまい、残る者も力が弱まり、到底天人と戦える状態ではありません。そのとき、アムリタを手に入れた天人たちはアムリタを飲み、不死の存在となりました。不死ではないアスラにとってはパワーバランスは逆転したため、仕方もなく敗北を認めざるを得ません。そのときから、天界の中の天人とアスラの間に上下関係が生じて、天人と敵対するアスラも制圧され...抑制され...次第に悪者扱いとされました。」

「なるほど...だから、アスラは鬼みたいに悪者扱いされたのですね。」とラクが聞いた話で納得しようになった。


「よくあることです。歴史は勝者が書くものであると同様に、権力を持つ者の方は勝者又は正義となり、敗者は悪者扱いされるのはもう事例としては数え切れないほどでしょう。私も少し専門外ですが、阿修羅は仏教の中では守護神として扱われています。輪廻転生の中では一つの世界である修羅の世界、よく聞いたことがある修羅の道もこの世界を指します。その世界は戦いが終わりなく続ける世界らしいですので、居心地がいいとは言い難いですが...まあ、要するにアスラも阿修羅も善とか悪とかではなく世界の一つの存在です。無論、天人も同じです。さっきの話を聞くと、天人もアスラも自分側の存亡のために戦って、そのパワーバランスを保つために神様が介入することがよくある話です。どちらかというと天人の側に付くことが珍しくないので、やはり理不尽を感じてしまいますね。」と話を続けた鳳だが、ここで料理が到着したようだ。


「はい~モモと生春巻きになりマス~」

野菜の彩る生春巻きと小籠包の形に近い蒸し餃子のモモがテーブルに運ばれた。二人は手を合わせていただきますと言ってから、春巻きとモモを口に運んだ。

「うん!このモモは美味しい。餃子とは違う食感とスパイスの風味はやはり中華とインドのハイブリッドの味という感じですね。」

「気に入ってよかったです。僕にとってこれは子供の頃から食べたので、いつもの家庭の味の感じです。」

「そうか...」鳳は先ほどラクと親戚とのやりとりから見て、この料理と彼の父親が何かしらの関係があると感じたが、それについてここで聞くタイミングではないと感じた鳳はラクに向けて話を続けた。


「あとはメインも楽しみにしているよ。」

「はい!ところで先ほどお話しした阿修羅の話と灰の阿修羅はどのような関係があるますか?」と聞かれた鳳はマサラチャイを口にした後、次に述べた。

「うん...関係がないというわけではないが、まずは天界のパワーバランスを先に説明した方がこれからの話がもっと理解できると思ってね。講義のときも言ったようにバズマスラ灰の阿修羅はシヴァ神の下僕で、天人から理不尽なことをされたことで復讐という感情が芽生えたことは話したね。」

「はい。」

「そこで...復讐を企んだ灰の阿修羅...少し言いにくいし、ここで灰鬼ハイキと呼ぶことにしよう。灰鬼はシヴァ神のもとに謁見して、一つの力を自分に与えるようにお願いした。ずっと忠実に尽くした灰鬼に対して、シヴァ神はその願いを叶えて、灰鬼に一つの力を授けました。その力は触れるものをでした。」

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