羅刹の王国(ランカ島)
某大学の食堂の中、2人の女子の会話はまだ続いている。
「え?」と小さな驚きの声を漏らしてしまったのは
「スリランカ?...ランカ島?」という蘭華の答えから出たキーワードをうまく脳内で処理できていない|香蓮。蘭華とは違い、香蓮は南アジアに関する知識は一般の知識プラス蘭華に吹き込まれた知識しかないため、キーワードで分かることと分からないことを比較すると、断然...分からないことの方が多くある。
たぶん他の人に同じキーワードを話しても、あ...分かる分かる~という反応をする人はほぼいないだろう。残念ながら、これは蘭華と香蓮の一番合わない話題である。
と...その香蓮の疑問が込めた言葉を完全無視して、逆にそれが分からない人に自分が知っていることを教えることが大好きな癖を持つ蘭華であり、だからこそまだこの二人の関係性が絶妙に保てる要因とも言えるだろう。香蓮のハテナが付いている顔に蘭華はさらに説明を追加した。
「あ!ランカ島はね!『ラーマーヤナ』の物語に存在する島で、
「あ...分かった...ご説明ど~も。頭を整理するから、あんたは一回落ち着いてくれる?」
ここで怒ったり話を聞かなかったりするのはしない香蓮もさすがに対処法は分かって、付き合いが長い証だなとも見える。
「つまり...あの...ラクシャーサ?という魔物たちが住んでいるとされた島は今のスリランカということだよね?日本でいうと鬼ヶ島みたいに?」
「そうそう!さすが香蓮ちゃんは話について行くのが早いね~」
誰のせいだと思っているのよと心の中に思い止め、相手の顔を見ながらまたため息をついた香蓮だった。
「...で?じゃ、なんで今回の目的地はあの鬼ヶ島みたいなところなのよ。前の目的地は確かに、王子様と姫様が結婚した場所でしょう?もっと興味がありそうな別の場所は他にあるじゃない?」という香蓮の質問は起爆剤みたいに蘭華の心の火が付いたみたいに次々と説明した。
「ふふん...いい質問だよ、香蓮ちゃん!私が思うには今のスリランカ、つまりランカ島の中にはまだ究明されていない謎はあるんだよ...いいかい?羅刹たちが住んでいるとされた島ということは桃太郎伝説みたいに金銀財宝が眠っているかもしれないし、もっと言うと...そこに羅刹という異世界とかでいうと【亜人】がいたとすれば、今はどうしたのかという謎もある。例えば、人間の世界に溶け込んで、その子孫はまだそこにいたりして...こういう話ってロマンがあるよね~香蓮ちゃんもそう思わない?」という説明に対して、何かが悟ったような顔で香蓮は蘭華を見て、次に問いかけた。
「...まさかだと思うけど、
「さすが香蓮ちゃん!やはり私の考えが読めたね~いや...その通りだよ!これで何かのうってつけの研究テーマが手にいれば...と?」とまだ話の途中の蘭華だったが、先に香蓮の忍耐度メーターが頂点に達してしまったようで、怖い顔で蘭華のほっぺを両手でつねた。
「あ・ん・た...ね...今までは何で卒業できていないのか忘れたの?あんたはいろんな旅をして、手にした成果は神話とか物語とかと関係するから、仮説が検証できる決定的な証拠とかはないから...論文にしては向いていないからよ。あまり残されていない時間にまたヒントを手に入れても研究テーマとしては難しいわよ!分かった?」
「え~痛いよ~香蓮ちゃん...でも...」
「でもじゃないわよ!ここはまず現実を見て、大学を卒業することは最優先だと考えるべきよ。研究とか旅行とかはまず社会人になってから、それが実現できる財力と職が確保できないとそれもそれできついよ。あんたのことが心配なんだから...」と怒りが悲しみに変化し、泣きそうな顔になっている香蓮。
「今のままだと...大変なことになる前に...友達として忠告しておきたいの。」
香蓮は単に怒ったわけじゃなく、目の前にいる友達が心配しているからこそ怒っている。
自分も大学を卒業して普通の会社で就職して、社会人4年目だが...やはり経済的な理由で不自由になることは大学の時に思ったことと違って、無尽蔵だと思った時間も限りがあると知り、明るく見える未来もまた思った通りに上手くいかなかった。
だからこそ、友達には分かってほしい...大学を門出した後の大変さを...
その香蓮に対して、蘭華は優しく微笑んでいた。
「ありがとうね...香蓮ちゃん。私のことをいろいろ心配してくれて...」
その言葉に香蓮の涙線がさらに出崩壊しそうだった...と思ったそのとき
「でも大丈夫!今回はかなり自信があるから、必ず論文の研究テーマを持って帰るから!」と言って、無邪気なスマイルを香蓮に送った。それを見た香蓮は...もう話す言葉が残らないようにまたため息をついて、呆れた顔で蘭華を見つめた。
「は...分かった。もう...何も言わないから、気を付けて帰ってきて。」
「うん!」という一言の返事は、やはり
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