悲劇の妃の追憶~自由不自由~
私は...【自由】というものは知らなかった。
決して...誰かの下僕になったり牢屋に囚われたりして、自由が奪われたわけではない。
生まれたときから...【自由】はどういうものか分からなかっただけだ。
父上と母上からたくさんの愛情で育てていただいて、何の【不自由】のない人生で今に至ったのですが...不自由は何なのか分かったのに、それでも【自由】は何なのか分からなかった。
この広い宮殿の中に歩き回ることが許されることが自由だと何方かの定義で言われたら、それは自由だと認識することで良い。
しかし...宮殿の外で近衛隊が同行することで街を歩き回ることが許されることが自由だと何方かの定義で言われたら、私はそれが【自由】とは違うと思う。
その思いを胸の中にとどめて、彼女の美しくて虚しい眼差しは太陽の光が照らした宮殿の中庭を見つめながらふっと思った。
本当の【自由】はなんだろう...
もしここではない場所で私は
いつかはどこかの国の王族の殿方と縁を結ばれて、愛されるかどうかはまた分からないが、今とあまり変わらない【不自由】のない人生を過ごし、いつか死んでゆく...そのような一生は【自由】だと呼ぶにはあまりにもほど遠いではないでしょうか。
本当の【自由】を手にするためにはどのような
彼女はふっとため息をついて、しばらく中庭を眺めていたそのときに誰かに呼ばれた気がした。
「...様」
「...様!」
「姫様!ここにおられましたか。お探しいたしましたよ。」と誰かの声が背後から聞こえてきた。
彼女は振り返ると、そこには一人の侍女が立っていた。
「何があったの?」と侍女の様子が少し慌ただしい感が完全に隠し切れないことから察して彼女は侍女に問いかけた。
「お忘れですか?今日はコーサラ国の王子の方々がこちらに来られて、これから儀式が行われる予定です。王子の方々はすでに到着しておりまして...今から「
ピナカの儀...
そうか、シヴァ神の聖弓であり、持ち上げることさえも不可能だと言われるあの弓に挑戦し、それが可能にする人は私の...未来の旦那様になる...その決まりだった。
父上も中々悪趣味でいらっしゃる。そこまで娘を譲りたくないと言っても、シヴァ神の聖弓を利用して儀式まで行うなんて...
でもこの儀式には私も見届けなければならないでしょうね。これからの「不自由」のない人生を共にするかもしれない相手はどの殿方なのか...しっかり見届ける義務があるもの。
「分かったわ。今から行くから、支度の準備をしてくれないかしら?」
「はい。かしこまりました、姫様。」と侍女が頭を下げ、その場から立ち去ろうとしたときに姫様の声で止められた。
「王子たち...のお名前は聞いたのかしら?」と姫様が問いかけた。
「はい...コーサラ国の第一王子、ラーマ王子と第三王子、ラクシュマナ王子でございます。『シーター姫様』...」
ラーマ...
名前を聞いたその瞬間、私のこれからの人生が思わぬ展開に転がってしまうことはただの予感でしかなかった。
そう...本当の【自由】を手にすることはこれからだった...
あなたがいれば...
あなたと一緒ならきっと...
きっと...
きっと...
真の【自由】を...
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