第9話

 

 「ふわぁ〜……もう朝か。 やはり、ベットじゃないと寝た気がしないのぉ。 んっ!?」


 朝日で目を覚ましたティアは、あくびをしながら大きく手を広げていたが、ある事に気づいた。

 森の木漏れ日の中に、金色の目をしたレオが綺麗な水の球体が複数周りを浮いていた。


 「……ティアおはよう」


 「えっ、あっ、おはよう……じゃないのじゃ! レオよ……それは……」


 涼しげな顔しながら朝の挨拶をしてきたレオに、ティアは驚き隠せなかった。


 「あぁ……これか。 納得いくのが一個できるようになったから、何個できるか試してるんだよ」


 「……いくつまで出せるのだ?」


 「今8個だけど、もうちょい時間かければ10個以上いけるんじゃないかな?」


 「うむ……見事なものじゃ」


 (熟練者でも八つを維持するのは難しいのじゃが、時間をかければまだいけると……面白いのぉ。 ん? 時間をかければといったかの?)


 ティアはレオの返答に気になる言葉があった。


 「レオよ。 時間をかければということは、時間をかけず瞬時にいくつか出せるということかの?」


 「そうだよ。 見てろよ」


 ティアは目を輝かせながらレオを見ていた。

 レオは周りに浮いていた魔法を消し、息を整え、瞬時に五つの綺麗な水の球体を出して見せた。


 「これはこれは驚きじゃ! 五つも出して見せるとわ! 瞬時にという事は無詠唱が前提の話で、熟練者でも三つくらいがやっとじゃろ。 まぁレオが無詠唱だというのはわかっていたが、五つも出し、しかも魔法初めて一日とは……化け物じゃな」


 「あはは 化け物か。 楽しいから化け物でもいいや」


 レオはティアの言葉を気にもとめず、魔法の球体を頭の上に浮かばし、円を描くように動かしたりして遊んでいた。


 「ぶはぁっ! レオよ、魔法を自在に動かせるのか!?」


 「えっ? 魔法出して、浮いてるんだから動かせるだろ?」


 「はぁ……もう昨日から色々驚かされて疲れたわ……。 レオがやっているのは、マジックコントロールという技じゃ。 言葉の通り、魔法を意のままに操ることなのだが、一日や二日でできることではない」


 「なんていうか、気を動かすのと似てるんだよな」


 今までやっている事が規格外だという事をティアが説明していてもレオは自覚がなく、その自覚の無さにティアは呆れていた。


 「……気を動かすか……気操術じゃったかな。 まぁ良い……レオよ、その三つの球体を一つはレオの正面にある岩に当て、もう二つは上空で相殺してみせよ」


 「夜は起こしちゃ悪いと思って試さなかったんだよな」


 レオは肩幅に立ち、静かに目を閉じ、集中しイメージ始めた。


 (……まずは正面の岩に当ててから上に飛ばしてぶつけ合わせるか……)


 レオは静かに目を開けると、左腕を岩に向けて振り下ろしたと同時に、一つの球体が岩に向けて飛んでいき爆音と共に岩を粉砕した。ティアが粉砕した岩より多少粗かった。当たったのを確認したレオは、素早く左腕を上に振り上げると残り二つの球体が螺旋を描きながら上空へ上がって行き、爆音と共に相殺し、辺りに雨のように水が降ってきた。


 「ほぉ……見事じゃ。 まぁ、威力はわしの方が上じゃが申し分ないの。 しかし、あの螺旋を描いて上がっていくのはなんじゃ?」


 「あれ? カッコ良くなかった!? ただ上がって行くよりカッコいいと思ってさ。 伝わらなかったかぁ」


 「……まぁともあれ、魔法は確実に上達したの。 これからも鍛錬し、わからない事があればわしに聞くといい」


 (とはいえ、レオの言うカッコ良さは伝わらなかったのじゃが、二つの球体等間隔で上昇させ、相殺させるというのは繊細な操作が必要なのにカッコ良さだけでやってのけたとは……ほんと飽きない奴じゃな)


 ティアはまたもレオの底知れなさを痛感し、レオを見ると何故かレオが顔を赤らめながら俯いていた。


 「なんじゃレオ、どうしたのじゃ?」


 「ティ、ティア……あの……その……なんだ……」


 レオがそわそわしながらティアの服を指差した。

先程のレオの魔法で降ってきた水で、ティアの白いワンピースが濡れて、白い肌が透けていた。

 それに気付いたティアは


 「……ふふっ。 なんじゃレオよ、美少女の濡れた姿を見て欲情したのかのぉ?」


 ティアはレオを挑発するように、ワンピースを少し上げ太ももを見せた。


 「は、はぁっ!? そ、そんなんじゃねぇよ! いいから早くなんとかしろよ」


 「くくくっ。 わかったわかった」


 レオをからかって楽しんでいるティアは風と火の魔法を適度に掛け合わせ熱風を作り、服を乾燥させた。


 (へぇー。 魔法でそんなこともできるのか。 封印解けたらおれも試してみるか。 にしても、ティアは本当なんでもできるんだなぁ)


 レオがティアの魔法を見て改めて関心していた時、森の方から人影が飛び出てきた。


 「な、なんだっ!?」


 レオが飛び出で来た方へ振り向くと、そこにはルファスが立っていた。


 「大丈夫かっ!? 一体何があった!?」


 朝食の食材を採取しに行っていたルファスが、急ぎで戻ってきた。


 「なんだ、ルファ爺かよ……驚かせんなよ。 あれはおれの魔法だよ」


 「レオの魔法? 朝見たときは一つできてたやつか。 何事かと思ったぞ。 と言う事は魔法は一段落ついたんだな?」


 「うむ! そういうことじゃ!」


 レオとティアがドヤ顔しているのを見てルファスは無表情ながらもうずうずしていた。


 「ではレオ、次は剣の修行といこうじゃないか。 私を驚かせてくれよ」


 「いいね。 次は剣だな。 ルファ爺を驚かされるかわかんねぇけど楽しみだっ!」


 その話を割るように ぐぅ〜 とお腹が鳴る音が響き渡った。音が鳴った方にレオとルファスは振り向いた。


 「し、仕方なかろう! 朝から何も食べないのじゃからぁ!」


 二人は顔を赤らめているティアを見ながら笑い、朝食の支度をし始めた。



 その後剣の修行でルファスとティアはレオの才能に驚きを隠せないのであった……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る