第7話

 「ルファ爺 次はどこ行くんだ?」


 「次は風の神殿へ行く。 山を一つ越え、森を抜けたところにフウリュウという街がある。 その先に風の神殿がある」


 「そうか じゃあ、早く行こうぜ。 魔法試してみたいしな!」


 はしゃぎながら水の神殿の裏にある山道へ先行するレオを二人は追って行った。

 しばらく登っていくとひらけた場所についた。


 「ルファ爺、魔法の使い方教えてくれよ」


 「魔法については、ティアに教えてもらったほうがいいぞ。 巫女だしな」


 ルファスとレオはティアを見た。


 「はっ!? わしがなんでそんなことを教えなければならないのじゃ!」


 「わたしより巫女であるティアの方が魔法の扱いがうまいだろ?」


 「ティア頼む 教えてくれ」


 レオは目を輝かせながら頼んでいた。その目を見てティアは溜め息をついた。


 「はぁ……わかった。 教えればいいんじゃろ……」


 「よっしゃーー!! ティアありがとう! 初めはどうしたらいいんだ?」


 「気を練るのと同じじゃ。 目を閉じて魔力を感じてみるのじゃ」


 「魔力を感じるか……やってみるわ」


 レオは言われた通りに目を閉じ、気を練るように集中した。


 「んっ? なんか今までになかった気とは違う青い気みたいのがあるぞ!」


 「……んっ!? レオよ、魔力を色で認識できるのか!?」


 ティアの焦った声にレオは目を開けた。


 「えっ? あれが魔力なのか? 体を覆う感じで青い気みたいのがあったぞ?」


 「これは驚いた……魔力を色で認識できるのは、その属性の適正、魔力量、魔力濃度が高くなければみえないのじゃ。 普通は何年も鍛錬をし、見えてくるというのに。 そもそも、魔法とは精霊の力を借りて魔法をつかうのだが………………」


 ティアが長々と魔法について説明をし始めた。始めの方は真面目に聞いていたレオだったが、徐々に話がわからなくなり、考えるのをやめていた。


 「…………というわけじゃ。 って! なぜ空を見上げておるのじゃ!? 人の話ちゃんと聞いとれ馬鹿者がぁーー!!」


 魔法についての話を長々と話し終えたティアがレオを見ると、考えることをやめたレオは空を見上げていた。


 「……あっ、ごめん……気付いたら空見てたわ。 つまりどういうこと?」


 「……はぁ、つまり水系の魔法とすごく相性がいいってことじゃ」


 「なるほど わかりやすい!」


 頭を抱えてるティアと喜ぶレオを見て、ルファスは笑みを浮かべていた。


 「魔力は感じれたけど次はどうしたらいい?」


 「頭で水を想像しながら、魔力を手に集めて、呪文を詠唱し……」


 「おっ! 出来たぞティア!」


 ティアが説明をしている最中、レオの手のひらに歪な水の球体が浮いていた。


 「そんな簡単に出来……るんじゃな……」


 「これは驚いた!」


 レオの歪な球体は弾けてしまったが、ティアは額に手をやり溜め息をつき、ルファスは髭をさすりながら驚いていた。


 「な、なんだよ! なんか間違えてるのか!?」


 「色々間違い過ぎじゃ。 というより、省き過ぎじゃ……」


 レオは何が何だかよくわからず戸惑っていた。


 「いいか、魔法を使うのに想像しやすくし、魔力の流れを感じ易くするために呪文の詠唱をするのが普通なのだが、それをしていない。 これは熟練した者ができるようになる無詠唱魔法じゃ。 それを今日初めて魔法を使う者ができる事ではないのじゃ」


 「そういうものなのか。 水を想像して手に魔力を集めたら出来たからなぁ」


 あっけらかんとしているレオにティアは呆れてきた。


 「まぁいい……これをみてみよ」


 ティアは小さい綺麗な水の球体を人差し指の先に浮かせて見せた。


 「すげぇ綺麗な球だな! ん? ティアも詠唱してないじゃん」


 「わしレベルになればこのくらい当たり前じゃ!」


 目を輝かせながら球体を見るレオとドヤ顔するティアを見ながらルファスは


 (レベル高いとかいう問題なのか? レオは気付いていないがあの球体は水の螺旋でてきている。 それをいとも簡単に無詠唱で作ってしまうのだから……)


 二人の底知れなさが楽しく、ルファスは笑みを浮かべていた。


 「さぁ、レオよ! さっきの球体をあそこの岩に放ってみよ!」


 「よっしゃ! 思いっきりやるぞーー!」


 はしゃぎながら魔力を溜め始めたレオを見てティアは笑みを浮かべたが、笑みが焦りに変わった。


 「ちょ、ちょっと、まて、まて! ストップじゃ!」


 「なんだよ、せっかくいい感じに溜まってきたのに……」


 楽しみにしていた魔法を止められ、不貞腐れながらティアを見た。


 「……っ!? おぬし……その眼……」


 レオの眼を見てティアは驚きを隠せなかった。

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