第5話

「お、おい……嘘だろっ! やばっ!」


 レオは落ちてくる女の子の下へ飛んで行った。滑り込んでギリギリ間に合った。

 砂埃が落ち着くと女の子がレオの上に乗っかっていた。


 「いてててっ、おい! 怪我はないか?」


 「あやつらめ……おぼえとけよ…… ん? お主は誰じゃ?」


 「はぁ……大丈夫ならどいてくれ。 重いんだが」


 「はぁっ!? こ、この絶世の美少女に、重いとはなにごとじゃぁっ!!」


 細身で小柄、サラサラな長い金髪、透き通るような白い肌、金と銀のオッドアイ、白いワンピースの少女がレオの上で怒り叫んでいた。


 「わ、わかったわかった。 悪かったよ。 ちょっとどいてもらえないでしょうか?」


 渋々少女はどいき、レオは砂を払いながら立ち上がった。


 「おれはレオ。こっちの白髭のジィさんがルファス。 ルファ爺だ。」


 「だれがジジィだ……まったくおまえは……」


 「レオか……なるほどの。 わしの名はティタ……ティアじゃ! ティア!」


 ティアと名乗る女の子は、腕を組み仁王立ちしドヤ顔していた。


 「ドヤ顔されても……。 で、ティアはなんで空から落ちてきたんだ?」


 「まぁなんだ……色々あったのじゃ。 レオ達はここで何しておるのじゃ?」


 「ちょっと森の奥の神殿に用があってな。 水の精霊王に会いにきたんだよ」


 「ほぉ……ウンディーネの小娘にか……」


 ティアはボソッと呟いた。


 「ん? 何か言ったか?」


 「あっ、いやなんでもない。 それより、水の精霊王に会いに行くのか。 レオよ、わしも連れて行ってくれぬか?

えっと……そう! わしは巫女で修行の身なのじゃ 四大精霊の神殿を周り、精霊王に会わなければいけないのじゃ!」


 「えっ!? おれも四大精霊に会いに行くんだよ。 ルファ爺どうする?」


 「私はどちらでもよい。 おまえの旅だ。おまえがちゃんと責任を持って決めればよい」


 「そういうもんか……ティア、一緒に行こうか。 おまえなんか面白いし!」


 「ふむ、面白いか……面白いとはどういうことじゃーーー!!」


 「あはは、まぁティアこれから宜しく頼むよ!」


 「うむ、宜しくじゃ」


 会って間もないというのに、二人は昔から知っていたかのように意気投合していた。


 「ティアという娘……いったい何者だ。 気や魔力を感じない……だが、何か計り知れないものを感じる……まぁ、吉か凶か、これはこれで楽しみだ」


 ルファスはティアの底知れなさを、恐れではなく、楽しさを感じていた。

 さすがヨゼフの親友といったところであろうか。


 「そろそろ行こうぜ」


 「ほれ、行くぞ、ルファ爺よ!」


 「ゴホッ! ティ、ティアまで私をルファ爺だと!?」


 ティアはルファスを見ながら、ニヤニヤしていた。


 「詮索ばかりしておるからじゃ! 美少女は謎が多いのじゃ かっかっか」


 「っ!? はぁ……まったく……底しれないな」


 ルファスは先程、魔法でティアを調べようとしていたが、ティアはルファスの魔法に気付き妨害し、調べることができなかった。


 三人は水の神殿へ向かうため、森の中へ入っていった。

 この森は凶悪な魔物などはいなく、低レベルな魔物がほとんどである。

 魔物が出てもレオが剣で切り進んでいた。

 そんなレオの戦い方を見ていた、ルファスは一つ気になることがあった。


 「レオよ、一つ聞きたいのだが」


 「なんだよ、ルファ爺」


 「おまえは二刀流にした事はないのか?」


 ルファスがレオの剣さばきで、気になったのはそれであった。

 片手剣の戦い方では、片手で剣を斬るのはもちろんのこと、両手に持ち替えて斬りつけたりと、時と場合によって変わるものが、レオはなぜか剣を片手でしか持たず、片方の手はいつも空を斬っていた。


 「あぁ……親父にも言われた。 癖みたいなもんかな。 親父に何度も治せって言われたけど、なんかこの方がしっくりくるんだよね。 なんか踊ってるみたいな感じでさ」


 「踊ってるか…… レオ、これを使ってみろ」


 ルファスは腰に付けていた片手剣をレオに投げた。両方の手に剣を持ち、レオは素振りをし始めた。


 「踊りと言っていたが……これは舞のようだな」


 ルファスはレオの舞から目が離せなくなっていた。

 そしてルファスの隣でもう一人目が離せなくなっていた。


 「ほぉ……これまた見事なものじゃ」


 「ふぅ……なんか今までで一番バランスが良く動けた気がするな」


 「ヨゼフは双剣の事は何も言わなかったのか?」


 「親父は……二刀流など邪道! 剣は一本、志の一本! とか言ってやらしてくれなかった」


 「まったく……ヨゼフらしいな。 これからは二刀流でいけ。 間違いなくおまえに向いている」


 「なんか、何にでも勝てそうだ! 一気に行こうぜ!」


 レオは出会う魔物を蹴散らしていき、水の神殿がる湖まで辿り着いた。

 木々に囲われた綺麗な湖の真ん中に神殿があった。


 「これ、どうやって神殿まで行くんだ?」


 レオがそう思うのは当たり前であった。

 湖から神殿までに道がなかった。


 「それはわしに任しておけ……」


 ティアが湖のほとりに行き、何かを唱えながら手を上げた。

 それと同時に、湖から神殿まで道が開いた。


 「な、なんだこれ……ティアおまえ!」


 「あぁ……巫女だから入り方を学んでおるのじゃ」


 「あぁ、そういう事か。助かったよ」


 「うむ、よいのじゃ」


 三人が湖についた頃、神殿内が慌ただしくなっていた事は知る余地もなかった。

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