第7話「独白」
聴覚障害者で、うつ病持ちであることは前にもお話しました。
おかげで普通の就労もままなりません。面接で「実は持病を患っていて……」なんて言えば、その場でアウトです。
就労移行支援事業所という場所に通っていた時に、そこの職員と相談する機会がありました。「うつのことは伏せておいた方がいい」とお互いに了承して、書類選考を通過した会社への面接に臨みました。
結果は合格。パートではありますが、やっと仕事にありつけたのです。
けれど、三か月後にまたうつを再発しました。頑張りすぎたのでしょう。
その後、就労移行支援事業所の人たちは(一部を除き)助けてくれませんでした。管理責任者に至っては夜分にメールをよこし、その内容がひどく威圧的なものだったことから、自殺を考えました。
それきり、その就労移行支援事業所には行かなくなりました。今後も行くことはないでしょう。
自分が今こうして思い出話にふけっているのは、うつとの向き合い方を改めて考えているからです。うつであることを隠してまで面接に臨んだのは、果たして正しいことだったのか……
もちろん、うつであることはそれだけで不利になります。さらに自分は聴覚障害も持っている。二重障害。毎日薬を飲まなければ、とても普段通りの生活を送れない。気候の変化、あるいは前触れもなく体調を崩すこともある。
安定とは程遠い存在。それが自分。
ただ、こうして書くことで自分の意思を発信できる。それができなかったら、死ぬまで悶々としていたことでしょう。
正直に言えば、うつになどなりたくありませんでした。
毎日……もしかしたら一生かけて飲まなくてはいけない薬を飲むことが、嫌でたまらなかった。
十代の時に発症し、現在に至るまで改善の見込みがない。治ったと思えばまた体調を崩し、また治ったと思えば崩し……の繰り返し。就職と、休職と、離職とを繰り返してきました。
普通の就職はできない。
幾度もの失敗を経て、傷だらけの経歴書を見て、自分が思ったのはそれです。
障害者が集まる場所で働いた方がいいのではないか、というのが現実的な道かもしれません。実働時間が短い(賃金が安い)場所が多いので、もしかしたら……とネットで調べてみました。
ですが、詳細を見ている内に気持ちが悪くなってしまいました。障害者雇用を謳う求人を見ても、目がぐるぐると回るのです。
かかりつけ医にそのことを話すと、「今は仕事のことは考えないようにして下さい」とストップがかかりました。
さらに最悪なことに、何も書けない状態に陥ったのです。
小説が書けない。書かなくてはと思うのに、書けない。一年に一回は投稿したいのに。ペンを持っても、パソコンの前にいても、一文字も浮かばない。
おそらく、うつの一番ひどい時期に陥ってしまったのだと思います。
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