第6話「自分という名の光」

 ※今回はスピリチュアルな話ではありません。




 人が人である限り、不安からは逃げられません。


 将来、環境、金銭的、人間関係……不安の種類は人の数だけあります。


 そしてその不安に押し潰される人は数多くいます。挙句の果てには病気を患うこともあるでしょう。「なんで私がこんな目に……」と嘆く人もいるでしょう。あれが悪い、これが悪い、自分が悪い……そうやって原因探しに躍起になってしまいます。



 そして、その原因を取り除く方法がないかどうかを探すこともあります。



 一番わかりやすい例を挙げれば、メンタルクリニックにかかること。「うつ病ですね」と診断されて、診断書を出されて、会社に休職届を出して、ようやくホッとできたという人もいます。


 しかし——人間関係、特に家族の話となると込み入ったことになります。第三者が介入しづらい状況を自ら作ってしまい、口論の果てに殺人……というニュースを見たことがある人もいると思います。


「自分に嫌なことをしてくる、言ってくる人はもういらない。殺してしまえばいい」


 上記のようにそこまで短絡的に考える人はいない——と信じたいところですが、悲しいかな、殺人とまではいかずとも、「いなくなればいい」と考えてしまう人は多くいます。



 思考を行動に結びつけることが悪とは言いません。場合によりけりです。



 先述のメンタルクリニックの話ですが、「今の自分をなんとかしたいから、病院にかかりたい」という動機があるはずです。「今の自分でも構わない。メンタルクリニックになんかかかりたくない」と考えてしまったら、何も変わらない状況だけが続いてしまうでしょう。


 メンタルクリニックにかかるという行動自体が、自分で自分を救っているのです。


「今の状態が嫌だから、なんとかしたい」と自らアクションを起こすことで、改善を図ろうとする。これは非常に能動的です。他者の手を借りることは確かにありますが、そもそものスタートは自分自身。


「人に相談したい」


「自分の病状をどうにかしたい」


「とにかく自分の話を聞いてほしい」など……。



 もし、本当に自分のことや家族、世間、その他あらゆるものが嫌になって、面倒になって、いっそのこと死んでしまいたいと思って、Googleで「楽に死ねる方法」とかを検索してみるとします。


 そうするとほぼ間違いなく、「心の悩みを受け付けます」「あなたの声を聞かせて下さい」みたいな広告が出てくるはずです。「くだらない」と思ってひたすら検索を続けることでしょう。


 でも、言っておきますが、楽に死ねる方法など見つかりません。たぶん。


 ひたすら検索を続けたところで、時間の無駄になります。電車に飛び込む、ビルから飛び降りる……死ぬ方法をいくら考えたところで、行動につながらなければただの脳細胞の無駄遣いです。




 じゃあどうしろって? 答えとしては——「知るか」の一言に尽きます。



 あなたが今すぐ自殺したいなら、こんなものを読んでないでさっさと死ねばいい。包丁で手首を突き刺せばいい。もしくは腹。もしくは喉。ガソリンを頭から浴びて火を点ければいい。大量のアルコールをあおって救急車で運ばれて、尿道カテーテルをブチ込まればいい。マジで痛ぇから。電車に飛び込むのは止めとけ、家族に賠償金かかって、最悪墓に入れてもらえなくなるから。ビルから飛び降りれば即死だと思うけれど、失敗したら体に障害残るからね。



「痛いのは嫌だ」


「苦しいのは嫌だ」


 じゃあ、どうするか? それを少しは考えてみる。何か少しでも救いになるものがないのか、「自ら」探すんです。自分で自分を救うんです。


 例えば自分(作者)の場合なら……


 一人きりの夜に耐えられなくなって、とうとう、とあるアニメのしキャラの抱き枕を買いました。そしたらあら不思議! すこぶる寝つきが良くなりました。やったね!!


 ……まぁ、そんな感じです。あ、引かないで……


 もっと真面目な話をすれば、区の保健センターで職員に話を聞いてもらう機会に恵まれました。特にアドバイスを求めているわけではなく、「ただ話を聞いてもらう」だけです。


 それだけでも心は軽くなりました。一人きりの夜が少しだけ、怖くなくなりました。次の約束を取りつけた時には、「またこの人と会って、話をするんだな」という実感を持てました。


 つながりの実感です。自分で行動を起こし、自分でつながりを得た瞬間です。


 これが、自分で自分を救うということです。もちろん、力になってくれた人への感謝は忘れてはいけません。



 本当に、最後の瞬間まで、味方でいてくれるのは——まず、自分。



 それを自覚し、行動を起こせれば——きっと状況は少しずつ改善するんじゃないかなぁと個人的には思っています。

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